【役員重任登記】申請までの手順をケース別に解説
取締役や代表取締役、監査役などの役員を重任(再任)したら登記しなければなりません。
「同じ人が役員を続けるのだから、登記は不要では?」
そう感じる方もいると思いますが、大きな間違いです。重任登記を怠ると会社が解散したとみなされるおそれもあります。
この記事では、役員重任登記の申請までの手順をケース別に紹介します。
本題に移る前に、まずは下図をご覧ください。重任登記は取締役会の有無や代表取締役を選定方法の違いにより、大きく4つのケースに分けられます。
①~④のケースのうち、貴社にあてはまる番号をご確認の上、読み進めてください。
役員重任の登記申請までの流れ(ケース別)
重任とは、役員が任期満了で退任すると同時に、同じ役員が再び就任することです。
役員を重任するときは重任登記だけで足りますが、退任と就任のタイミングがずれると、退任登記と就任登記の両方をしなければなりません。費用が倍増するので要注意です。
ここからは、前掲したフロー図の①~④のケース別に、申請手続きの流れを説明します。
ケース①:取締役会を設置している会社
取締役会を設置している会社(取締役会設置会社)が重任登記をする場合、登記申請の手続きは次の手順で行います。
手順1.定時株主総会を開催し、取締役と監査役を選任
通常、事業年度の最終日から3ヵ月以内に定時株主総会を開催します。定時株主総会では、取締役と監査役を株主総会の決議(普通決議)により選任し、就任の承諾を得ます。
手順2.取締役会を開催し、代表取締役を選定
取締役会で代表取締役を選定し、就任の承諾を得ます。
手順3.必要書類の作成
必要書類は、役員全員を重任するか、役員の一部を重任するかによって変わります。
【役員全員を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録
- 就任承諾書
- 委任状(代理人申請を行う場合)
【役員の一部を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 定時株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録
- 就任承諾書
- 印鑑証明書または本人の確認ができるもの(新任役員のみ必要)
- 委任状(代理人申請を行う場合)
手順4.管轄法務局に登記申請
定時株主総会の開催日の翌日から2週間以内に、管轄法務局へ重任登記の申請を行います。登記申請でかかる費用は登録免許税1万円(資本金が1億円を超える場合は3万円)です。
ケース②:取締役会非設置会社で、代表取締役を株主総会決議で選定
取締役会を設置しておらず、代表取締役を「株主総会の決議」で選定する場合の登記申請まで流れは次のようになります。
手順1.定時株主総会で取締役・監査役、代表取締役を選ぶ
事業年度最終日から3ヵ月以内に開催する定時株主総会で、株主総会決議により取締役、監査役を選任、代表取締役を選定(いずれも普通決議)し、就任の承諾を得ます。
手順2.必要書類の作成
役員全員を重任するか、役員の一部を重任するかによって、必要書類は異なります。
【役員全員を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 委任状(代理人申請を行う場合)
【役員の一部を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 印鑑証明書または本人の確認ができるもの(新任役員のみ必要)
- 委任状(代理人申請を行う場合)
手順3.管轄法務局に登記申請
必要書類を作成・手配し、定時株主総会の開催日の翌日から2週間以内に、管轄の法務局へ登記申請を行います。費用は、登録免許税1万円(資本金が1億円を超える場合は3万円)がかかります。
ケース③:取締役会非設置会社で、代表取締役を取締役の互選で選定
取締役会を設置しておらず、代表取締役の選定方法を「取締役の互選」と定款に記載している会社において役員を重任する場合は、次のような流れで登記手続きをします。
手順1.定時株主総会で取締役と監査役を選任
事業年度最終日から3ヵ月以内に定時株主総会を開催します。定時株主総会では、取締役・監査役を株主総会決議(普通決議)によって選任し、就任の承諾を得ます。
手順2.取締役の互選により代表取締役を選定
「取締役の互選」により代表取締役を選定し、就任の承諾を得ます。
手順3.必要書類の作成
役員全員を重任するか、役員の一部を重任するかによって、必要書類は異なります。
【役員全員を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役の互選書
