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有限会社の代表取締役変更 必要な手続きと注意点

有限会社(正確には特例有限会社)の代表取締役を変更する手続きには、株式会社の場合とは異なる点がいくつかあります。たとえば、代表取締役の登記ができないケースがあったり、変更登記に必要な書類が異なったりするため、戸惑う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、有限会社の代表取締役変更に必要な手続きと注意すべき点を説明します。

有限会社の代表取締役変更に必要な手続き

有限会社の代表取締役を変更する際は、新たな代表取締役の選定、必要書類の作成・準備、変更登記の申請などの手続きが必要です。

新たな代表取締役の選定

有限会社で代表取締役を選定する際は、次の3つの方法のいずれかで決める必要があります。

定款による選定

定款を変更することで代表取締役を選定する方法です。代表取締役を選定する定款変更には、株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主の出席し、出席株主の議決権の3分の2以上)が必要になります。

定款の定めに基づく取締役の互選

取締役の互選とは、取締役会を設置していない会社で、取締役が2名以上いる場合に代表取締役を選出する方法です。取締役の過半数の賛成により代表取締役が選定されます。

取締役の互選で決める場合、「当会社は、取締役を複数置く場合には、代表取締役を1名置き、取締役の互選によって定めるものとする」などの一文を定款に記載する必要があります。有限会社は取締役会を設置できないので、上記のような定款の記載があれば取締役の互選により代表取締役を選定することができます。

株主総会の決議

定款に、株主総会の決議によって代表取締役を選定する記載がある場合、もしくは、代表取締役の選定方法についての記載がない場合は、株主総会の普通決議(議決権の過半数を有する株主の出席し、出席株主の議決権の過半数)によって選定されます。

変更登記に必要な書類

新たな代表取締役を選定した後は、変更登記の申請を行います。申請の際に必要となる書類は代表取締役の選定方法によって異なります。

「定款」もしくは「株主総会の決議」による選定の場合

☑特例有限会社変更登記申請書

☑株主総会議事録

☑株主総会議事録に署名捺印した者の印鑑証明書
変更前の代表取締役が取締役、監査役等役員として就任する等して、株主総会に出席し、変更前の代表取締役が登記所に提出した印鑑を株主総会議事録に押印している場合、議長および出席取締役の印鑑証明書は不要です。

☑株主リスト

☑就任承諾書
取締役就任にあたって必要となる就任承諾書のみを用意します(代表取締役就任についての就任承諾書は不要です)。

※株主総会に新たな代表取締役が出席し、その席上で就任を承諾する意思表示を行い、その旨が株主総会議事録に記載されている場合は、この記載を援用することで就任承諾書の代わりとすることができます。

☑代表取締役になる者の個人の印鑑証明書

☑委任状
司法書士に依頼する場合のみ必要です。

☑収入印紙
資本金1億円以下の場合は1万円、1億円を超える場合は3万円の登録免許税を支払います。

「取締役の互選」による選定の場合

☑特例有限会社変更登記申請書

☑取締役の互選書

☑取締役の互選書に署名捺印した者の印鑑証明書
代表取締役が登記所に提出している印鑑を押している場合は不要です。

☑就任承諾書
互選時に新たな代表取締役が就任を承諾し、その旨が互選書に記載されている場合は不要です。

☑代表取締役になる者の個人の印鑑証明書

☑定款の写し
※すべてのページをコピーし、当該会社の定款である旨、商号、代表取締役の氏名を記載して代表取締役が登記所に提出している印鑑を押します。さらに、各ページに綴り目に契印を押します。

☑委任状
※司法書士に依頼する場合のみ必要です。

☑収入印紙
※資本金1億円以下の場合は1万円、1億円を超える場合は3万円の登録免許税を支払います。

なお、各書類の詳細な記載方法などは法務局のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。

有限会社の代表取締役を変更する際の注意点

有限会社では法律上、次の項目に該当する場合には代表取締役の登記ができません。

  • 会社に取締役が1人
  • 複数の取締役全員に代表権がある

つまり、取締役2名のうち1名が代表取締役である状況で、その代表取締役が辞任した場合、代表権を持たない取締役を代表取締役に選定しようとしても、取締役の数が1名しかいなくなってしまうため、代表取締役の登記はできません。

また、取締役2名のうち1名が代表取締役である状況で、代表権を持たない取締役が辞任した場合も、取締役の数は1名になってしまいます。その際も代表取締役の登記ができなり、さらに「代表取締役の氏名抹消」の申請が必要になるので注意しましょう。