リーガルメディア > 労務 > 労務の手続き > 労務の手続き㉓~従業員が死亡したときの対応~
労務の手続き

労務の手続き㉓~従業員が死亡したときの対応~

従業員が死亡すると、各所への届出や死亡までの給与などの支払い、遺族などが受け取ることができる給付金の申請補助など、様々な手続きが必要になります。

今回は、従業員が死亡したときに必要となる主な手続きについて説明します。

従業員が死亡したときの手続き

従業員が死亡すると、主に次のような手続きが必要になります。

死亡の届出

死亡により社会保険の被保険者資格を喪失したこと、また、住民税を給与から差し引く対象ではなくなったことについて、次の届出が必要になります。

健康保険 厚生年金保険 被保険者資格喪失届

死亡の翌日から起算して5日以内に管轄の年金事務所または事務センター、健康保険組合に提出しなければなりません。

この際、本人や家族の健康保険証も提出しなければなりませんが、回収が難しい場合には「健康保険 被保険者証回収不能届」を提出することになります。

雇用保険 被保険者資格喪失届

死亡の翌日から起算して10日以内にハローワークに提出しなければなりません。

特別徴収に係る給与所得者異動届

死亡した従業員の住民税について、給与から差し引いて納付していた場合(特別徴収)には、該当の市区町村に届け出なければなりません。

※提出様式などについては、その市区町村に確認が必要です。

給与などの支払い・源泉徴収票の作成

給与などの支払い、所得税関係については次のような対応が必要になります。

給与などの支払い

死亡後に支払うべき給与や賞与、退職金がある場合にはそれらを支払います。
注意すべきは、社会保険料は通常の退職と同じように死亡日に応じて控除しますが、所得税は控除しないということです(所得税ではなく相続税の対象になります)。

また、従業員本人の口座は死亡により凍結されるため、配偶者などの相続人の口座を確認して振り込むか、直接渡す必要があります。

源泉徴収票の作成

死亡日までに支払った給与および賞与の総額で源泉徴収票を作成し、配偶者などの相続人に交付する必要があります。

遺族などが埋葬料(埋葬費)を請求する際の協力

従業員が死亡すると、健康保険から遺族に「埋葬料」として5万円が支給、あるいは、実際に埋葬を行った方にその費用(5万円が上限)が「埋葬費」として支給されます。

これを遺族などが受給するためには、死亡日の翌日から2年以内に「健康保険 被保険者埋葬料(費)支給申請書」を全国健康保険協会(協会けんぽ)に提出しなければなりません(健康保険組合に加入している場合には、指定の様式でその健康保険組合に提出します)。

この申請書は遺族などが自身で提出するものですが、事業主の証明も必要になりますので、会社としては提出の案内なども含めて積極的に協力すべきです。

労災対象の死亡はさらに手続きが必要

従業員の死亡が、労災保険の対象となる業務中や通勤途中の死亡である場合には、さらに次のような手続きが必要になります。

死亡の届出

従業員が業務中に死亡した場合には、遅滞なく管轄の労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出しなければなりません。通勤途中に死亡した場合には労災保険の対象にはなりますが、この書類の提出は不要です。

遺族などが各種保険給付を請求する際の協力

従業員が業務中や通勤途中に死亡した場合には、遺族などが保険給付を受けるために次の請求書を提出することになります。

健康保険の埋葬料(埋葬費)と同様ですが、請求にあたっては事業主の証明も必要になりますので、会社としては積極的に協力すべきです。

・労働者災害補償保険 葬祭料請求書(業務災害の場合)

・労働者災害補償保険 葬祭給付請求書(通勤災害の場合)

遺族または葬儀を行った方に支給される「葬祭料」(業務災害の場合)または「葬祭給付」(通勤災害の場合)を請求するためのもので、死亡日の翌日から2年以内に管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

これを提出することで、死亡した従業員の概ね2か月分の給与額を受け取ることができます。

・労働者災害補償保険 遺族補償年金支給請求書(業務災害の場合)

・労働者災害補償保険 遺族年金支給請求書(通勤災害の場合)

遺族に支給される「遺族補償年金」(業務災害の場合)または「遺族年金」(通勤災害の場合)を請求するためのもので、死亡日の翌日から5年以内に管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

支給額については、遺族の数によっても異なるため、詳しくは厚生労働省のホームページなどでご確認ください。

まとめ

従業員が死亡した場合の手続きは、遺族にもかかわることですので、確実に行わなければなりません。

手続きはこの記事で説明したことだけではありませんし、会社によっても異なります。

万が一のことを考えて、どのような手続きや対応が必要であるのかについて、あらためて確認、整理しておきましょう。