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農地転用許可制度とは?制度のしくみや手続きをわかりやすく解説

農業の担い手不足など、さまざまな理由で農地をほかの用途に転用するケースがあります。

最近では地球温暖化対策のために、農地を太陽光発電設備への転用も増えてきました。

しかし、農地転用の許可を得るには、関連する法律を理解し、さらに多くの書類の作成が必要です。

そこでこの記事では、農地転用許可制度のしくみや手続きについてわかりやすく説明します。

農地転用許可制度とは

農地転用とは、農地を住宅や学校、駐車場、資材置き場、太陽光発電設備など農地以外の用途に変更して利用することです。

しかし、国民の食生活を支える農業を守るためには、優良な農地を確保しなければなりません。

農地転用許可制度は、投機目的・資産保有目的での農地の取得を防ぎ優良な農地を確保するための制度です。農業の生産性と土地の有効活用の調和を図るために、農地を転用する場合には一定の条件を満たして許可を受ける必要があります。

農地の定義と区分

農地の転用をする際には、実際にその土地が農地に該当するのかどうかと、どのような区分の農地に該当するのかを把握しておく必要があります。

農地の定義

農地法では、「農地」は「耕作の目的に供される土地」と定義されています。

具体的には、田、畑、果樹園、はす池などが農地です。これらの土地は登記簿上の地目が「田」や「畑」となっています。しかし、農地法では、農地かどうかは土地の客観的事実状態で決める現況主義を採用しているので、登記簿上の地目が田や畑でなくても現在の状況が農地であれば農地とみなされます。逆に、地目が農地であっても農業を営んでなければ農地にはなりません。

農地の区分

農地は、農地の位置や自然条件、都市環境などによって以下の5種類の農地区分に分けられます。それぞれの農地区分によって農地転用許可の手続き・難易度などが異なるので注意が必要です。

下記では、下の区分に行くほど農地への転用が認められやすくなります。

①農用地区域内農地

「農用地区域内農地」は、「農業振興地域の整備に関する法律(略称;農振法)」に基づき、市町村が定める農業振興地域整備計画で「農用地区域」と定められた区域内にある農地です。
生産性の高い農地で、おおむね今後10年以上にわたって農業振興を図るべき地域とされているので、転用は原則として認められません(ごく一部例外あり)。

②甲種農地

市街化調整区域にある農地のなかでも、特に良好な営農条件を備えている農地です。
おおむね10ha以上の集団的に存在する農地のうち、高性能な農業機械による営農に適している農地、または農業公共投資(土地改良事業等)の完了から8年以内で高性能農業機械での営農に適している農地です。
農地転用は原則不許可です。一部例外がありますが、例外の範囲は農用地区域内農地よりもすこし広めです。

③第1種農地

農用地区域外にある農地のなかで、特に良好な営農条件を備えている農地です。
およそ10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業の対象となった農地、生産性の高い農地などが該当します。 
農地転用は原則不許可ですが、公共性の高い事業などの場合は許可されます。

④第2種農地

第2種農地は市街化が見込まれる区域にある農地で、農用地区域内農地、第1種農地、甲種農地、第3種農地のどれにもあてはまらない農地です。
以下のような要件が該当します。

  • 鉄道の駅、バスターミナル、市町村役場、高速道路のインターチェンジなどの公共施設等の場所からおよそ500m以内にある農地
  • 用途地域から500m以内にあり、農地の規模が10ヘクタール未満の農地

周辺の第3種農地が転用できない場合に転用が許可されます。

⑤第3種農地

第3種農地は、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地です。
以下のいずれかの要件にあてはまっている必要があります。

  • 上水道管・下水道管・ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道の区域であって、およそ500m以内に2つ以上の教育施設、医療施設などの公共公益施設がある農地
  • 鉄道の駅、官公庁などの公共施設、インターチェンジなどから300m以内
  • 都市計画法上の用途地域が定められている区域内にあり、農業上の土地利用との調整が調っている農地
  • 街区の面積に占める宅地化率が40%以上の区画内にある農地
  • 土地区画整理事業の施行区域にある農地
  • 住宅や事業施設、公共公益施設などが連坦している区域内にある農地

