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有期契労働者等の賃金増加で受給「キャリアアップ助成金(処遇改善関係コース)」

「キャリアアップ助成金」は、厚生労働省が行う助成金制度のなかで人気の高い制度のひとつです。その名称のとおり、企業内のキャリアアップを促進することが目的とされています。

キャリアアップ助成金は全7コースで構成されています。今回は、助成対象である有期契約労働者等の処遇改善を図る6つのコースについて、受給までのステップと受給額を簡単に説明します。

※「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」については、以下の記事をご覧ください。

>有期契約→正規雇用の転換を助成「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、有期契約労働者等の賃金規定を改定し、2%増額すると助成金を受け取れます。

助成金を受給するには、次の5つのステップを実施する必要があります。

ステップ1;キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける
ステップ2:有期契約労働者の基本給の賃金規定等を改定し、2%以上増額する
ステップ3:有期契約労働者等を昇給させる
ステップ4:増額改定後の賃金6ヵ月分を対象者に支給する
ステップ5:支給申請し、審査を経て助成金を受給
※支給申請期間は、増額賃金6ヵ月分を支給した日の翌日から2ヵ月以内

なお、賃金規定の改定を、有期契約労働者のすべてに適用するか、一部に適用するかで、助成金の受給額は変動します。詳細は下表をご覧ください。

■すべての有期契約労働者等の賃金規定等を改定し、2%以上増額した場合

対象労働者数

中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

1~3人

9万5000円

12万円

7万1250円

9万円

4~6人

19万円

24万円

14万2500円

18万円

7~10人

28万5000円

36万円

19万円

24万円

11人~100人

※1人あたり

2万8500円

3万6000円

1万9000円

2万4000円

※対象労働者数が1~10人は1事業所あたり、11~100人は1人あたりの額。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人、申請回数は1年度1回のみ。
※生産性要件については、「助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説」の記事をご覧ください。

■一部の有期契約労働者等の賃金規定等を改定し、2%以上増額した場合

対象労働者数

中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

1~3人

4万7500円

6万円

3万3250円

4万2000円

4~6人

9万5000円

12万円

7万1250円

9万円

7~10人

14万2500円

18万円

9万5000円

12万円

11人~100人

※1人あたり

1万4250円

1万8000円

9500円

1万2000円

※対象労働者数が1~10人は1事業所あたり、11~100人は1人あたりの額。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人、申請回数は1年度1回のみ。
※生産性要件については、「助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説」の記事をご覧ください。

健康診断制度コース

健康診断制度コースは、有期契約労働者等に適用する健康診断制度を新たに設け、対象となる健康診断(後述)を受診させると助成金を受け取れます。

助成金を受給するには、次の4つのステップを実施する必要があります。

ステップ1;キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける
ステップ2:就業規則等に健康診断制度を規定する
ステップ3:延べ4人以上の有期契約労働者等に健康診断を受診させる
ステップ4:支給申請し、審査を経て助成金を受給
※支給申請期間は、延べ4人以上に健康診断を実施した日が属する月分の賃金を支給した日の翌日から2ヵ月以内

なお、対象となる健康診断は、「雇用時健康診断」「定期健康診断」「人間ドック」です。

健康診断制度コースで受給できる額は、下表のとおりです。

中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

38万円

48万円

28万5000円

36万円

※1事業所あたり申請は1回のみです。
※生産性要件については、助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説の記事をご覧ください。

賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースは、有期契約労働者等の賃金規定等を正規雇用労働者と共通のものとする制度を設け、適用すると助成金を得られます。

助成金を受給するには、次の4つのステップをクリアすることが必要です。

ステップ1;キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける
ステップ2:賃金規定等の共通化を実施する
ステップ3:賃金規定等共通化後の賃金6ヵ月分を対象者に支給する
ステップ4:支給申請し、審査を経て助成金を受給
※支給申請期間は、賃金規定共通化後の賃金6ヵ月分を支給した日の翌日から2ヵ月以内

賃金規定等共通化コースの受給額の注意点は、2人目以降は助成額が1人あたりの金額になることです。


中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

1人目

※1事業所あたり

57万円

72万円

42万7500円

54万円

2人目以降

※対象労働者1人あたり

2万円

2万4000円

1万5000円

1万8000円

※1事業所あたり1回のみ。対象労働者の上限数は20人。
※生産性要件については、「助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説」の記事をご覧ください。

