運送業の営業許可を取得する方法
運送業(一般貨物自動車運送事業)を開始するためには、許可取得の要件を満たし運輸支局に申請を行い、かつ、法人の場合は役員のうち一人が法令試験に合格しなければなりません。
この記事では、運送業の営業許可を取得する方法を解説します。
運送業の営業許可とは
運送業は貨物自動車運送事業法によって「一般貨物自動車運送事業」「特定貨物自動車運送事業」「貨物軽自動車運送事業」の3種類に区分されています。
この中で最も一般的な運送業のイメージに近いのが一般貨物自動車運送事業で、他人から依頼を受けトラック等で荷物を運んで運賃を得るという事業です。
同じく運賃が発生する場合でも、人を運ぶ場合は、旅客自動車運送事業となります。
なお「特定貨物自動車運送事業」は、依頼主が特定の者のみとなる運送業、「貨物軽自動車運送事業」とは、軽貨物自動車で貨物を運ぶ運送業を指します。
一般貨物自動車運送事業を開始するためには、許可取得の要件を満たし、営業所を管轄する運輸支局に許可申請を行い、個人事業の場合は代表者が、法人の場合は役員のうち一人が法令試験に合格しなければなりません。
営業許可が不要なケース
街中で緑色のナンバープレートをつけたトラックを見かけることがあると思いますが、これは運送業の許可を得た営業用トラックであることを示しています。
一方、同じようなトラックでも白ナンバーのトラックは、基本的に自分の会社の荷物を運んでいる自家用トラックです。
製造業の企業などが、自社製品を自社の営業所等に配送しているような場合が当てはまります。
このような場合は、荷物を運ぶことによって運賃を得ているわけではありませんので、営業許可は必要ありません。
許可取得の要件
運送業許可を取得するためには、場所、人、車両、資金、法令試験の5つの要件をすべてクリアする必要があります。
場所の要件
運送業を始めるために必要な施設に関する要件です。必要な施設とは、営業所、休憩・睡眠施設、車庫、保管施設等です。これらの施設が、都市計画法や消防法、建築基準法、農地法、道路交通法といった各法律に抵触していないことが要件となります。
人の要件
運送業に必要となる人員や資格に関する要件です。「運行管理者」「整備管理者」の資格を有する者を雇用しなければなりません。また、事業に使用するトラック台数分の運転手を確保できている又は確保できる予定がある、ということが要件となっています。
車両の要件
運送業を始めるためには、最低5台の車両が必要となります。
そして、その車両の使用権原を有している又は予定である必要があります。
資金の要件
具体的には、営業許可申請書内の「事業開始に要する資金及び調達方法」の項目に従って算出する必要がありますが、準備資金、運転資金を明確にし、事業計画に沿った金額を算出し確保しなければなりません。
車両数や事業規模によって必要な金額は変わりますが、資金が確保されていることを確認するために、残高証明書の添付も必要となります。
法令試験の要件
運輸支局に許可申請書を提出し受理された後、その直後の奇数月に役員の法令試験が実施されます。これは、運送事業を行うためには法令の理解を必要とするという趣旨に基づくもので、1回の申請で2回までしか受験することができません。ですから、この2回の受験で合格しなければ、却下処分となります。
試験時間は50分30問の正誤問題で、8割の24問正解で合格ですが、十分な事前準備が必要です。
営業許可取得までの流れ
①要件の確認と事業計画の立案
運送業営業許可取得の要件を満たしているかどうかの確認を行い、事業計画を立てます。
②許可申請書の作成
各運輸支局で入手、またはホームページから様式をダウンロードして申請書を作成します。
③運輸支局へ申請書類を提出
営業所の所在地を管轄する運輸支局に、作成した書類を3部提出します。(控えを含む)
④運輸支局による審査と法令試験
運輸支局で申請書類が受理された後、法令試験が行われます。この法令試験に合格しなかった場合は再試験となります。
併せて、書類の審査が行われますが、不備がある場合は郵送もしくは電話で修正の指示があります。ですが書類審査は順次行われるため、提出後すぐに連絡があるわけではありません。修正指示は提出の約2カ月後にありますのでご注意ください。
申請書類に不備がなく、法令試験に合格すると審査終了となります。
⑤許可書の発行
審査終了後、許可書が発行されますが、実際に運送業を開始するためには、各種の届出や手続きが必要となります。
⑥許可後の手続き
- 登録免許税の納付(通知書に領収書を貼付し運輸支局へ提出)
- 車両登録(運輸支局で連絡票に確認印をもらい、登録部門で登録)
- 運行管理者選任届(運輸支局へ)
- 整備管理者選任届(運輸支局へ)
⑦運輸開始
許可を受けた日から1年以内に運輸を開始しなければなりません。また、開始後に運輸開始届、運賃料金設定届出を運輸支局へ提出します。
費用
運送業許可取得時に納める税金として登録免許税(12万円)が必要になります。
登録自体にかかる費用は、登録免許税と許可取得を行政書士などに代行依頼した場合の報酬額となります。ただウエイトとしては、許可取得要件の「資金要件」である運送業開業費用の確保の方が大きくなります。
この費用を確保できていることを証明するために、申請時と受付後2ヵ月経過した頃の2回、残高証明書を提出します。基本的に、最初に提出した残高と変動があってはいけませんので、注意が必要です。
必要書類
申請を行う運輸支局によって多少異なりますので、事前に確認を行ってください。
こちらでは参考として、関東運輸局の必要書類をご紹介します。
- 一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書
- 事業用自動車の運行管理等の体制
- 事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画
- 事業開始に要する資金及び調達方法
- 残高証明書等
- 事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類(付近の案内図・見取図・平面図・写真、都市計画法等の関係法令に抵触しない旨の宣誓書、施設の使用権原証明書、車庫前面道路の道路幅員証明書、事業用自動車の使用権原証明書
- 法第5条(欠格事項)各号のいずれにも該当しない旨を証する書類
- 法令遵守の宣誓書
- 代理申請の場合は委任状
上記に加え、下記の書類が必要です。
<法人の場合>
- 定款及び登記事項証明書(事業目的に注意)
- 直近の事業年度の貸借対照表
- 役員または社員の名簿及び履歴書
<個人事業の場合>
- 資産目録
- 戸籍抄本
- 履歴書
まとめ
運送会社を経営していくためには、多くの義務と責任が生じ、法に則って遵守しなければならないものが多数あります。運送業の営業許可を得て継続的に経営していけるかどうか、法令遵守がきちんと行われるかどうか、かなり厳しくチェックを受けることになります。
また運送業を行うためにはトラック5台以上の車両が必要となりますので、実質的には法人形態で営業許可を申請することが多くなります。そして法人の場合、定款と登記事項証明書の提出が必要となりますので、事業目的に「一般貨物自動車運送事業」と記載されていることが必要になります。既存の法人の事業追加の場合、定款の事業目的の変更登記が必要となりますので、ご注意ください。
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