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取締役と監査役の任期は何年?任期を伸長する方法は?

取締役は、株主総会とともに、株式会社で必ず設置しなければならない機関です。一方、監査役は、公開会社、会計監査人を置く大会社、一定の清算会社などでは必ず置かなくてはなりませんが、それ以外の会社では設置が任意の機関です。

取締役、監査役とも、株式会社では非常になじみの深い機関ですが、この2つの機関を置く場合は、必ず任期の定めを設ける必要があります。そこで、本記事では、取締役及び監査役の任期やその定め方について解説していきます。

取締役の任期

取締役の任期は、会社法で次のように規定されています。

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで

(会社法332条1項)

取締役の任期は、これが基本となります。なお、同法332条1項但書では、取締役の任期は「定款または株主総会の決議によって、短縮することを妨げない」と規定しています。したがって、定款または株主総会の決議があれば、その任期を、選任から1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで、とすることも可能です。

非公開会社の場合

会社法332条2項では、公開会社でない会社(指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社は除く)は、定款で、その任期を、最長で、選任から10年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時までとすることができると規定しています。

公開会社でない会社(非公開会社)とは、株式の全部について譲渡制限をつけている会社が該当します。非公開会社は、創業者一族が株式の大部分を保有している個人経営に近い小規模な会社が多いのですが、そのケースでは、取締役の任期を大幅に延長することが可能です。

なお、公開会社は、取締役の任期の延長はできません。

指名委員会等設置会社の場合

指名委員会等設置会社の場合には、取締役の任期は、選任から1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで、法定されています。この場合には、これを短縮することも延長することもできません。

委員会設置会社の取締役は、毎年の定時株主総会ごとに、再任されるか退任しなければなりません。

監査等委員会設置会社の場合

監査等委員会設置会社は、2015年5月に実施された会社法改正で新たに導入された株式会社の機関設計です。この会社の特徴は、3人以上の取締役(過半数が社外取締役)で構成される監査等委員会が、監査役会の代わりに取締役の職務執行を監査するものです。

監査等委員会設置会社の取締役の任期は、選任から1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時までとなっています。

監査等委員取締役の任期は2年以内

監査等委員会設置会社においては、監査等委員取締役と通常の取締役を区別して選任しなくてはならないとしていますが、監査等委員取締役の任期は、通常の取締役とは異なり、選任から2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時までとなっています。なお、この期間は、短縮することは不可能とされています。

任期終了の例外

例外的に、以下の事由が生じた場合には、法律の規定や定款の定めに関わらず、取締役の任期は終了します。

  1. 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
  2. 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
  3. 株式の全部に譲渡制限を設けている会社が、その株式の全部又は一部の譲渡制限を解除して、公開会社となる場合(監査等委員会又は指名委員会等設置会社となる場合は除く)

取締役の任期を短縮・伸長する方法

取締役の任期は、定款にその定めがなければ、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除き、選任から2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時までなります。

取締役の任期は、公開会社・非公開会社に関わらず、定款又は株主総会の決議で短縮することができます。

非公開会社の場合には、任期を延長することも可能で、定款で任期を定めることにより、最長で選任から10年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで伸ばすことができます。

公開会社の場合には、選任から2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時を超えて、任期を延長することはできません。

取締役の任期を、選任から2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時までとする期間以外の期間とすることが可能な場合で、実際にそうする場合には、定款でその期間を定める必要があります。

監査役の任期

会社法では、監査役の任期を次のように規定してます。

選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで

(会社法336条1項)

監査役の場合には、定款の定めや株主総会の決議によって任期を短縮することはできません

非公開会社の場合

会社法336条2項では、非公開会社においては、定款で定めることにより、その任期を、最大で、選任から10年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで延長することが可能であると規定しています。

非公開会社である場合には、監査役の任期は、取締役の任期と同じように、大幅な延長が可能です。非公開会社では、取締役も監査役も、会社の創業者又はそれに近い人物がなることが多いので、頻繁に改選をする必要がないためです。

なお、公開会社の場合には、監査役の任期の延長はできません。

任期終了の例外

監査役の任期は、上記の定めに関わらず、以下の事由に該当した場合には、そこで終了します。

  1. 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
  2. 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
  3. 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めの廃止する定款の変更
  4. 株式の全部に譲渡制限を設けている会社が、その株式の全部又は一部の譲渡制限を解除して、公開会社となる場合(監査等委員会又は指名委員会等設置会社となる場合は除く)

監査役の任期を伸長する方法

監査役の任期は、取締役のそれよりも柔軟性がありません。監査役の任期は、定款に特別の定めがない場合には、選任から4年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで、としていますが、唯一の例外を除いて、これ以外の期間を監査役の任期とすることはできません。

唯一の例外とは、非公開会社において、定款によって、選任から10年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時まで伸長するケースです。

監査役の任期は硬直していて、公開会社の場合は、必ず、選任から4年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終了の時までになりますし、非公開会社でも、定款に特別の定めがなければ、同じ期間となります。

したがって、監査役の任期を会社が定めることができるのは、非公開会社で、監査役の任期を伸長する場合のみですが、このケースでは、定款で伸長後の期間を定める必要がありますので、定款を変更する株主総会の特別決議が必要になります。