- 就任承諾書
- 定款
- 委任状(代理人申請を行う場合)
【役員の一部を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 印鑑証明書または本人の確認ができるもの(新任役員のみ必要)
- 取締役の互選書
- 定款
- 委任状(代理人申請を行う場合)
手順4.管轄法務局へ登記申請
定時株主総会の開催日の翌日から2週間以内に、管轄の法務局へ登記申請します。費用は、登録免許税1万円(資本金が1億円を超える場合は3万円)がかかります。
ケース④:取締役会非設置会社で、代表取締役を「定款変更」で選定
取締役会非設置で、代表取締役を「定款変更」で選定する会社が役員を重任する場合は、次の手順で登記を行います。
手順1.定時株主総会で、取締役と監査役の選任
事業年度最終日から3ヵ月以内に定時株主総会を開催します。定時株主総会では、取締役・監査役を株主総会決議(普通決議)によって選任し、就任の承諾を得ます。
手順2.定款変更の株主総会決議により代表取締役を選定
同じく定時株主総会で、定款を変更するための決議(特別決議)をとります。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成することで可決されます。
手順3.必要書類の作成
役員全員を重任するか、役員の一部を重任するかによって、必要書類は異なります。
【役員全員を重任する場合の必要書類】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 委任状(代理人申請を行う場合)
【役員の一部を重任する場合の必要書類 】
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 印鑑証明書または本人の確認ができるもの(新任役員のみ必要)
- 委任状(代理人申請を行う場合)
手順4.管轄法務局へ登記申請
定時株主総会の開催日の翌日から2週間以内に、管轄の法務局へ登記申請します。費用は、登録免許税1万円(資本金が1億円を超える場合は3万円)です。
役員の任期をチェックする方法
重任は、任期満了による退任が前提になります。そのため、それぞれの役員の任期を把握しておくことが大切です。
役員の任期については、会社法で次のとおり定められています。
役員 | 任期 |
取締役 | 選任後、2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結まで |
監査役 | 選任後、4年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結まで |
非公開会社の場合は、定款に定めることによって、最長10年まで任期を伸長することができます。また、取締役の任期は定款によって短縮可能ですが、監査役の任期は短縮できません。
代表取締役の任期については会社法には明文の定めがありませんが、会社の取締役でなければ就任できないので、取締役の任期に従います。
役員の任期は次の項目をチェックして、正確に把握しておきましょう。
- 任期に関する定款の記載
- 事業年度の末日
- 役員の選任日
- 選任日以降の各事業年度の定期株主総会の開催日
重任登記を怠ると「解散」することも
非公開会社の場合、取締役の任期を定款の定めにより10年に伸長できるようになったことから、重任登記を忘れてしまうことが以前よりも増えています。
任期が満了したにも関わらず、重任登記をしていないと、会社に取締役がいないとみなされる状態になってしまいます。
この場合、会社法の定めに従っていないので、過料を課されることがあります。そこまでいかなくても、本来ならば重任の登記だけで済むところを、退任と就任の2つの登記を行わなければならなくなります。
さらに、万が一、役員の重任登記を忘れたままで12年が過ぎてしまうと大変です。その株式会社は休眠会社として、一方的に解散登記がされてしまうこともあります。実際に、12年も重任登記を忘れたまま放置してしまい、会社が登記官の職権で解散させられている例もあります。
うっかり忘れていたせいで、最悪の場合は会社が消滅してしまうわけです。重任の手続きは確実に行いましょう。
役員重任登記の手続きを簡単に行う方法
以上のように、役員重任登記の手続きは、会社の機関設計等によって手続きの手順や必要書類の種類が異なります。さらに、書類はいくつかの種類を手配・作成する必要があるため、煩雑になりがちです。
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