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債務不履行とは何? 履行遅滞・履行不能・不完全履行を簡単解説

民法では契約が守られなかった事態を債務不履行(さいむふりこう)と呼び、債務不履行の3種類(履行遅滞、履行不能、不完全履行)が発生した際の対処についても定めています。

本記事では、民法が定める債務不履行について説明します。

債務不履行 3つのパターン

債務不履行とは、簡単にいえば、契約が守られないということを意味します。

ただ、約束を守らないという事態については、民法は3つのパターンに分類しています。

履行遅滞

履行遅滞(りこうちたい)は、契約で決めた約束の日までに契約上の義務が間に合わないというケースを意味します。

例えば、2020年の3月末日に100万円を返すという契約でお金を借りていたのに、3月末日を経過してもお金を返すことができなかったというような例が履行遅滞の典型例です。他にも契約で定めた納期までに品物を納品できないというような場合も履行遅滞となります。

履行不能

履行不能(りこうふのう)は、契約上の義務を果たすことが不可能になってしまったというケースです。

例えば、Aさんが世界に1つしかない有名な画家の絵をBさん売るという契約をしていたものの、引渡し前にAさんの火の不始末によってその絵を焼失してしまったというような場合が履行不能の例となります。

なお、Aさんが売ろうとしていたものが世界に1つしかない絵ではなく、レプリカなどの量産品であった場合には履行不能とはなりません。Aさんは同じレプリカを調達してBさんに引き渡せばよいので、履行遅滞となることはあっても契約上の義務を果たすことが不可能という履行不能とは言えないからです。

不完全履行

不完全履行は、契約を果たしたものの、義務の履行が十分とは言えないというケースです。

例えば、実験用のマウスとして健康なマウス10匹の売買をしたところ、1匹が病気にかかっていたというような例が挙げられます。

損害が生じたときの対応策

次に、債務不履行があった場合の対応策についてのポイントをまとめていきます。

履行の強制

まず、強制的に債務を履行させるということが理論上可能です。つまり、裁判で勝訴するなどして、強制執行をすることができる書類(債務名義)を手に入れて、債務の履行を強制させるという方法です。

これは、おもに履行遅滞と不完全履行の場合に可能です。

損害賠償と解除

債務不履行があり、損害が発生してしまった場合には、その損害賠償を請求することができます。

また、契約を解除(キャンセル)することができます。契約を解除することで初めから契約がなかったことになり、既に支払った代金などの返還請求が可能となります。

損害賠償と解除はどの債務不履行の類型でも可能です。

損害賠償請求や解除についての注意点

債務不履行があった場合、履行を強制するよりも損害賠償請求や契約解除をすることのほうが多い傾向にあります。その際は、以下の点に注意する必要があります。

損害の発生と因果関係は、請求する側が立証しなければならない

損害賠償の請求においては、損害の発生と因果関係は請求者が証明しなければなりません。つまり、債務不履行により損害が生じたということに加えて、本当にその債務不履行のせいで損害が生じたことを請求する側が証明しなければならないということです。

逆に言うと、いくら契約違反による損害が発生したとしても、損害発生と債務不履行との間に因果関係があると証明できなければ、損害賠償は請求できません。

例えば、商品の納期が遅れた場合、納期に遅れたことで(1)実際に損害が生じたこと、(2)その損害の発生が納期に遅れたことによって発生したこと、の2点を証明しなければ、損害賠償請求権は発生しません。損害の発生と因果関係については、請求者が立証する責任があります。

解除権の消滅

相手に債務不履行があり、解除権を持っていても、その権利が消滅する場合があります。

民法第547条では、以下のように定めています。

「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する」

これは、債務不履行をした相手から「契約を解除しますか? 1週間以内に回答をください」などと連絡があった場合に、その期間内に返事をしないと解除をする権利がなくなってしまうということです。

確かに債務不履行をした点は相手方に責任がありますが、解除されるかされないかわからない状況が続くのでは相手も困ってしまうことから、解除するかどうかを問われたら返事をしないと解除ができなくなってしまうというものです。

まとめ

債務不履行は、契約が守られないという、いわば「非常事態」についての処理のルールです。一般的なケースであれば、契約を解除するということ(以後取引をしない)で済ますことが多いかと思われますが、契約金額が大きいケースなどは損害賠償や履行の強制など法的に難しい点が生じる問題となります。

まずは、債務不履行による損害が発生した場合には、損害賠償請求や契約解除が可能という点を知っていただき、法的に難しい問題があると感じられた場合には、弁護士や認定司法書士への相談も念頭に置かれると良いと思われます。

※認可司法書士とは、簡易裁判所の代理権を持っている司法書士のことです。簡易裁判所の民事事件では、弁護士と同じ活動をすることができます。