就業規則変更届の書き方(記入のポイントあり)
就業規則を改正したときに労働基準監督署に提出するのが「就業規則変更届」です。就業規則を変更する場合、会社が一方的に変更することはできません。所定の手続きを踏んで初めて、就業規則の変更が有効になるからです。
今回の記事では、「就業規則変更届」の書き方や届出手順を中心に解説します。届出を怠ると罰金を科せられることもあるので、正しく理解し届出をしましょう。
就業規則変更届とは?
就業規則変更届とは、従業員10人以上の会社が就業規則を変更する時に提出が義務付けられた労働基準監督所長への届出です。 労働基準法第89条では、就業規則を作成した時だけでなく変更した場合にも提出が必要とされています。
就業規則には、絶対的記載事項(必ず規則を定めて記載しなければならない事項)と相対的記載事項(規則を定めた場合に記載しなければならない事項)があります。就業規則を変更した場合だけでなく、相対的記載事項を新たに決めた時も変更届の提出が必要です。
就業規則変更届の記入のポイント
就業規則を変更した時、労働基準監督署長に届け出る書類は次の3つです。
- 就業規則変更届(2部)
- 労働者代表の意見書(2部)
- 変更した就業規則(2部)
就業規則変更届について所定の様式はありませんが、厚生労働省のホームページに掲載されている様式例を使用することもできます。
引用:厚生労働省「就業規則(変更)届の様式例」
記載事項は次の通りです。
- ①事業所の名称と所在地
- ②使用者氏名
- ③就業規則の変更内容
改訂した就業規則の全ページを印刷して届け出る方法もありますが、様式例のように新旧の規則を対比して記載したほうがわかりやすくていいでしょう。
雇用形態(正社員や契約社員、アルバイトなど)ごとに就業規則を作成している場合、変更内容が同じでもそれぞれの就業規則に対して変更届の提出が必要です。また、いくつかの事業所に分かれている場合は、それぞれの事業所の労働基準監督署長に届出します。
「主な変更事項」の記載例
条文 | 改正前 | 改正後 |
第10条 | 1日の勤務時間を8時間とする。 ・始業:9時 ・終業:18時 | 1日の勤務時間を7時間30分とする。 ・始業:9時 ・終業:17時30分 |
届出手順
就業規則変更届は次の手順で届出を行います。
- 就業規則の変更案を作成する
- 労働者代表者の意見を聞く(意見書の作成)
- 変更届を労働基準監督署長に提出する
- 変更後の就業規則を従業員に周知する
手順①:就業規則の変更案を作成する
まず最初に行うのが、就業規則の変更案の作成です。変更目的に沿って就業規則の変更案を作成することになりますが、次の点には注意が必要です。
- 労働基準法などの法令に違反していないか
- 変更内容が従業員に不利益な変更になっていないか
法令違反にならないように留意するのはもちろんですが、「労働条件の不利益変更」にならないように十分注意しましょう。
労働基準法第8条で定める通り「労働者と使用者が合意すれば労働契約を変更できる」一方、同9条では「使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない」と定めています。
使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、変更が次の事情などに照らして合理的であることが必要となります。(同10条)
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況
労働条件の不利益変更は、労働基準監督署で認められない可能性があるばかりでなく、従業員に納得してもらうのも容易ではありません。不利益変更によって従業員が会社を訴えるケースもあるので十分に注意しましょう。
手順②:労働者代表者の意見を聞く(意見書の作成)
次にやるのは、就業規則の変更案を従業員に提示して、労働者代表者の意見を聞くことです。労働基準法第90条では、次の2点が規定されています。
- 就業規則の作成・変更について、労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければならない
- 就業規則の作成・変更を届出する場合、労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数を代表する者)の意見を記した書面を添付しなければならない
意見を聞いた上で意見書を作成してもらい、就業規則変更届とともに届出が必要です。ただし、反対意見があった場合でも、会社は就業規則を変更案通りに決められます。前述の不利益変更や労働基準監督署長の指摘などがなければ、就業規則の変更は有効です。
手順③:変更届を労働基準監督署長に提出する
就業規則の変更内容が確定し、「就業規則変更届」「労働者代表の意見書」「変更した就業規則」を作成したら、管轄の労働基準監督署長に提出します。
手順④:変更後の就業規則を従業員に周知する
最後にやるのは、変更後の就業規則を従業員に周知することです。労働基準法第106条では会社に就業規則の周知義務を課しています。周知方法は次の通りです。
- 常時各作業場の見やすい場所に掲示(備付)する
- 書面で労働者に交付する
- 磁気テープや磁気ディスクなどに記録し労働者が常時確認できる機器を設置する など
まとめ
就業規則変更届は、従業員10人以上の会社が就業規則を変更する時に提出が義務付けられた届出です。届出しない場合は法令違反で罰金を科せられることもあるので、人事や労務の担当者が必ずしなければならない手続きです。
届出手順に従って就業規則を変更することは、法令遵守だけでなく従業員の納得感にもつながります。