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消費税の「課税事業者」「免税事業者」判定方法は?

事業者は、消費税を納める義務のある課税事業者と、納付が免除される免税事業者に区分されます。この記事では、課税事業者と免税事業者を判定する要件や、選択できる場合について紹介します。

「課税事業者」「免税事業者」の判定方法

課税事業者と免税事業者は、どのように判定されるのでしょうか。それぞれの要件を紹介します。

課税事業者の要件

課税事業者とは、消費税の確定申告を行い、消費税を国に納付する義務のある事業者です。

以下のいずれかに該当する場合には、課税事業者となります。

  1. 基準期間における課税売上高が1,000万円を超える。
  2. 特定期間における課税売上高及び給与等支払額が1,000万円を超える。
  3. 消費税課税事業者選択届書を提出している。
  4. 法人設立から2年以内で、資本金が1,000万円以上である。
  5. 相続・合併・分割等についての免除の特例により課税事業者となる。
  6. 前期、前々期に課税事業者である期間に調整対象固定資産を取得した。
  7. 前期、前々期に課税事業者である期間に高額特定資産を取得した。
  8. 前期、前々期に免税事業者である期間に高額特定資産を取得して棚卸資産について調整措置を適用している。

基準期間は、法人の場合は前々(2期前)事業年度のことを指します。個人事業主の場合には事業年度はないので、前々年(一昨年)です。

特定期間とは、法人の場合は前事業年度(1期前)開始から6か月間、個人事業主の場合は前年の1月1日から6月30日までの期間のことです。

課税売上高とは、消費税を差し引いた後の売上のことです。ただし、基準期間においてすでに免税事業者として扱われていた場合には、消費税込みの売上を課税売上高としなければなりません。

給与等支給額とは、すでに支払った給与、賞与などの所得税の対象となるものを指します。通勤手当や旅費、退職手当等は含まれません。

5.~8.については、特別な場合に検討すべき要件なので、該当する可能性がある場合には税理士等の専門家に相談しましょう。

免税事業者の要件

免税事業者とは、顧客から受け取った消費税を国に納付する義務が免除されている事業者です。

消費税を納付する義務がない一方で、自分が提供する商品やサービスについては顧客から消費税を受け取ることができます。

免税事業者となる要件として、以下のすべてを満たしている必要があります。
基本的には、課税事業者の要件の逆を考えればよいことになります。

  1. 基準期間における課税売上高が1,000万円以下である。
  2. 特定期間における課税売上高もしくは給与等支払額が1,000万円以下である。
  3. 消費税課税事業者選択届を提出していない。
  4. 法人設立から2年以内の場合に、期首(事業年度の開始時点)の資本金が1,000万円未満である。
  5. 相続・合併・分割等についての免除の特例による課税事業者に該当しない。
  6. 前期、前々期に課税事業者である期間に調整対象固定資産を取得していない。
  7. 前期、前々期に課税事業者である期間に高額特定資産を取得していない。
  8. 前期、前々期に免税事業者である期間に高額特定資産を取得して棚卸資産について調整措置を適用していない。

課税事業者と免税事業者は選べる?

課税事業者の要件に当てはまる場合には、免税事業者になることはできません。一方、免税事業者の要件を満たしている場合でも、任意で課税事業者になるとことは認められます。

免税事業者は、顧客に対しては消費税を請求することができますが、その消費税を国に納税する必要がないため、基本的には免税事業者の方がメリットのあるケースが大半です。

ただし、事業の内容によっては、顧客から預かった消費税よりも自分が支払った消費税の方が高額になるケースがあります。その場合には、課税事業者を選択して消費税の確定申告をすることにより、多く支払った消費税の還付を受けることができます。

免税事業者には消費税の還付を受ける権利はないため、課税事業者を選択する方がメリットのある場合があります。

以下のようなケースでは、課税事業者を選択する方がメリットのあると考えられます。

・輸出業が中心となる事業を営んでおり、消費税の還付が経常的に発生する。

輸出は免税取引となるので売り上げに対して消費税は課税されませんが、仕入れには消費税が課税されるため、仕入れで支払った消費税について還付を受けることができます。

・開業したときの設備投資で課税仕入れが多く、課税売上が少なくなる。

開業したばかりのときは売り上げが少なく、設備投資の際には消費税を支払っているため、売り上げで受け取った消費税よりも設備投資で支払った消費税の方が多くなり、課税事業者であれば消費税の還付を受けることができます。

ただし、一度課税事業者を選ぶと2年間は免税事業者にはなれないので、翌年以降の見込みも含めて総合的に判断する必要があります。

まとめ

課税事業者と免税事業者は、売上高などの要件によって判定されます。課税事業者の要件を充たせば他の選択肢はありませんが、免税事業者の要件を充たす場合には、課税事業者を選択することもできます。

免税事業者の要件を充たし、選択ができる場合には、自分の事業であればどちらを選んだ方が有利になるのか、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。