「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を発行する理由と発行方法
会社が個人に業務委託を行い、報酬などを支払った場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を発行して、税務署や報酬を支払ったものに交付します。この支報酬等の支払調書は、税法によって税務署に提出が義務付けられている法定調書のひとつです。
そこで、今回は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を発行する理由と発行方法について解説していきます。
報酬等の支払調書を発行する理由
報酬等の支払調書は、所得税法第225条第1項3号によって、報酬等を支払うものが発行を義務付けられている書面です。
報酬等の支払調書は、一般的には、会社等の報酬等を支払うものが2通作成し、1通を報酬等を支払った個人事業主に交付し、1通を税務署に交付します。
ただし、個人事業主に交付するのは任意なので、交付しなくても税務署から処分を受けることはありません。また、税務署に交付する分についても、一定の基準に該当しない場合は、交付する必要がありません。
税務署は報酬等の支払調書で確定申告が正確かどうかを確認する
報酬等の支払調書の交付を受けた個人事業主は、確定申告の時に、申告書に報酬等の支払調書に記載された源泉所得税額を記載し、証拠書面として、その支払調書を申告書に添付します。
税務署では、報酬等を支払った会社等から、報酬等の支払調書をすでに受け取っていますから、個人事業主が確定申告書に添付した支払調書と、税務署が会社等から直接受け取った支払調書を比較することで、確定申告書に記載された源泉所得税額が正確なものであるかどうかを確かめることができます。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の発行方法
事業主がフリーランスなどの個人と業務委託契約を締結し、契約が完了すると、報酬等を支払うことになるのですが、その場合、事業主は、所得税を源泉徴収して、その控除後の金額を個人に支払うことになります。
そして、源泉徴収した金銭等は、原則として、報酬を支払った月の翌月10日まで、管轄の税務署に納入します。
その際に、次の事項を記載した支払調書を作成します。
・支払いを受ける者の住所及び氏名
・支払った報酬等の区分、細目
・支払金額
・源泉徴収税額
・報酬等の支払者の住所又は事業所所在地・氏名又は名称
・支払いを受ける者の個人番号
報酬等の支払調書を作成する時期は、1年間に支払った報酬等の支払金額が確定する年明けとなります。
税務署に交付義務がある場合には、1月31日が提出期限ですので、その時までには完成させる必要があります。個人に交付する場合には、遅くとも、確定申告の開始時期までには交付します。
書面作成上の注意点
報酬等の支払調書の様式は国税庁のホームページからダウンロードすることによって取得できます。国税庁のホームページでは、必要なデータを入力することで、税務署及び個人にそのまま提出できる支払調書がプリントアウトできるサービスがあります。
支払調書の記載事項は全体的にはそれほど難しいものではありませんが、天引きされる源泉徴収税額の計算には注意しなくてはなりません。
基本的には、支払額に10.21%を乗じた額を源泉徴収税額としますが、報酬等の区分に応じて源泉徴収額の計算方法が微妙に異なるので、よく確認しながら計算する必要があります。
報酬、料金、契約金、賞金とはどんなものか
報酬等支払調書を作成する必要がでてくるのは、報酬、料金、契約金、賞金を支払った時ですが、それらは具体的には、次のようなものになります。
(1)原稿・講演・デザイン等への報酬・料金
(2)弁護士、税理士など士業に対する報酬、料金
(3)プロスポーツ選手、ファッションモデルなどへの報酬・料金
(4)ホステス、コンパニオン等の業務に関する報酬・料金
(5)芸能人や芸能関係の業務に対する報酬・料金
(6)社会保険診療基金に対する診療報酬
(7)事業広告宣伝のための賞金
(8)馬主に支払われる競馬の賞金
上記に該当する報酬等を支払った場合には、所得税の源泉徴収を行った上で、支払調書を作成して、支払いを受けたものや税務署などに交付する必要があります。
報酬等の支払調書を税務署に提出するケース
フリーランス等の個人に報酬等を支払い、報酬等の支払調書を作成したすべての場合に、その書面を税務署に提出する必要があるわけではありません。
作成した支払調書を税務署に提出する必要があるのは、以下の場合です。
(1) 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサー等の報酬、バー、キャバレー等ホステス等の報酬・料金、広告宣伝のための賞金については、同一人に対するその年中の支払金額の合計が50万円を超えるもの
(2) 馬主に支払う賞金については、その年中の1回の支払金額が75万円を超えるものの支払いを受けた者に係るその年中の全ての支払金額
(3) プロ野球の選手等に支払う報酬、契約金については、その年中の同一人に対する支払金額が5万円を超えるもの
(4) 弁護士や税理士に対する報酬や、原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの
(5) 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額が50万円を超えるもの
まとめ
報酬等の支払調書は、給与に関する源泉徴収票とともに、事業主にとって非常になじみの深い書面です。毎月支払う給与と比較して、報酬等の支払は頻度が少ないので、源泉徴収票よりも報酬等の支払調書の方が作成は容易です。
しかし、源泉所得税額の計算方法などは、報酬等の区分によって微妙に計算式が異なるので、注意が必要です。