【支店設置時の登記】申請までの手続きを解説
会社に関する重要事項は、取引の安全のため公示をする目的で法務局に登記されています。支店を設置したときは、重要事項に変更が生じるので変更登記をする必要があります。
支店登記とは?
会社の支店は、本店とは別に独自の営業活動を行う場所であり、本店と同じような営業所の実質を備えるものです。
そのため旧法では、本店所在地で登記した事項は、支店所在地でも登記しなければならないとされていましたが、現行法では、支店所在地で登記すべき事項は簡素化され、商号、本店所在地、支店所在地のみを登記すればいいことになっています。
支店登記申請までの流れ
ここからは、支店登記の申請手順をご紹介します。
手順①:取締役会の招集・決議
会社は、法人といって人と同じように権利を取得したり、義務を負担したりする行為ができるように法律がつくったものです。
もちろん、会社自身で行為ができるわけではなく、会社の運営に関して意思決定をする人(機関)をおき、そのなかで会社を代表する権限のある人(機関)の行為を会社の行為とみなしています。
この運営に関して意思決定をする人(機関)のことを「取締役」といい、会社を代表する権限のある人(機関)を「代表取締役」といいます。
支店は、会社の新しい営業活動の場所です。会社にとって支店設置は、運営に関する重要事項にあたります。そのため法律で支店の設置は、取締役会(取締役会を設置していない会社においては、取締役)が決めることになっています。
支店設置の決議をする前に、まず取締役会を招集する必要があります。取締役会は、各取締役が招集することができます。
取締役会を招集する取締役は、会日より1週間前までに各取締役に対して招集通知を発送します。
支店を設置する取締役会の決議では、決議に参加できる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数の賛成が必要です。
また取締役会では、具体的な支店の設置場所や移転時期も決めます。
取締役会を設置していない会社では、取締役の過半数の賛成が必要です。
手順②:取締役会議事録の作成
取締役会を開催したときは、その議事について議事録を作成します。
取締役会議事録には、取締役会が開催された日時及び場所、議事の経過の要領及びその結果を記載し、出席取締役及び監査役が署名又は記名押印します。
手順③ 支店設置の登記申請
申請人
支店設置の登記は、会社を代表する権限のある人、すなわち代表取締役が申請します。
登記期間
取締役会の決議又は取締役の決定に基づき、会社が支店を設置したときは、2週間以内に登記を申請します。
必要書類
- 取締役会の議事録または取締役の過半数の賛成を証する書面。
- 司法書士(代理人)によって申請する場合は、会社の代表者が法務局に届けてある印鑑を押印した委任状。
登録免許税
支店設置の登記の申請には、国税である登録免許税を納付する必要があります。
①本店と同じ管轄内に支店を設置した場合
本店所在地の法務局において設置した支店の数1箇所につき60,000円
②本店と違う管轄に支店を設置した場合
- 本店所在地の法務局において設置した支店の数1箇所につき60,000円
- 支店所在地の法務局においては、支店の数に関係なく1件につき9,000円
- 登記手数料として、所在地の法務局1庁につき300円
②の登記を(本支店一括)申請をした場合は、合計69,300円の登録免許税を収入印紙で納付します。
支店登記は廃止される
近年、登記のコンピューター化が進んでいます。そのため容易に本店の登記情報にアクセスすることができます。支店所在地では、商号、本店所在地、支店所在地だけが登記されており、支店の登記情報にアクセスする人がほとんどいないため支店登記は廃止されます。
いつから支店登記が廃止されるのかは未定ですが、改正法が令和元年12月11日に公布され、施行日は、公布日から3年6ヶ月以内の政令指定日となっています。
まとめ
今回、支店設置の登記申請について解説しましたが、既存の支店を別の場所に移転したり、支店そのものを廃止したりする場合にも、会社の重要事項に変更が生じることになるので、その旨変更登記が必要です。
また、改正法が施行されて支店所在地における登記が廃止されたとしても、本店所在地における支店設置、移転又は廃止の登記はする必要があります。