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中小企業でも株主総会は開く?ルールと議事録に書くこと

会社の規模にかかわらず、日本国内で活動している会社は1年に1回は株主総会を開催しなくてはなりません。

中小企業経営者の方の中には、社長自身が一人で株主となっていたり、株主全員が経営者メンバーとなっていたりするケースもあるでしょう。

このようなケースでは株主総会は形式的なものになりますが、法律上は株主総会を開催した形をとっておく必要があります。

具体的には、要件を満たした内容の議事録を作成しておくことが重要になります。

この記事では、中小企業の場合の株主総会の開催手続きについてくわしく解説いたします。ぜひ参考にしてみてください。

中小企業でも株主総会の開催は必須

結論から言うと、中小企業であっても株主総会の開催は必須です。具体的には、以下の2つのかたちで株主総会を開催する必要があります。

  • 定時株主総会
  • 臨時株主総会

それぞれの項目について、順番に見ていきましょう。

定時株主総会とは

1つ目の「定時株主総会」とは、簡単にいえば1年に1度必ず開催する必要がある株主総会です。決算日から3ヶ月以内に行うのが一般的です(会社法第296条・124条第2項)

定時株主総会では、決算の報告承認と役員の再任の決議を行う必要があります。

すべての企業は1年に1回は税務申告を行わなくてはなりませんから、その前提として決算書を作成しているはずです。

株主総会では、その決算書の内容を経営者から株主に対して報告し、株主が承認するという形をとり、議事録に手続きが適切に行われた旨を記載します。

役員の再任決議は、株式会社の取締役(代表取締役)であれば2年ごとに行う必要があります。これは同じ人が再任されるケースであっても必須の手続きです。

株主総会決議で役員の再任を行ったら、株主総会議事録を作成して法務局に持って行き、2週間以内に登記を行わなくてはなりません。

登記を行うことを怠った場合、最大100万円の過料を課せられてしまう可能性があります(ただし、実際には数万円〜10万円以内となることが多いです)。

なお、非公開会社(株式の譲渡制限を設けている会社)においては、定款に定めることで、役員の選任を10年以内に1回とすることができます。

また、合同会社においては役員の任期を設けないことも可能です。

臨時株主総会とは

2つ目の臨時株主総会とは、その名の通り臨時に行われる株主総会のことを言います。

以下のような事案が発生した時には臨時株主総会を開催し、株主の議決によって意思決定を行わなくてはなりません。

  • 会社の本店所在地を変更したい場合
  • 新たに出資を受けたり、減資を行ったりしたい場合
  • 役員を新たに選任したい場合
  • 別の会社と合併したり、会社を分割したりしたい場合
  • 役員報酬の金額を変更したい場合

特に問題となるケースが多いのが、役員報酬の金額を変更するケースです。

役員報酬の金額は、会社の利益額に大きな影響を与えます。会社が収める税額は利益額に応じて決まりますから、必然的に厳しいルールが課せられることになっています。

具体的には、事業年度が開始してから3ヶ月以内に報酬額を決定して、次の変更を行うまでは毎月同額を支給する形にしなくてはなりません。

例えば、12月末日が決算日の会社の場合、翌年1月1日が事業年度開始の日になりますから、3月31日までに株主総会を開催して役員報酬の変更を行わなくてはなりません。

通常、事業年度末から2ヶ月以内に法人税の申告を行いますから、申告手続きが完了した翌月に株主総会を開催し、役員報酬を変更するケースが多いでしょう。

例えば、3月末日が決算日だとしたら、5月末日までに法人税の申告を行う必要があります。その後の6月に株主総会を開催するといった具合です。

議事録は必要?どんな内容で作成する?

中小企業においては、株主と経営者が同一となっているケースがほとんどです。そのため、株主総会の開催は形式的なものとなる場合が多いでしょう。

ただし、法律的には会社の規模にかかわらず株主総会の開催は必須になっています。

後から他人が見た時に「この時に、このような内容で株主総会が行われたのだな」ということが判断できるよう、証拠を残しておく必要があるというわけです。

例えば、定時株主総会の議事録であれば、以下のような内容を含めておく必要があります。

  • 開催した日時
  • 開催した場所
  • 出席者(議決権の状況についても記載します)
  • 出席役員
  • 議事の内容(第1号議案、第2号議案…というように議決した内容を記載)
  • 閉会した日時
  • 株主総会の議長となった人の署名

まとめ

今回は、中小企業が株主総会を開催する際の法律上のルールを説明いたしました。

オーナー経営者が一人で株主となっているようなケースでは、株主総会を開催すること自体の意味に疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、1年に1度は株主総会を開催しなくてはならないというのが法律上のルールです。

形式だけではあっても、必ず要件を満たした株主総会議事録を作成して保管しておくようにしましょう。