下請法の適用は資本金の額で決まる!違反行為も解説
下請法とは、親事業者(元請事業者)と子事業者(下請業者)の力関係によって生じる“下請けいじめ”を防ぎ、規模が小さい事業者でも市場経済の中で健全に成長できるようにすることを目的とした法律です。
正式な法令名を「下請代金支払遅延等防止法」といい、親事業者は規制の対象、子事業者は保護の対象とされます。
本記事では、親事業者の禁止行為を紹介するとともに、下請法が適用される資本金の要件についても説明します。
下請法はどんな時に適用される?
下請法の適用は、資本金の額と取引の内容により決まります。
資本金の額
親事業者と子事業者の間に力関係があることが、下請法の適用の前提になります。力関係といっても、客観的に認められないと下請法の適用はできません。そのため、資本金の要件が下請法の適用要件となっています。
物品の製造や修理委託を行う場合に、下記の資本金の条件を満たせば、下請法の適用があるものとされています。
親事業者 | 下請事業者(個人を含む) |
資本金3億円超 | 資本金3億円以下 |
資本金1千万円超3億円以下 | 資本金1千万円以下 |
情報成果物作成・役務提供委託を行う場合(なお、政令で定められる一定の取引は、物品の製造や修理委託の場合と同様の資本金要件が適用されます)
親事業者 | 下請事業者(個人を含む) |
資本金5千万円超 | 資本金1千万円以下 |
資本金1千万円超5千万円以下 | 資本金1千万円以下 |
発注者は、資本金が1千万円以上であれば下請法の規制の対象となりうるのですが、創立したての会社を1千万円まで大きくした、などという場合は下請法対策を忘れがちになります。
特に、IT業界は下請を使うことがよくある業界であり、プログラム・コンテンツの作成は、「情報成果物作成」、ITコンサルティングは「役務提供委託」の一つであり、下請法の適用対象になることも頻繁にあります。急に会社が大きくなり、資本金が増えることも多い業界ですので、注意しておくとよいでしょう。
取引の内容
仕事の内容が、客観的に下請になじむ仕事でなければ下請法の適用はできません。
例えば、資格を持つ本人でないとできない医師や歯科医師の仕事は「下請」の性質になじまないでしょう。そこで、下請の性質になじむ仕事であることが適用の要件となっています。
法律では、対象となる取引(仕事の内容)を、物品の製造・修理委託及び情報成果物作成・役務提供委託を行う場合としています。
下請法に違反するケース
下請法は、親事業者に一定の行為を禁止して、下請事業者を保護します。
下請法が禁止する行為は下表の11類型におよびます。
類型 | 内容 |
受領拒否 | 注文したのに受け取らない |
支払遅延 | 受領後60日以内に下請代金を支払わない |
代金の減額 | あらかじめ決められた下請代金を減額する |
返品 | 不良品以外を返品する |
買いたたき | 類似品の価格や市場での価格に比べて、著しく低い代金を定める |
購入・利用強制 | 「仕事をあげるからうちの商品・サービスを購入・利用しなさい」などと強制する |
報復措置 | 不公正な行為を公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由に仕返しをする |
有償支給原材料等の対価の早期決済 | 代金の支払い前に、原材料代を決済してしまう |
割引困難な手形の交付の禁止 | 手形により支払うものの、決済サイトが非常に長いなど、すぐに現金化(割引)をすることができない手形を交付する |
不当な経済上の利益の提供要請 | 金銭や労務の提供などを下請事業者に強いる |
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し | 費用を負担せずに注文後やり直しなどを行わせる |
支払遅延を中心とするこれらの行為は、最悪下請事業者の存亡にもかかわる行為といえます。発注する確率が高い一定資本金以上の規模を持つ親事業者がこんなことばかりしていると、下請事業者が世の中全体で育たなくなってしまいます。そのため、下請法が規制をしているのです。
さらに、親事業者には、手続上の義務があり、これらを怠っても下請法の違反となります。
- 書面の交付義務
- 支払期日を定める義務
- 取引の内容を記載した書類を作成・2年間保存する義務
- 支払が遅延した場合は遅延利息を支払う義務
まとめ
以上が、下請法についての概要です。親事業者は「うっかり」違反してしまうことが少なくありません。なかには違反であることを認識していないケースも多くあります。
- 書面交付をしなければならないのに、していない
- 書面に法律で必要とされることが書いてない
- 書面支払期日を定めたのはよいが、60日以内の支払条件になっていない
このような点には注意するようにしましょう。
また、子事業者(下請事業者)は、取引内容に不利な面があった場合、下請法に違反していないか確認することも必要です。小規模事業者や中小企業は、事業を健全に営んでいくためにも「下請法」は押さえておきましょう。