農地転用は原則許可されます。

農地転用許可制度のしくみ

農地転用許可のしくみは、所有者自らが転用するのかどうかと、転用しようとする土地が都市計画法に基づく土地の区域区分のどれに該当するかで異なります。

農地法第4条許可・第5条許可

農地の所有者・耕作者が農地を住宅や駐車場などに転用する場合は、所有者自身が都道府県知事等に許可を申請します。

農地の所有者から売買や貸借によって転用する場合は、農地の所有者と転用しようとする事業者が共同で許可を申請しなければなりません。申請先は第4条許可の場合と同様に都道府県知事等です。

市街化区域内での農地転用

農地を転用する場合、原則的には都道府県知事の許可が必要です。しかし、農地が市街化区域内にある場合、市町村の農業委員会に届出を行い、都道府県知事への申請は不要となります。

農業委員会とは、市町村に設置されている農地に関する事務を行う行政委員会です。

市街化調整区域内での農地転用

市街化調整区域内で農地転用しようとする場合、都道府県知事の許可を得なければなりません。

ただし、都道府県知事から権限移譲を受けている政令指定都市や中核都市は、市町村の農業委員会が許可権者です。

また市街化調整区域では、都市計画法の開発許可を受ける必要もあります。

非線引き都市計画区域での農地転用

非線引き都市計画区域とは、都市計画区域のうち、市街化区域と市街化調整区域のどちらにも区分されていない区域です。

市街化調整区域内での農地転用の場合と同様に、都道府県知事等の許可を得なければなりません。3,000㎡を超える場合には、都市計画法の開発許可が必要になります。

さらに4haを超える面積の場合は、農林水産大臣との協議も必要です。

都市計画区域外での農地転用

都市計画区域外での農地転用も都道府県知事等への許可申請が必要です。都市計画区域外では面積が10,000㎡以上の場合に開発許可が必要になります。

非線引き都市計画区域と同様に、4haを超えるケースでは、農林水産大臣との協議も必要です。

農地転用許可の基準(許可の方針)

農地を転用できるかどうかの基準には、「立地基準」と「一般基準」の2つの基準があります。

立地基準

立地基準は農地区分ごとに定められている基準です。

①農用地区域内農地

農用地区域内農地の転用は原則として許可されません。転用するには、農用地区域から除外される必要があります。
例外的に、農業用施設や農産物加工、販売施設などの農用地区域の指定用途に供する場合は許可されます。

②甲種農地

甲種農地も、原則不許可です。
上記の農用地区域内農地の例外以外に、地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設などの場合、例外的に認められます。

③第1種農地

原則として不許可です。
例外となる対象は甲種農地よりもさらに広く、農村産業法や地域未来投資促進法などによって調整が整った施設などが該当します。

④第2種農地

周辺に転用可能な第3種農地がない場合などは許可されます。

⑤第3種農地

原則許可されます。

一般基準

以下のような場合、不許可となります。

  • 「他の法令の許認可の見込みがない」「関係権利者の同意が得られない」「転用できる資金力・信用がない」など、転用の確実性が認められない場合
  • 周辺の農地に対する被害防除措置が適切でない場合
  • 農地の利用の集積に支障がある場合
  • 一時転用の場合は、農地への原状回復が確実と認められない場合

農地転用許可手続きのやりかた

農地転用許可の手続き方法は、農地の面積によって異なります。

4ha以下の場合

①届け出書類を農業委員会に提出します。

②農業委員会は農業委員会ネットワーク機構から意見を聴取します。
ただし、30a以下の場合は通常、聴取は省略されます。

③農業委員会は、農業委員会ネットワーク機構の意見をもとに、意見書を作成し知事・市町村長に送付します。

④都道府県または市町村で審議し、許可された場合申請者に通知されます。

4haを超える場合

①届け出書類を農業委員会に提出します。

②農業委員会は農業委員会ネットワーク機構から意見を聴取します。

③農業委員会は、農業委員会ネットワーク機構の意見をもとに、意見書を作成し知事・市町村長に送付します。

④都道府県知事等は農林水産大臣と協議します(意見書を添付して送付する)。

⑤許可された場合申請者に通知されます。

農地転用許可を必要としない場合

以下のような場合は、農地転用許可の申請は不要です。

  • 市街化区域内の農地をあらかじめ農業委員会に届け出ていた場合
  • 国、都道府県、指定市町村が転用する場合
  • 市町村が当該市町村内の農地を道路や河川などの土地収用のために取得する場合

まとめ

農地転用許可の申請には、許可申請書以外に多くの書類や図面の添付が必要です。

許可を受けずに農地を転用した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下)の罰則を受ける可能性があります。

農地の転用に関してお困りであれば、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。