会計参与とは何? 任期、メリット、設置手順などを解説
会計参与は、平成18年5月に施行された会社法によって新設された、株式会社の役員です。
会計参与を設置すると、特に中小企業において、正確な会社会計を実現することができます。本記事では、会計参与についての概要や設置するメリットなどについて説明します。
会計参与とは
会計参与とは、会社法で規定する株式会社の役員のひとつで、取締役と共同して計算書類等(貸借対照表、損益計算書、事業報告書など)を作成する役目を担います。
会計参与の資格者
会計参与になれるのは、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のいずれかに限られます。つまり、会計参与は会計の専門家なのです。
なお、株式会社又はその子会社の取締役、監査役若しくは執行役又は支配人その他使用人は、会計参与になることはできません。会計参与は、会社の計算書類を正確に作成する目的で設置されるため、会社から独立している個人または法人である必要があります。
会計参与の義務及び権限
会社法で規定する会計参与の義務及び権限は次のとおりです。
- 取締役と共同して計算書類等を作成する
- 必要に応じて、取締役、支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求める
- 職務に関し、取締役が重大な不正行為・法令又は定款違反を行った場合には、株主や監査役などに報告する
- 計算書類等をあらかじめ定められた場所(書類等備置場所)に5年間保管する
- 計算書類等を承認する取締役会に出席して意見を述べる
会計参与の任期
会計参与の任期は、取締役の任期と同じです。公開会社の場合には「選任から2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで」となります。この任期は、定款の定め又は株主総会の決議で短縮することができます。
一方、株式の全部又は一部に譲渡制限を設けている非公開会社の場合、定款で定めることにより、会計参与の任期を「選任から10年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで」に延長できます。
会計参与を設置するメリット
会計参与を設置するメリットは、規模の小さな会社でも、会計のプロを計算書類等の作成に関与させることができ、その適正を担保できることです。
大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上に該当する会社)は、会計監査人による会計監査が義務付けられており、このことで計算書類等の適正が担保されています。
しかし、大会社ではない場合、任意で会計監査人を設置することはできますが、会計監査人の設置には多額の費用がかかり、中小規模な会社が会計監査人を設置することは現実的ではありません。
会計参与の場合、公認会計士や監査法人の他に、税理士や税理士法人でもなることができます。税理士や税理士法人は、公認会計士や監査法人よりも、比較的容易に契約できますので、会計参与に税理士や税理士法人を選任した場合、中小企業の負担は軽くなります。その上で、会計の専門家が会社会計に関与することで、対外的に信用される計算書類を作成できます。
また、大会社を除く非公開会社が取締役会を置く場合には、同時に監査役も置く必要があるのが原則ですが、このケースで、会計参与を置けば、監査役を置く必要はありません。
会計参与を設置する手順
株式会社が会計参与を設置する場合の手順は、以下のとおりです。
- 株主総会の特別決議で、定款を変更し、会計参与を置く旨の定めを設ける。
- 株主総会の普通決議で会計参与を選任する。
- 選任した会計参与から就任承諾書を取得する。(就任承諾書は、株主総会議事録に会計参与が就任を承諾した旨の記載があれば省略可能)
- 会計参与が税理士法人又は監査法人であればその登記事項証明書を、公認会計士又は税理士であれば、その資格証明書を取得するとともに、書類等備置場所を確認する。
- 会計参与設置会社である旨及び会計参与の就任登記を行う。
まとめ
会計参与を設置することで、規模の小さい会社でも、会計の専門家を計算書類等の作成に関与させることができ、より信頼性の高い会計が可能になります。また、会社に会計参与を置くと、会社の登記簿に会計参与設置会社である旨が記載されますが、そのことで、会社の対外的な信用度も上がります。