取締役は要注意!利益相反取引について知っておくべき3つのポイント
会社の取締役を務めていると、会社に対してお金を貸したり、会社から物品を買ったりといったように会社と取締役との間で何らかの取引をする機会が少なくありません。
しかし、会社との取引は内容によっては取締役の利益相反取引として、後から取引の効力を覆されたり、損害賠償請求をされたりする可能性もあります。
今回は、取締役が知っておくべき利益相反取引に関する3つのポイントをご紹介します。
ポイント① 利益相反行為の概要を把握しておく
利益相反取引とは何か?
利益相反取引とは、簡単に言えば「会社と取締役との利益が相対立する取引」のことを指します。
例えば、取締役が会社からお金を借りる場合を考えてみます。
取締役は会社の意思決定に影響を与えることで、無利息または相場よりも低い利率で会社からお金を借りることができます。
この場合、取締役は自分や第三者のために、会社の利益を犠牲にしていると言えます。そのため、会社を貸主、取締役を借主とする金銭消費貸借取引は利益相反取引に該当します。
どんな行為が利益相反行為となるか?
利益相反取引には、直接取引と間接取引という2つの類型が存在します。
直接取引
直接取引とは、取締役が当事者として、または他人の代理人・代表者として、会社とする取引のことをいいます(会社法356条1項2号)。
直接取引の具体例としては、以下のようなものがあります。
- 製品などの会社財産を譲り受ける
- 会社に対して財産を譲渡する
- 会社が取締役に金銭を貸し付ける
- 取締役が会社に利息付きで金銭を貸し付ける(無利息の場合は利益相反取引に該当しない)
間接取引
間接取引とは、会社が取締役以外との間でする、会社と取締役の利害が相反する取引のことをいいます(会社法356条1項3号)。
間接取引の具体例としては、以下のようなものがあります。
- 取締役の債務を会社が保証する
- 取締役の債務を会社が引き受ける
- 取締役の債務につき会社が担保を提供する
ポイント② 利益相反取引をする場合は承認を得る
利益相反取引をする場合、取締役は、その取引に関する重要な事実を開示して承認を得なければなりません。(会社法356条1項2号・3号、365条1項)
取締役会設置会社の場合の場合は、取締役会の承認を得る必要があります。
それ以外の会社の場合は、株主総会の承認を得る必要があります。
注意すべきは、取引の当事者となる取締役は特別利害関係人となるため、上記承認決議には加わることができないという点です。
もし承認決議に加わっている場合、株主総会の場合は決議取消事由に、取締役会の場合は無効事由に該当する可能性があります。
また、取締役会設置会社においては、利益相反取引をした取締役は、取引をした後、遅滞なく、その取引に関する重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会社法365条2項)。
利益相反取引となるかわからない行為の場合は、会社の承認を得てから行為を行うと良いでしょう。
ポイント③ 承認のない利益相反取引の効果を理解する
承認を受けないで利益相反取引をした場合、会社は、取締役または取締役が代理した直接取引の相手方に対しては、原則的に取引の無効を主張できます。
しかし、場合によっては無効を主張できないケースも存在します。
間接取引の相手方および会社が取締役を受取人として振り出した約束手形の譲受人という第三者との関係においては、取引の安全を考慮して、
(1)当該取引が利益相反取引に該当すること
(2)株主総会または取締役会の承認を受けていないことを当該第三者が知っていること
上記のの2つを会社が主張・立証しない限り、会社は、当該第三者に対して取引の無効を主張できません。
また、承認を受けても、利益相反取引により損害が生じた場合には、その取引に関して任務懈怠のある取締役は、会社に対する損害賠償責任を負うことになるので注意が必要です(会社法423条1項・3項)。
この場合、利益相反取引を行った取締役だけでなく、利益相反取引を決定したら取締役・取締役会で賛成した取締役なども任務懈怠と推定されますので要注意です。
まとめ
この記事では、取締役が知っておくべき利益相反取引に関する3つの重要なポイントを解説しました。
- 利益相反取引の概要
- 利益相反取引をする場合承認を得る
- 承認がない取引のリスク
利益相反取引を行う際は、これらのポイントを理解し、適切な承認を得た上で行うことが重要です。
利益相反取引が後から無効とされることは会社に大きな影響を与えますし、取引によって取締役が会社に対する損害賠償責任を負う可能性もあります。
利益相反取引をする際には、今回ご紹介した3つのポイントをぜひ参考にしてください。