許認可が必要となる業種と届出先は?
許認可行政という言葉がありますが、現在の日本で何か事業を起こそうとすると、役所で許可が必要な場合もあります。 許可が必要な業種で起業する場合に、許認可について何も調べないでいると、営業を開始した瞬間に、役所などから無許可営業の指摘を受け、営業を休止せざるを得ない事態に陥ることがあります。
また、例えば、有料職業紹介事業の場合、許可を受けるためには、おおむね20㎡以上の事務所を構えること、事業所の数が1箇所の場合でも、500万円以上の基準資産を持つこと、150万円以上の現金・預貯金を持つことなどが必要です。
許可を受けるためにある程度の資金が必要になる事業で起業する場合には、起業に必要な資金のほか、こういった許認可を受けるための資金・資産も用意する必要があります。許可を受けるためにまとまったお金が必要な場合には、事前にお金の準備をしておかないと、許可が受けられなくて、起業を中止しなければならなくなることもあります。
許可が必要になる主な業種
起業に当たり許可が必要になり主な業種を上げると、以下のようになります。
あ行
飲食店、医療法人、医薬品製造・販売、運送業、
か行
介護サービス事業、解体工事業、貸金業、学校法人、ガソリンスタンド、クリーニング業、化粧品製造・販売、建設業、古物商
さ行
産業廃棄物運搬業、社会福祉法人、酒類販売業、倉庫業、測量業
た行
探偵業、電気工事業
は行
風俗営業、宅地建物取引業
や行
薬局
ら行
旅館業、旅行業、理・美容業、労働者派遣業
上記に上げたのは、ほんの一例です。現在の日本では、非常に広い分野が規制されていますので、許認可なく実施できる事業の数は意外と限られています。従って、起業する際には、事前に役所や専門家に相談して、自分が起業しようとしている事業に許認可が必要かどうか、また、許認可が必要な場合には、どのような手続きが必要で、何を準備しておけばよいかを必ず確認します。
主な業種の許認可の手続きと届出先
以下では、代表的な業種について、許認可の手続きの概要や届出先について解説していきます。
飲食業
飲食業では、店舗の構造や設備に許可基準がありますので、必ず、店舗の設計図が完成した段階で、所轄の保健所に事前相談を行います。また、例えば、居酒屋で深夜0時以降にお酒を提供するのであれば、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書が別途必要になります。パン屋で開業する場合でも、自分で生地から焼いて菓子パンを製造する場合には、菓子製造業の許可も必要になります。こういった事項も、保健所に起業前に確認しておくといいでしょう。
飲食業では、最低でも、飲食店営業許可(保健所の許可)と防火対策物使用届(消防署へ提出)の2つの許認可等が必要です。それ以外の許可についても、ほとんどが保健所が最初の窓口となりますので、飲食業における許認可については、まず、保健所が相談先であると考えて差し支えありません。
なお、飲食店営業許可の標準処理期間は店舗完成後の検査終了から10日前後です。
運送業
運送業には、一般貨物運送事業、一般乗用旅客運送事業、一般貸切旅客運送事業などがあります。それらの許認可要件には、人的要件、営業所の規模などの物的要件、事業の安定性を担保する財産要件など様々あります。運送業関係の許認可の窓口は、最寄りの陸運支局となります。運送業関係の許認可の標準処理期間は4か月~6カ月程度です。
旅行業
旅行業には、国内・海外で営業ができる第1種旅行業と、国内のみで営業ができる第2種旅行業と、営業所のある市町村の範囲内で営業ができる第3種旅行業の3つの区分があります。この区分ごと、登録が必要になりますが、その要件が区分ごと異なりますので注意が必要です。営業範囲の広い第1種旅行業の登録が最も難しくなります。営業保証金の金額も区分ごとに異なりますので事前に確認する必要がありますし、旅行業務取扱管理者の選任も必要です。
旅行業の登録は所轄の都道府県知事が行いますので、窓口は住所地を管轄する都道府県となります。都道府県の窓口に申請書が提出されてから登録となるまでの標準処理期間は60日です。
宅地建物取引業
宅地建物取引業を行う場合でも、免許が必要になります。宅建業の免許権者は宅建業の営業範囲に応じて国土交通大臣または都道府県知事となっています。但し、どちらの免許も、窓口は、本店所在地が属する都道府県となります。免許を受けるためには営業保証金の供託も必要です。事前に原則として1,000万円+支店の数×500万円の営業保証金を用意する必要があります(不動産保証協会非加入の場合)。専任の宅建士を置く必要がありますので、自ら宅建士の資格を取るか、宅建士の資格を保有しているものを雇用する必要があります。
都道府県の窓口に申請書を提出してから宅建業の免許が交付されるまでの標準処理期間は100日程度です(大臣免許の場合)。
有料職業紹介業
有料職業紹介業で起業する場合にも免許を受ける必要がありますが、この免許を受けるためには、おおむね20㎡以上の事務所を構えることが必要ですし、事業所の数が1箇所の場合でも、500万円以上の基準資産額及び150万円以上の現金預金を保有している必要があります。
有料職業紹介業の窓口は、各地の都道府県労働局になります。労働局の窓口に申請書を提出してから免許が下りるまでの標準処理期間は約3か月です。
人材派遣業
人材派遣業で起業する場合にも免許が必要です。この免許を受けるためには、おおむね20㎡以上の事務所を構える必要があり、また、有料職業紹介責任者を選任する必要もあります。事業所の数が1箇所の場合でも、2,000万円以上の基準資産額及び1,500万円以上の現金預金も用意する必要があります。
人材派遣業の窓口は、各地の都道府県労働局になります。労働局の窓口に申請書を提出してから免許が下りるまでの標準処理期間は約3か月です。
許認可に関する相談先
許認可に関する一般的な専門家として行政書士、労働局に提出する許認可書類の場合は社会保険労務士がいます。起業に際して許認可に関する手続きを専門家にお願いしたいという場合には、提出先に応じて行政書士や社会保険労務士に依頼するとよいでしょう。
ただし、行政書士の取扱い分野は非常に広いので、依頼する行政書士は、起業する分野の許認可の手続き代行を専門に営業している行政書士とすべきです。専門外の行政書士に頼んだ場合、思うようなメリットが享受できない可能性があります。
許認可に関する手続きを専門家に依頼する最大のメリットは本業に集中できるという点です。許認可を取る仕事に時間を取られずに、本業に集中することで、開業からのスタートダッシュが可能になります。許認可などの本業と関係のないお仕事は外部に委託して、本業に集中する方が、起業が成功する可能性が高まります。許認可を取るのがいくらうまくいっても、その分本業が疎かになれば、本末転倒です。