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労務の手続き

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入する手順

1週間単位の非定型的変形労働時間制を利用したいけれど、「どのような流れで導入すればいいかわからない」とお困りの方へ、制度導入の手順をわかりやすくご紹介します。

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは?

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、従業員数が30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店の事業所が、このあと説明する一定の手続きを行うことで、1日の法定労働時間(8時間以内)にかかわらず、従業員を1日10時間まで働かせることができる制度です。

ただし、この制度を導入しても1週間の法定労働時間である40時間(以内)については守らなければなりませんので、1週間のうち忙しい日の労働時間を10時間とすれば、忙しくない日の労働時間を8時間未満とするか、休日とするなどの調整が必要になります。

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入する手順

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するためには、労働基準法で定める次の手続きが必要になります。

なお、これらの手続きを正しく行わずに導入した場合には、30万円以下の罰金に処されることもありますので注意してください。

手順①:労使協定を締結する

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するためには、従業員の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、従業員の過半数で組織する労働組合がない場合には従業員の過半数を代表する者との間で、次の事項を定めた労使協定を締結し、従業員に周知しなければなりません。

  • 対象となる従業員の範囲
  • 1週間の起算日
  • 1週間の労働時間を40時間以下とすること
  • 1日の労働時間の限度を10時間とすること
  • 1週間の各日の労働時間は当該1週間が開始する前に書面で従業員に通知すること
  • 上記の労働時間を超える労働や休日労働があった場合には割増賃金を支払うこと

なお、労使協定書に決まった様式はありませんが、このあと説明する労働基準監督署に届け出る様式(1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届(様式第5号))を労使協定書とすることもできます。

手順②:就業規則を変更する

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するということは、対象従業員の始業および終業時刻(就業規則の絶対的記載事項)が変わることを意味します。
このため、就業規則においても労使協定と同様の内容を追記(細かな部分については「労使協定で定めるところによる」などとすることも可)し、労働組合または労働者代表の意見を聴いたうえで確定させ(「意見書」の作成も必要)、従業員に周知しなければなりません。

※従業員数が10人未満の事業所については就業規則を作成する義務がないため、就業規則ではなく就業規則に準ずるものに定めても構いません。

なお、労働組合または労働者代表の意見書については以下からダウンロードできます。

■様式集 労働基準法関係/東京労働局

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu_zenkoku.html

手順③:協定届・就業規則を届け出る

「1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届(様式第5号)」と、変更した就業規則(「就業規則(変更)届」と「労働者代表」の意見書を含む)をそれぞれ2部(届け出用+会社の控用)、管轄の労働基準監督署に郵送するか窓口に直接届け出ます。(会社の控え用には受理印を押されて返却されます。)

※従業員数が10人未満の事業所については就業規則に準ずるものの届け出は不要です。

なお、「1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届(様式第5号)」および「就業規則(変更)届」については以下からダウンロードできます。

■1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届(様式第5号)/e-Gov

https://elaws.e-gov.go.jp/data/322M40000100023_20210401_502M60000100203/pict/2FH00000036398.pdf

■様式集 労働基準法関係/東京労働局

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu_zenkoku.html

手順④:シフト表を作成・配布する

労使協定で定めた1週間の起算日の前日までに翌週のシフト表を作成して、従業員に通知します。
この従業員に通知したシフト表の労働時間については、緊急でやむを得ない事由がある場合に限り変更できますが、変更するためには変更しようとする日の前日までに書面で従業員に通知しなければなりません。ただし、厚生労働省(当時は労働省)の通達(昭和63年1月1日基発第1号、婦発第1号)によると、「緊急でやむを得ない事由がある場合」とは、「使用者の主観的な必要性でなく、台風の接近や豪雨等の天候の急変等客観的事実により当初想定した業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合」とされていますので注意が必要です。

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入する際の注意点

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入したとしても、18歳未満の従業員には適用できません。また、妊産婦についても請求があれば、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることはできません。

その他、育児や介護を行っている従業員や、職業訓練などを受けている従業員についても、育児等を行うために必要な時間が確保できるように配慮することが求められていますので注意が必要です。

まとめ

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入すれば、1週間のうち忙しい日には従業員を10時間まで働かせることができ、忙しくない日には8時間未満で働かせるか休ませるなど労働時間を弾力的に調整できるようになります。
利用できる事業所は限られていますが、対象の事業所で労働時間の調整でお悩みであれば導入を検討してみてはいかがでしょうか。