合同会社の社員、業務執行社員、代表社員は何が違う?
合同会社は、会社設立の手続きが簡素で、設立費用も安く、会社の運営方法を比較的自由に決められることもあって、設立数は年々増加しています。
その一方で、「社員の種類がいくつもある」「代表社員を複数選任できる」など、株式会社とは異なるルールもあるため、今ひとつ理解できないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、合同会社における社員の種類について説明します。
合同会社とは
社員の種類を説明する前に、まずは合同会社について簡単に説明します。
合同会社は、アマゾンやアップルの日本法人などの有名企業も採用している会社形態で、有限責任(出資額を限度とする責任を負う)社員のみからなる持分会社です。
定款の作成は必須ですが、公証人による定款の認証が不要である点は株式会社と異なります。また定款に定めることで、自由な組織運営ができる点も特徴です。
合同会社の社員の種類
合同会社には取締役や監査役といった機関はなく、「社員」「業務執行社員」「代表社員」で構成されます。
社員
社員とは、合同会社に出資した人のことです。合同会社に雇用されて働いている人は社員とは呼びません。
合同会社では原則、社員全員に「業務執行権」と「代表権」が平等に与えられます。株式会社が「所有と経営の分離」を原則としている一方、合同会社では「所有と経営の一致」が基本的な考えです。経営に参加するなら出資すべきである、というのが合同会社の原則となっています。
ところが、出資はするけど経営にはかかわりたくない社員もいれば、特定の人に経営を任せたい社員もいます。そこで後述する「業務執行社員」や「代表社員」を定款に定めることで、業務執行権や代表権を付与しない社員を認めることができます。
なお、業務執行権と代表権を持たない社員であっても配当金は受け取れます。また、経営に対する意見を述べることも可能です。
業務執行社員
合同会社では、定款に定めることで経営にかかわる社員を限定することができ、その社員のことを「業務執行社員」と呼びます。
業務執行社員は、株式会社の役員にあたるポジションですが、株式会社とは違って、決まった任期はありません。また、業務執行社員は複数選任することができ、経営に関する意思決定を行う際は、業務執行社員の過半数の同意が必要になります(定款により変更できます)。
社員と業務執行社員の違い
すべての社員(出資者)は原則、業務執行権と代表権を持ちます。しかし、定款で業務執行社員を定めた場合、社員と業務社員で次のような違いが生まれます。
- 社員:経営にかかわらない出資者
- 業務執行社員:経営にかかわる出資者
代表社員
合同会社では、定款に直接定めるか、定款の定めに基づく社員の互選によって「代表社員」を選出することができます。なお、代表社員は先述した「業務執行社員」から選ばれます。
代表社員は、株式会社の代表取締役にあたる立場で、業務執行権と代表権を持ちます。実際に、各分野や事業に代表社員を置くことで、スピーディーな業務展開を行っている企業もあります。
しかし、代表社員が複数いると、それぞれの思惑が交錯して全社的な経営判断が遅れたり、取引先企業を混乱したりすることもあるようです。
業務執行社員と代表社員の違い
代表社員を設置していない場合、すべての業務執行社員に経営にかかわるすべての権利が与えられます。しかし、定款に代表社員を定めることで、業務執行社員と代表社員で次のような違いが生まれます。
- 業務執行社員:代表社員のもと、会社経営に従事。株式会社の取締役のような立場
- 代表社員:会社の代表として経営にかかわる全権を持つ。株式会社の代表取締役のような立場