リーガルメディア > 起業 > 設立準備 > 会社設立前の「公証役場の定款認証」 手順と必要書類とは?
設立準備

会社設立前の「公証役場の定款認証」 手順と必要書類とは?

株式会社や一般社団法人、弁護士法人、行政書士法人などの法人設立するときの必要な手続きに、定款の認証があります。定款の認証をしなければ設立の登記を申請できません。

この記事では、公証役場の定款認証がどのようなもので、どのような手順で行うのかについて解説します。

会社設立時の定款認証とは

会社を設立するためには、必ずその会社の基本的なルールについて定めた定款を作成しなければなりません。最初に作成する定款のことを原始定款といいます。
株式会社の原始定款を作成したら、公証役場で定款認証を受ける必要があります。
公的に「設立時に発起人全員の同意のもとで作成されたこと」を証明することで、定款の紛失や改ざんなどのリスクを抑止することにも繋がります。

定款認証とは、正当な手続きによって定款が作成されたことを公証人が証明することです。 認証を受けた定款がなければ、株式会社の設立登記をすることができません。

なお、合同会社などの持分会社の場合には、定款の認証は不要です。

また、会社を設立した後に定款の内容を変更することがありますが、内容を変更した場合に改めて認証を受ける必要はありません。

公証役場とは

公証役場は全国の各都道府県に存在する公的機関で、公証役場には公証人がいます。

公証人の役割は、法的に執行ができる文書として公正証書を作成したり、申請者がつくった文書が正しい手順で作成されたことを証明したりすることです。それにより、将来のトラブルを回避したり、契約や取引の安全を図ったりすることができます。

たとえば、公正証書遺言を作成し、将来遺言を執行できるようにしたり、離婚協議書を公正証書で作成し、養育費が不払いになったら強制執行できるようにしたりします。 定款を認証するのも公証人の仕事です。

定款認証の手順と必要書類 (書面の定款の場合)

まずは、電子定款ではない、書面の定款の場合について定款認証を行う手順と必要書類を解説します。

手順

手順①:定款を作成する

まずは定款を作成します。定款の内容には一定の決まりがあり、必ず記載しないと定款が無効になるもの(絶対的記載事項)、記載しなければその事項について効力が生じないもの(相対的記載事項)、記載が任意となっているもの(任意的記載事項)があります。

記載例などを参照して、必要な情報に漏れのないように作成しましょう。

手順②:公証役場への事前確認

定款を作成したら、認証を依頼する公証役場に事前に連絡します。 そして、認証を依頼する予定の定款を事前にFAX等で公証役場に送り、内容に不備がないかをチェックしてもらいます。

公証役場は内容を確認し、修正の必要があれば指示してくれるので、それに従って内容を修正します。

なお、事前確認の際に「実質的支配者となるべき者に関する申告(必要書類の項目で後述します)」を求められる場合があります。事前確認を行う公証役場にご確認ください。

手順③:公証役場での認証手続き

定款の内容チェックが済んだら、公証役場に認証する日時の予約を行ったうえで発起人が認証の手続きに出向きます。

発起人のうち、一部の人だけで認証に出向く場合には、来ない人の委任状が必要です。 定款の認証を受けたら手数料を支払い、定款の謄本を受け取ります。

必要書類等

定款認証の際に必要となる書類を解説します。

定款の原本 通常3通

定款認証の際、公証人に定款を通常3通提出し、1通は公証役場に保管され、1通は会社保管用、残りの1通は会社の設立登記用として返却されます。

会社保管用が2通以上必要な場合には、必要な数に応じて追加の定款の原本を提出します。

発起人全員の印鑑登録証明書(発行から3か月以内のもの)

株式会社の発起人の印鑑登録証明書を提出し、定款に記載された発起人の住所、氏名の正確性を公証人が確認します。

実質的支配者となるべき者の申告書

マネーロンダリング対策等の目的で、会社の実質的支配者についての申告書を提出します。申告書の用紙は、日本公証人連合会のホームページでダウンロードできます。

実質的支配者とは、基本的には株主総会の議決権の50%超を有する人です。それに該当する人がいなければ、議決権の25%超を有する人が該当します。それにも該当者がいない場合、事業活動に支配的な影響力を有する人が該当します。それもいなければ、代表取締役が実質的支配者となります。

発起人の実印

発起人の実印(印鑑登録証明書に登録されている印鑑)を持参します。

なお、発起人に会社がある場合、代表者の印鑑登録証明書と会社の登記事項証明書を提出します。

身分証明書

運転免許証等の身分証を持参します。

手数料

あらかじめ公証役場に手数料の金額を確認の上、持参しましょう。

電子定款の場合

定款は、紙媒体のものだけでなく、PDF(電子ファイル形式)の電子定款で作成することもできます。

電子定款の場合、紙媒体の場合にかかる印紙代(4万円)がかからないため、費用が安く済むというメリットがあります。ただし、PDF変換ソフト等に初期投資が必要になるので、よく検討しましょう。

電子定款の場合の認証の方法を簡単に紹介します。

手順

手順①:定款を作成してPDF化する

まずは紙文書の定款と同様に、Wordなどで定款を作成します。そして、その定款をPDFファイルに変換します。

PDFファイルに変換するためにはPDF変換ソフト(Adobe Acrobat等)が必要です。

手順②:公証役場への事前連絡

公証役場に連絡し、事前に定款をFAXで送信するなどの方法で定款の内容をチェックしてもらいます。修正の指示があれば、それに従って直しましょう。

手順③:定款に電子署名する

紙文書の定款の場合、発起人全員が実印を押印しますが、電子定款の場合には発起人の代表者が電子署名をします。電子署名をする際には、マイナンバーカード、ICカードリーダーが必要です。

手順④:電子定款をオンラインシステムで送信する

法務局の「登記・供託オンライン申請システム」に利用者登録をして、申請用総合ソフトをダウンロードします。

必要な情報の入力を行い、作成した電子定款を添付して送信します。送信する前に、電子署名を付与する必要があります。

手順⑤:公証役場に出向いて定款を受け取る

公証役場に予約して、認証を受けた定款を受け取りに行きます。電子定款の場合、公証人が電子署名をした定款を電子データで交付してくれます。定款の電子データは持参したUSBメモリやCD-Rで受け取る形となり、インターネットで送信してもらえるわけではないため、注意が必要です。

公証役場に行くときの必要書類等

電子定款を受け取るときに必要な書類等は基本的に以下のものです。ただし、持ち物は公証役場に行く前に電話で確認しておきましょう。

  • 電子定款を印刷したもの 2部
  • USBメモリ、CD-Rなどの電子記録媒体
  • 実質的支配者となるべき者の申告書
  • (発起人が複数いる場合)電子署名をした発起人以外の発起人の委任状
  • 発起人全員の印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)
  • (発起人に会社がある場合)代表者の印鑑登録証明書と会社の登記事項証明書
  • 運転免許証等の身分証明書
  • 手数料

まとめ

株式会社の最初の定款は、公証役場での認証が不可欠です。電子定款を選ぶことで手数料の節約ができますが、電子定款を作成するためにはICカードリーダー等の事前準備が必要となるため、計画的に準備していかなければなりません。公証役場は電子定款の作成方法を教えてくれるわけではないため、場合によっては紙文書の定款を選ぶ方がスムーズに進む場合もあります。