商業・法人登記で委任状が必要なケースは?(記入例あり)
会社設立登記や役員変更登記などのいわゆる商業・法人登記を申請する場合に、委任状が必要になることがあります。本記事では、委任状が必要になるケースなどについて解説します。
委任状とは?
商業・法人登記における委任状とは、本来の申請者である会社の代表取締役が第三者を代理人とし、その者に申請手続きを依頼する場合に必要になる書類であり、申請書類とあわせて法務局(登記所)に提出しなければならないものです。
このため、代表取締役自身が申請手続きを行う場合には委任状を提出する必要はありません。また、このあと説明する「社員が申請手続きを行う場合」も提出を求められることはないと言えます。
委任状が必要なケース
上記で説明した委任状の性質を踏まえたうえで、商業・法人登記の申請手続きにおいて実際に委任状が必要になるケースについて説明します。
申請手続きを司法書士等に依頼する場合
商業・法人登記の申請手続きについて、業(仕事)として代理人になれる者は司法書士や弁護士と定められています。
無資格者で、登記の申請手続きに詳しい者に無報酬で依頼することも不可能ではありませんが、現実的ではありませんし、仮にそのような者がいたとしても、継続して依頼すると、違法と判断されるリスクもあります。
この点を考えると、委任状が必要になるケースとは、実質的には申請手続きを司法書士等に依頼する場合ということになります。
なお、定款や株主総会・取締役会の議事録の代理作成などは行政書士、不動産の表示に関する登記の代理申請は土地家屋調査士も行うことができますが、会社設立登記や役員変更登記などの代理申請は司法書士にしかできません。
社員が申請する場合も必要?
商業・法人登記の申請手続きは、実務的には代表取締役の了承を得たうえで総務部などの担当者が進めることが一般的です。
この場合、担当者は代表取締役の代理人のようにも思えますが、担当者が法務局の窓口に行っても委任状を求められることはほとんどありません。
これは、会社の担当者は単に出来上がった申請書類を会社の一員として提出するだけの立場(「代理人」ではなく単なる「使者」)であると判断されるためです。
ただし、法務局(登記所)によって取り扱いが異なる可能性もありますので、初めて手続きをする場合には事前に管轄の法務局(登記所)に確認しておくことをおすすめします。
委任状の記入例
商業・法人登記の委任状の記入例は次のとおりです。
①代理人(司法書士等)の住所・氏名を記載します。
②委任する申請内容を記載します。
③委任した日を記載します。
④委任する側(会社)の住所、社名と代表者の氏名を記載し、法務局(登記所)に届け出ている印鑑(会社実印)を押印します。
法務局のホームページでは、委任状のほか申請書類の様式や記入例なども公開していますが、必要事項が網羅されていればまったく同じでなくてもかまいません。
なお、多くの司法書士は委任状のフォーマットを用意していますので、会社側はそれを活用して会社の住所や代表者名を記載、押印するだけであることが一般的です。
まとめ
商業・法人登記の申請手続きを司法書士に依頼する場合には、委任状が必要になります。
社員が申請する場合には委任状を求められることはないと言えますが、初めて手続きをする場合には、事前に管轄の法務局(登記所)に確認しておくことがおすすめです。