【令和6年10月1日施行】代表取締役等住所非表示措置について解説
代表取締役等住所非表示措置についての概要
代表取締役等住所非表示措置の対象の会社について
今回の代表取締役等住所非表示措置では、対象となる会社は株式会社のみとなっています。
ですので、株式会社のように住所が表示される合同会社などの株式会社以外の法人ではこの制度は使うことができないので、注意してください。
具体的には株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人のみとなります。(この記事では、この三者を合わせて代表取締役等といいます。)
住所非表示の範囲について
代表取締役等住所非表示措置の申出を行うと、登記事項証明書(登記簿謄本)、登記事項要約書、登記情報提供サービス(オンラインで取得できる登記情報確認サービス)に表示される代表取締役等の住所情報一部が非表示となります。
これにより、代表取締役等の住所は最小行政区画(東京23区内の場合は「区」まで、その他は「市・町・村」)までしか記載されないこととなります。
例:
東京都千代田区九段南〇丁目〇−〇
→東京都千代田区大阪府大阪市中央区大手前〇丁目〇−〇
→大阪府大阪市
代表取締役非表示措置の申出のみはできない
代表取締役等住所非表示措置を行うためには、他の登記申請と同時に申し出る必要があります。
つまり、代表取締役等の住所非表示を単独で申し出ることはできません。
具体的には、設立の登記、代表取締役等の就任(重任)の登記、代表取締役等の住所移転の登記、本店移転登記(管轄外移転登記に限ります。)を行う必要があります。
そのため、このような事情がないにも関わらずどうしても、代表取締役等住所非表示を行いたい場合は、定款で定める役員の任期を短縮して役員を退任させた上で、役員を重任(再任)する登記と同時に行う必要があります。
代表取締役等住所非表示措置の申出手続きについて
申出方法について
代表取締役等住所非表示措置を申し出るためには、先ほど説明したとおり、別の登記申請と同時に行う必要があります。
その登記申請書に
- 代表取締役等住所非表示措置を希望する旨
- 代表取締役等住所非表示措置の対象となる者の資格(代表取締役等)、氏名及び住所
- 申出に当たって添付する書面(下で解説します)
を記載したうえで、その登記申請と一緒に申請の手続きを行います。
添付書面について
代表取締役等住所非表示措置を申し出るためには、登記申請に必要な添付書面に加えて追加の書面を添付する必要があります。
上場企業の場合は、株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面として、金融商品取引所のホームページの写しを添付するだけなので、簡単ですが、上場企業ではない場合は下記の①~③の書類全ての準備が必要となります。
①株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
株式会社が受取人として記載された配達証明書と商号(会社名)と本店所在場所が記載されている郵便物受領証が必要となります。
会社の本店に配達証明郵便を送付してその郵便を受領する必要があります。
②代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書
具体的には、代表取締役等の住民票の写し、戸籍の附票の写し、印鑑証明書が該当します。ただし、登記申請にあたってこれらの書類を添付している場合は、追加で添付する必要はありません。
③株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面
a,bいずれかの方法をとる必要があります。
a. 公証人から実質的支配者の本人特定事項についての供述を記載した書面を認証してもらったものを提出する方法
こちらは、公証役場に行って認証手続を行う必要があります。
なお、会社を設立した年度とその翌年度については、会社設立時に受け取った実質的支配者の本人特定事項についての申告受理及び認証証明書を使用することができます。
b. 実質的支配者リストの保管の申出を行う方法
こちらは、実質的支配者について法務局に実質的支配者リストの保管をおこなう必要があります。
費用等は無料なので、会社を設立したての場合を除けばこの方法が便利です。
注意点
過去の代表取締役等の住所について
代表取締役等住所非表示措置の申出を行った場合でも、過去に登記簿に記載のあった住所まで非表示にすることはできません。
ですので、例えば同じ代表取締役の再任(重任)の登記と同時に代表取締役等住所非表示措置の申出を行った場合は、最新の住所情報は一部のみの表示となりますが、過去の住所の表示は行われている状態になります。
住所変更登記について
代表取締役等住所非表示措置の申出を行った場合でも、その後に代表取締役等の住所の変更があった場合は、今まで通り、代表取締役の住所変更の登記を行う必要があります。
また、この住所変更を行う場合は、再度代表取締役等住所非表示措置の申出を行わないとまた住所表示が行われてしまうので、注意しましょう。
その他の注意点
上記のように、代表取締役等の住所非表示はプライバシー保護の観点からメリットが多いものとされていますが、一定のデメリットもあります。
具体的には、例えば金融機関からの融資や不動産取引など、今までは登記簿で代表取締役の住所を登記簿で確認できることを前提に取引が行われてきましたが、代表取締役等の住所非表示により、代表取締役の住所を確認するために必要な書類が増えたりするなどの影響がでるとも言われています。
このようなデメリットも理解した上で、代表取締役等の住所非表示の申出を行うとよいでしょう。