開業前の資金調達の定番「新規開業資金」を簡単解説
「起業したい!」と想いはあるけれど、開業資金に乏しくて“はじめの一歩”が踏み出せない…。
そのような方々の創業を支援する融資制度が「新規開業資金(新企業育成貸付)」です。今回は新規開業資金の概要や融資までの流れなどを説明します。
新規開業資金の概要
新規開業資金は、日本政策金融公庫が行う融資制度です。
日本政策金融公庫とは全額政府出資の金融機関で、全国に152支店あります(令和元年10月1日現在)。創業企業や小規模事業者等を支援する国民生活事業をはじめ、中小企業事業、農林水産事業などを手がけており、新規開業資金は国民生活事業が行っています。
資金の用途、貸付限度額、返済期間
新規開業資金制度の資金用途は、設備資金および運転資金です。
貸付限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円。返済期間は、設備資金20年以内、運転資金7年以内(いずれも据置期間2年以内)です。
資金用途 | 設備資金、運転資金 |
貸付限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
保証人、担保 | 日本政策金融公庫の担当者との相談により決定 |
利率 ※担保を提供する場合
担保を提供する場合、基準利率は年1.21~2.00%(令和2年3月2日現在)です。ただし、次の要件に該当する場合は特別利率が適用されます。
<特別利率A(令和2年3月2日現在、年利0.81~1.60%)>
- 地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方
- Uターン等により地方で新たに事業を始める方
- 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方
- 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて新たに事業を始める方
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む。)を受けた方
※1~4に該当する場合、土地取得資金は基準利率です。
<特別利率B(令和2年3月2日現在、年利0.56~1.35%)>
- 地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方
- 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方(一定の要件を満たす必要あり)
※いずれも土地取得資金は基準利率です。
<特別利率C(令和元2年3月2日現在、年利0.31~1.10%)>
- 地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方
※土地取得資金は基準利率です。
引用:日本政策金融公庫ホームページ
融資を受けるための要件
新規開業資金制度の対象は、これから創業する人や事業開始からおおむね7年以内の人です。
なお、融資を受けるためには、一定の要件(以下参照)を満たしたうえで、日本政策金融公庫の審査を通過しなければなりません。
<新規開業資金を利用するための要件(いずれかに該当すること)>
- 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1)現在お勤めの企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方- 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
- 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
- 雇用の創出を伴う事業を始める方
- 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方
- 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて事業を始める方
- 日本政策金融公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
- 民間金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受けて事業を始める方
- 前1~8までの要件に該当せず事業を始める方であって、新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると日本政策金融公庫が認めた方で、1,000万円を限度として本資金を利用する方
- 1~9のいずれかを満たして事業を始めた方で事業開始後おおむね7年以内の方
引用:日本政策金融公庫ホームページ
融資を受けるまでの流れ
新規開業資金は、申し込みから融資までに3~4週間ほどを要します。融資を受け取るまでの流れは次のとおりです。
①相談
まずは日本政策金融公庫に相談します。創業ホットライン(電話)や創業サポートデスク(支店窓口)での相談が可能です。
専門家に相談する場合は、全国6カ所(札幌・仙台・新宿・名古屋・大阪・福岡)にあるビジネスサポートプラザを利用しましょう。ビジネスサポートプラザは事前予約制なので注意が必要です。
②申し込み
必要書類を作成・準備して、日本政策金融公庫の支店窓口へ「持参」または「郵送」します。なお、主な必要書類は次のとおりです。
- 借入申込書
- 創業計画書
- 見積書(設備資金の場合)
- 履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
③面談
申し込みから1週間以内をめどに、審査担当者との面談が行われます。
日本政策金融公庫のホームページによると、面談では次の5つがポイントになるようです。
<面談での5つのポイント>
- 創業の動機、略歴
- 商品・サービスの内容、特徴
- 販売先、店舗等の立地条件
- 資金計画の実現性
- 収支予測の妥当性
④創業予定地の確認
審査担当者が創業予定地を直接訪れることがあります。その際、立地の利便性や競合環境の調査が行われます。
⑤審査
面談から2週間程度で審査結果が郵送で届きます。
⑥契約~融資
審査結果の書類に契約書が同封されているので、契約書等を郵送で提出します。その後、融資金が指定した銀行口座に入金されます。
まとめ
新規開業資金は、創業融資の代表的な制度です。ただし、申し込みにあたって創業計画書等を作成しなければならないため、法人設立の準備や開業準備と同時並行で進めるのは大変でしょう。
そんな時は、法人設立の手続きのほうは LegalScript(会社設立登記)を活用すると効率的です。ITを活用して開業準備を効率的に行い、新たな事業のスタートダッシュにつなげてみてはいかがでしょうか。