取締役会を廃止したら登記!申請手順と必要書類は?
日本の法律では、会社の機関として取締役会を置くことは必須とされていません。
役員組織をスリム化し、機動的な経営判断ができるようにするためには、取締役会を廃止することが適切なケースも考えられます。
ただし、すでに設置されている取締役会を廃止するには、法律上求められている手続要件を満たさなくてはなりません。具体的には、株主総会で取締役会廃止の決定を行った上で、法務局に出向いて登記申請を行う必要があります。
本記事では、取締役会を廃止するための手続きについて具体的に解説します。
取締役会廃止の登記申請の手順
取締役会を廃止し、登記申請に至るまで手続きの流れは以下の通りです。
- 取締役会で株主総会の開催を決議
- 取締役会議事録を作成
- 株主総会の招集
- 株主総会の特別決議による定款変更
- 株主総会議事録の作成
- 辞任届などの必要書類の準備
- 株主総会決議の効力発生から2週間以内に定款変更の登記申請
取締役会を設置している会社(取締役会設置会社)では、定款に取締役会と監査役(※)に関するルールが記載されているはずです。そのため、取締役会の廃止を行うためには、定款の変更が必要となります。
※…取締役会設置会社においては、監査役の設置が必要です。なお、取締役会の廃止後でも、監査役をそのまま設置しておくことは可能です。
定款の変更は株主総会の特別決議によって行う必要があるので、まずは取締役会で株主総会を招集する旨を決議し、株主総会を開催しなくてはなりません。
取締役会を廃止するにあたって、変更が必要となる定款記載事項としては以下のようなものがあります。
- 取締役会の設置に関する項目
- 監査役の設置に関する項目
- 株式の譲渡制限に関する項目
- 取締役等の責任免除に関する項目
株主総会において定款変更の手続きが完了したら、その内容を法務局で登記します。
取締役会廃止の登記に必要な書類
取締役会を廃止するために法務局で登記を行う際には、以下のような書類の提出が必要となります。
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 退任する役員の辞任届
- 株主リスト
なお、法務局で登記を行うためには、変更する定款の内容に応じて登録免許税を納める必要があります。
例えば、取締役会と監査役を廃止し、「取締役3名+監査役1名」だった役員組織を、取締役1人だけの体制に変更するためには、合計7万円の登録免許税が発生します(資本金1億円以下の会社の場合)。
- 取締役会の廃止:3万円
- 監査役の廃止:3万円
- 役員変更:1万円
司法書士や弁護士などの専門家にこうした登記手続きを代行してもらうことも可能です。
専門家に依頼すると費用が発生するのがネックですが、登記変更を法律のルールに従って確実に行なっておくことは、会社に法的なリスクが発生することを避けるためにも重要といえます。
法律的な手続きの経験がない方は、専門家の助言を受けるのが適切と言えるでしょう。取締役会廃止の登記手続きを専門家に依頼した場合の費用は、5万円〜10万円程度が相場です。
取締役会を廃止するべきケース
取締役会は、3名以上の取締役で構成される合議体の組織です。
取締役会設置会社では、本来は株主総会の決議が必要な議題の一部を、取締役会の決議に委任できるというメリットがあります。株主総会による決議よりも、経営に精通している取締役の合議によって判断する方が合理的な意思決定をスピーディに行える可能性が高いでしょう。
そのため、会社組織が大規模になるに従って、取締役会の設置を検討する会社が多くなります。ただし、会社の解散や発行している株式の内容に関することなど、重要な項目については株主総会決議が必要です。
一方で、会社が置かれている状況の変化によって、過去に設置した取締役会を廃止した方が合理的なケースも考えられます。
取締役会の廃止を検討するのが適切な場合としては、以下のような状況が考えられるでしょう。
経営判断のスピードを早め、煩雑な手続きをなくしたいとき
取締役会を廃止すると、それ以降は取締役となっている人たちの過半数によって経営判断を行うことが可能となります。
会社の取締役が社長一人である場合には、実質的には社長の独自の判断によって決定を行うことができますから、経営判断のスピードを高めることができるでしょう。
取締役会が置かれている会社では、取締役会の決議にかけるべき事案が出るたびに、招集や議決の手続きを行なって、議事録を作成しなくてはなりません。
もし、経営判断が行われた後になって、必要な手続きが履践されていないことが発覚した場合には、経営者の責任が追及されてしまうことも考えられます。
取締役会が設置されているものの、実質的には1人の経営者が経営判断を行なっている場合には、こうした煩雑な手続きは排除してしまうのが望ましいでしょう。
名前だけを貸している人たちの責任やリスクを軽減したいとき
会社の設立時に、会社の規模に見合った体裁を整えるために、取締役会を設置しておくといったことは一般によく行われます。
取締役会を設置する場合、取締役は3名以上でなくてはならず、監査役の設置も義務付けられています。
そのため、「経営者として名前を連ねているけれど、実は何もしていない人たち」が複数人いる状況になっていることも少なくありません。
しかし、こうした「名前を貸しているだけの人たち」であったとしても、法律上は取締役や監査役の法律上の責任は当然ながら負う必要があります。
例えば、取締役が会社と利益相反にあたる行為をしたときには、監査役によるチェックが確実に行われていたのかが問題となります。
また、本来は取締役会決議が必要な項目について、代表取締役が独断で会社に指示をしたようなときには、取締役会のメンバーとなっている人の責任が追及される可能性があります。
実際には会社の経営にはノータッチで、名前を連ねているだけの人が複数人いる場合には、無用のリスクを負わせないためにも取締役会を廃止するのが望ましいことも考えられるでしょう。
役員に対する報酬を削減したいとき
取締役会設置会社においては、最低でも3名の取締役と1名の監査役が必要になります。
これらの役員に名を連ねることには、上でも見たようにリスクがありますから、たとえ実質的にはなんら仕事をしていない人たちであったとしても、会社が報酬を支払う必要があるのが一般的です。
役員報酬は会社の経費(損金)とすることが可能ですが、損金に含めることを前提とする場合には1年に1回のタイミングでしか役員の報酬額を変更することができません。
そのため、会社が置かれている状況が大きく変化したような場合でも、役員報酬は変わらず負担し続けなければならないといったケースが考えられます。
こうしたリスクを避けるためにも、不必要な人数の役員は減らしておくことは重要と言えます。
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今回は、取締役会の廃止を行う際に必要となる手続きの進め方について解説いたしました。取締役会に関するルールは、会社の定款に記載しておく必要がある項目ですから、取締役会の廃止を行うためには定款の変更手続きが必要となります。その上で、定款の変更は登記によって一般に対して公開すべき内容となりますから、法務局で定款変更の登記も必須になります。
こうした取締役会廃止の手続きは自力で行うことも決して不可能ではありません。ところが、必要書類の作成など、負担も軽くはありません。
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