諸手当制度共通化コース

賃金規定等共通化コースは、有期契約労働者等の諸手当を正規雇用労働者と共通のものとする制度を設け、適用すると助成金を得られます。

助成金を受給するには、次の4つのステップをクリアすることが必要です。

ステップ1;キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける
ステップ2:諸手当制度の共通化を実施する
ステップ3:諸手当制度共通化後の賃金を対象者に支給する
ステップ4:支給申請し、審査を経て助成金を受給
※支給申請期間は、初回の手当支給後6ヵ月分の賃金を支給した日の翌日から2ヵ月以内

受給額の算定は少し複雑で、1つ目の手当が1人目の対象者に支払われると、1事業所あたり38万円(中小企業、生産性要件なしの場合)となります。その後は、対象者もしくは手当の増加に応じて、受給額が加算されます。

受給額の詳細は、下表をご覧ください。


中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

1人目

※1事業所あたり

38万円

48万円

28万5000円

36万円

2人目以降

※対象労働者1人あたり

1万5000円

1万8000円

1万2000円

1万4000円

2つ目以降

※対象手当1つあたり

16万円

19万2000円

12万円

14万4000円

※1事業所あたり1回のみ申請可能。対象の労働者の上限は20人、手当の上限は10手当です。
※生産性要件については、助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説をご覧ください。

選択的適用拡大導入時処遇改善コース

選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、有期契約労働者等を新たに社会保険被保険者にし、基本給を増額すると助成金が受給できるものです。

助成金を受給するには、次の4つのステップをクリアすることが必要です。

ステップ1;キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける
ステップ2:社会保険の適用を有期契約労働者等まで拡大し、有期契約労働者等の基本給を増額する
ステップ3:増額後に6ヵ月分の賃金を対象者に支給する
ステップ4:支給申請し、審査を経て助成金を受給
※支給申請期間は、増額後6ヵ月分の賃金を支給した日の翌日から2ヵ月以内

対象者一人あたりの受給額は、基本給の増額割合に応じて変動します。詳細は下表のとおりです。

基本給の

増額割合

中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

3%以上5%未満

2万9000円

3万6000円

2万2000円

2万7000円

5%以上7%未満

4万7000円

6万円

3万6000円

4万5000円

7%以上10%未満

6万6000円

8万3000円

5万円

6万3000円

10%以上14%未満

9万4000円

11万9000円

7万1000円

8万9000円

14%以上

13万2000円

16万6000円

9万9000円

12万5000円

※1事業所あたり申請は1回のみ。支給対象の条件は45人です。
※生産性要件については、助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説をご覧ください。

短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者労働時間延長コースは、次の①または②を満たすと助成金を受給できるものです。

①有期契約労働者等の週所定労働時間を5時間以上延長する
②有期契約労働者等の週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長し、「賃金規定改定等コース」または「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」を実施する
※①②ともに有期契約労働者等を社会保険の被保険者にすることが必須です。

助成金を受給するには、次の4つのステップをクリアすることが必要です。

ステップ1;キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける
ステップ2:週の所定労働時間延長を実施する
ステップ3:延長後6ヵ月分の賃金を対象者に支給する
ステップ4:支給申請し、審査を経て助成金を受給
※支給申請期間は、増額後6ヵ月分の賃金を支給した日の翌日から2ヵ月以内

受給額は、①もしくは②により変動します。詳細は下表のとおりです。

■①の場合

対象となる

労働者数

中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

1人あたり

22万5000円

28万4000円

16万9000円

21万3000円

※1年度1事業所あたりの支給申請上限は、①②を合計して45人です。
※生産性要件については、助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説をご覧ください。

■②の場合

週所定労働時間の延長時間

中小企業

中小企業以外

生産性要件なし

生産性要件あり

生産性要件なし

生産性要件あり

1時間以上2時間未満

4万5000円

5万7000円

3万4000円

4万3000円

2時間以上3時間未満

9万0000円

11万4000円

6万8000円

8万6000円

3時間以上4時間未満

13万5000円

17万円

10万1000円

12万8000円

4時間以上5時間未満

18万円

22万7000円

13万5000円

17万円

※生産性要件については、助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説をご覧ください。

まとめ

有期契約労働者等の処遇改善は、人材のモチベーションやスキルを高め、ひいては組織の強化につながります。今回紹介したキャリアアップ助成金の6つのコースを利用し、助成金を受け取りながら組織力を強化するのも一手でしょう。

なお、キャリアアップ助成金(処遇改善関係コース)は、今回紹介した以外にも、支給対象の労働者や事業所など、細かい要件がいくつも定められています。詳しくは厚生労働省のホームページをご覧いただくか、管轄の労働局・ハローワークに相談するのがおすすめです。

また、自社内で申請業務を進めることが難しい場合は、専門家に依頼するのも一手。その道のプロである社会保険労務士等に依頼するといいでしょう。