【資本金の減額(減資)】登記の手続きと必要書類
現在の日本の法律には、会社の最低資本金を定める規定はありません。
以前は、株式会社で1,000万円以上、有限会社で300万円以上の資本金が必要でしたが、平成18年の法改正により、資本金は1円以上で足りることになりました。
そのため、会社は自由に資本金を減額(減資)することができます。
ただし、減資するためには所定の手続きを踏んだ上で、法務局にて登記を申請する必要があります。
本記事では、資本金の減額(減資)の登記に必要な手続きと書類について解説します。
減資とは
減資とは、会社の資本金を減額することをいいます。
資本金は事業を行う元手になるお金なので、多ければ多いほど良いと思われるかもしれません。
しかし、目的によっては減資するのが有効なこともあります。その場合、減資することによってメリットが得られますが、デメリットもあるので注意しましょう。
減資の目的
減資は、主に次の3つの目的のために行われます。
- 株主への配当や自己株式の取得を行うため
- 欠損を補填するため
- 税制上の優遇措置を受けるため
株主への配当や自己株式の取得は、分配可能額の範囲内でしか行うことができません。分配可能額がわずかしかない場合は、減資をして剰余金に回すことで分配可能額を増やすことができます。
また、分配可能額がマイナスになっている場合、つまり欠損が生じている場合も、減資をして欠損金に充てることで欠損を填補することができます。
さらに、資本金1億円以下の会社は中小企業の扱いとなるので、法人税率の軽減や事業税の外形標準課税の免除などさまざまな税制上の優遇措置を受けることができます。
減資のメリット
減資のメリットは、上記の目的を達成できることです。
自己株式を取得すると、自社の持ち株比率を高めることができます。議決権を多く確保できるので、経営の主導権を維持することができます。また、自己資本比率を高めることで会社に対する信用を高め、株価の上昇を期待することもできます。
資金繰りとの関係では、欠損が生じていると貸借対照表に赤字として記載されるため、銀行などからの融資を受けにくくなります。減資によって欠損を填補することで赤字を解消すれば、資金調達もしやすくなります。
税制上のメリットも見逃せません。資本金1億円超の大企業から1億円以下の中小企業に変更することで、数百万円から数千万円の節税につながることも珍しくありません。節税によって経営を改善できる会社も少なくないでしょう。
減資の登記手続き
会社の資本金の額は登記事項とされているので、減資をした場合は登記申請をすることが必要です。
実際に登記申請をする前には、減資について会社で決議をすることと、債権者保護の手続きを行わなければなりません。
会社での決議
減資については、原則として株主総会の特別決議が必要です。
ただし、定時株主総会において欠損の填補に充てる場合、つまり減額する資本金の額が定時株主総会の日における欠損の額を超えない場合は、株主総会の普通決議によることが可能です。
また、株式の発行と同時に減資を行う場合で、効力発生日後の資本金の額が効力発生日前の資本金の額を下回らないときは、取締役会決議によることもできます。取締役会を設置していない会社では、取締役の過半数による決定によることが可能です。
いずれの場合も、決議する事項は以下のとおりです。
- 減少する資本の額
- 減額する資本金を資本準備金に充てるときはその額
- 減資の効力発生日
債権者保護の手続き
資本金を減額すると、会社の財産を唯一の引き当てとしている債権者に重大な利害を及ぼすおそれがあります。そのため、減資の効力が発生する日までに債権者を保護する手続きを行う必要があります。
具体的には、以下の手続きによって債権者に異議を述べる機会を確保します。
- 官報での公告
- 各債権者に対する個別の催告
まず、減資の効力発生日より前に1か月以上の期間を定めて、官報で公告します。
併せて、知れている債権者に対しては個別に催告する必要があります。
なお、定款で定めている公告方法が新聞への公告掲載や電子公告である場合は、その方法と官報での公告を行うことで、各債権者に対する個別の催告は省略することが可能です。
効力発生
減資の効力は、株主総会等で効力発生日として定めた日において発生します。ただし、効力発生日までに債権者保護手続きを終了していなければなりません。
異議申述期間内に債権者が異議を述べなかった場合は、減資に同意したものとみなされます。したがって、異議を述べる債権者が全くいなければ、上記の効力発生日に減資の効力が発生します。
債権者から異議が出た場合は、その債権者に対して弁済または相当の担保の提供をするか、弁済を受けさせるために信託会社等へ信託する必要があります。
ただし、減資をしても債権者を害するおそれがない場合は弁済や担保の提供、信託をすることは不要です。
なお、債権者保護手続きが効力発生日までに終わりそうにないときは、株主総会の決議等によって効力発生日を変更することが可能です。
登記申請手続き
減資を行ったときは、効力発生日から2週間以内に、会社の本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請する必要があります。
登記すべき事項は、以下の2点です。
- 変更後の資本金の額
- 変更した年月日
登記申請後、1週間~10日ほどで登記が完了します。
登記申請を怠ると、100万円以下の過料の制裁を受けるおそれがあるので注意しましょう。効力発生日から2週間以内に「申請」を行っておけば大丈夫です。
減資の登記に必要な書類
減資の登記を申請するには、株式会社変更登記申請書に以下の書類を添付して提出することが必要です。
- 株主総会議事録(または取締役会議事録、あるいは取締役決定書)
- 株主リスト(株主総会議事録を添付する場合)
- 一定の欠損の額が存在したことを証する書面
- 公告をしたことを証する書面
- 各債権者へ個別の催告をしたことを証する書面
- 委任状(登記申請を代理人に依頼する場合)
場合によっては必要となる書類
なお、定款で定めている公告方法で公告した場合は、各債権者へ個別の催告をしたことを証する書面に代えて、以下のいずれかの書類が必要です。
- 公告が掲載された新聞の該当頁
- 電子調査聞機関による調査報告書
また、異議を述べた債権者がいる場合は、上記の書類に加えて以下の書類が必要です。
- 弁済したことを証する書面
- 担保権を設定したことを証する書面
- 信託したことを証する書面
異議を述べた債権者がいるものの、その債権者を害するおそれがない場合は、上記の書面に代えて次の書類が必要です。
- 異議を述べた債権者に損害を与えるおそれがないことを証する書面
登記申請にかかる費用
減資の登記申請には3万円の登録免許税が必要です。
株式会社変更登記申請書の収入印紙貼付台紙に、3万円分の収入印紙を貼って法務局へ提出することによって納めます。登録免許税は、現金納付や電子納付をすることもできます。
まとめ
今回は、資本金の減額(減資)の手続きの流れと登記申請に必要な書類についてご説明しました。
会社は自由に減資ができるものの、債権者の利益を害しないための手続きを行うことと、それを証明する書類を準備しなければ登記申請は受け付けられません。
本記事でご説明した手続きは全て自力で行うことも可能ですが、必要書類の準備にかかる負担は軽いものではありません。
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