外形標準課税って何?わかりやすく解説
資本金の額が1億円を超える法人に対して課税される外形標準課税とは何か、その内容や対象法人の判定、課税のしくみについて解説します。
外形標準課税とは
法人事業税は法人が事業活動を行うにあたり道路や街灯などの公共サービスを利用していることから、その利用に対する負担を法人のもうけに求めるものです。外形標準課税とはこの公共サービスの利用に対する負担を公平に分担するという考えに基づいて課税される税金です。
外形標準課税は、資本金や人件費など企業の事業規模や付加価値などといった客観的な基準に基づいて課税されます。これにより法人事業税を納付する必要のない赤字の法人であっても、外形標準課税の対象法人であれば課税されます。
対象法人とその判定方法
外形標準課税の対象となる法人は、事業年度末日における資本金の額が1億円を超える法人です。なお、公共法人等や特別法人、医療法人、人格のない社団等及び一般社団法人、一般財団法人などは対象法人から除かれます。
外形標準課税の対象法人になるかどうかの判定は、各事業年度末日の資本金の額により判定することになっています。したがって、事業年度の中途で資本金が1億円を超えると対象法人になるため注意が必要です。
ここでいう資本金とは法人住民税の均等割の基準となる「資本金等」の額ではなく、「資本金」の額が1億円を超えた場合が対象です。
所得割
所得割の税率は以下のとおりです。
区分 令和2年4月1日以後に開始する事業年度 軽減税率適用法人 年400万円以下の所得 0.495% 年400万円を超え年800万円以下の所得 0.835% 年800万円を超える所得 1.18% 軽減税率不適用法人 軽減税率不適用法人 引用:東京都主税局ホームページ
表の「軽減税率適用法人」とは、外形標準課税が適用される法人の場合、事務所または事業所がある都道府県が3以上ある場合に該当します。それ以外の法人は「軽減税率不適用法人」となります。
なお、所得割の税率はすべて超過税率を使用します。
超過税率が適用される法人は、普通法人の場合資本金の額または出資金の額が1億円超である場合などとなっているため、外形標準課税が適用される法人の場合は該当します。
付加価値割
付加価値割は付加価値額に税率(1.26%)を乗じて計算されます。
この場合の付加価値額は以下の計算式で計算されます。
付加価値額=収益配分額+単年度損益
収益配分額は原則として、報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料で計算されます。
報酬給与額 | 給与・賞与・手当・退職金等の合計額(確定給付企業年金等の掛金や派遣会社に支払った金額のうち一定の金額も含みます) |
純支払利子 | 支払利子-受取利子 |
純支払賃借料 | 土地・建物の支払賃借料-受取賃借料 |
なお、収益配分額のうち報酬給与額の7割を超える部分については課税標準から控除されます(雇用安定控除)。
この他収益配分額の計算には、法人税において益金や損金になるものだけではなく、該当の事業年度に支出されたもののうち棚卸資産等(棚卸資産・有価証券・固定資産・繰延資産)に係るものの金額も含まれます。
また単年度損益とは繰越欠損金を控除する前の法人事業税の所得の金額であり、単年度損益に欠損金が生じる場合には収益配分額から控除します。
資本割
資本割は資本金等の額に税率(0.525%)を乗じて計算されます。
資本割については外形標準課税の対象法人の判定に用いた「資本金」の額ではなく、「資本金等」の額を用いて計算します。
資本金等の額
「資本金等の額」とは貸借対照表における「資本金の額」に一定の額を増減した金額をいいます。「法人税法上の資本金等の額」は、法人税別表五(一)Ⅱの差引合計額です。端的に言えば貸借対照表における「資本金の額」に資本取引等があればそれを加味した金額になります。
法人住民税や法人事業税、外形標準課税において用いられる「資本金等の額」は、この「法人税法上の資本金等の額」に無償増資や無償減資を加減算することによって求められます。資本金の額≠資本金等の額であることを知っておくといいでしょう。
添付義務
外形標準課税の対象法人は、申告書に貸借対照表及び損益計算書(円単位)を添付することが義務づけられています。
また、販売費及び一般管理費の明細や製造業であれば製造原価明細書、法人税別表四「所得の金額の計算に関する明細書」・五(一)「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」及び付加価値額等内訳明細書(参考書式は東京都主税局ホームページからダウンロード可能です)も添付した方が望ましいでしょう。
まとめ
外形標準課税は対象となる法人が資本金の額が1億円を超える法人に限られており、「所得割」「付加価値割」「資本割」に分けて税額が計算されるといった特徴があります。
「付加価値割」は特に計算方法が複雑になっているため注意が必要です。
対象法人や「資本割」の判定に用いられる資本金の額と資本金等の額には違いがあることも知っておきましょう。