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中小企業が職場環境を充実させ雇用を創出させるための助成金『人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース) 』とは?

人材確保等支援助成金とは

人材確保等支援助成金とは、魅力ある職場づくりのために、労働環境の向上等に取り組む事業主や事業協同組合等に対する助成金制度です。労働者にとって働きやすく魅力を持つ職場環境により、雇用を創出することで、人材を安定的に確保し、定着させることを目的としています。

人材確保等支援助成金には9つのコースがあります(うち2つは令和4年4月1日以降、新規受け付けを休止)。雇用管理制度の整備や、若年者や女性等の入社・定着の推進、テレワークの導入など、取り組みごとに複数のコースがありますが、今回はそのうちのひとつである「中小企業団体助成コース」について解説します。

中小企業団体助成コースとは

人材確保等支援助成金のコースのひとつである中小企業団体助成コースとは、中小企業者を構成員とする事業協同組合や連合会などの、中小企業団体に向けた助成金です。

組合等が、傘下の中小企業者等の人材不足から生じる雇用や職場環境の問題に対して、労働環境を向上するのための取り組み(以下、中小企業労働環境向上事業と言います)を実施する場合に助成するもので、雇用管理の改善や雇用創出を図ることを目的としています。

改善計画を作成し、それに基づいた調査や改善のために実施したのセミナーなど、人材確のための取り組み(ここでは以下、中小企業労働環境向上事業と言います)中小企業労働環境向上事業にかかった費用の3分の2を助成します。

受給要件・申請の流れ

大前提として、この助成金において申請者、つまり助成金の支給対象となるのは「事業協同組合等」です。構成員である中小企業者が申請をしたり、助成金を受給したりするものではないことに注意しましょう。

助成金の申請をしようとする事業協同組合等は、次の受給要件と流れにより申請を行います。

【受給要件】

  • 事業協同組合等が、雇用管理に係る改善計画を作成し、都道府県知事の認定を受けること(改善計画の認定)
  • 中小企業労働環境向上事業の実施計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けること(実施計画の認定)
  • 構成員である傘下中小企業者等のために中小企業労働環境向上事業を行うこと

【申請~支給の流れ】

  • 改善計画を作成し、都道府県知事の認定を受ける
  • 中小企業労働環境向上事業計画(1年間)を作成する
  • 事業実施計画期間の開始予定日1ヶ月前までに計画書を都道府県労働局に提出する(ハローワークに提出できる場合もあり)
  • 提出した計画に基づき、中小企業労働環境向上事業の推進体制の整備、事業の実施をする(1年間の事業の実施)
  • 支給申請書を作成し、都道府県労働局に提出する(事業実施期間の末日の翌日から起算して2ヶ月以内)

このように、改善計画を作成し、申請を行ってから受給までは最低1年以上かかることに留意しましょう。

中小企業労働環境向上事業の実施について

人材確保等支援助成金では、1年間を期限として「中小企業労働環境向上事業」に取り組みます。この実施計画や実際の取り組みについては、支給対象として評価される内容が決まっているため、申請しようとするときは、必ず事前に確認しなければなりません。計画作成・届出、必須の実施項目を漏れなく行うことが、この助成金申請では非常に重要な過程です。

ここでは「中小企業労働環境向上事業」について、さらに詳しく解説します。

中小企業労働環境向上事業の推進体制の整備

まず、「中小企業労働環境向上事業」を円滑に推進するため、次の委員会や役割を持った推進員を設置しなければなりません。

【1】労働環境向上委員会

労働環境向上委員会は、中小企業労働環境向上事業の企画や立案を行うものです。構成員の選任方法は、組合の任意となっています。

【2】労働環境向上推進員

労働環境向上推進委員は、中小企業労働環境向上事業の実施に関して、中心的な役割を担う者です。この委員になる要件として、雇用管理に関する専門的な知識や経験を有すること、組合の常勤職員の所定労働日数の6割以上を労働環境向上の業務に従事していることが求められています。設置人数は任意に決められますが、最低1名以上の設置は必須です。選任方法は、組合等の役職員の中から選任、または部外の者に委嘱して選任します。

中小企業労働環境向上事業の内容

次に、事業実施期間中に実施する事業の内容です。下記表のようにⅠ~Ⅳの区分に内容が分けられます。なお、ⅠとⅣの事業は必ず実施しなければならず、ⅡとⅢの事業については、どれかひとつを実施する必要があります。

また、ここで挙げている具体的な取り組みはあくまでも一例ですので、さらに詳しい取り組みを知りたい場合は、厚生労働省が発表している最新の実施要領をチェックしましょう。

支給対象となる事業

実施

具体的な取り組みの例

計画策定・調査事業

必須

  • 計画策定事業
  • フォローアップ調査
  • 構成中小企業者の実態、業界イメージや雇用環境等の調査

安定的雇用確保事業

事業実施期間内にいずれかを必ずひとつ

  • マニュアルや好事例集、モデルキャリアプラン等の資料の作成(※)
  • 雇用管理改善の必要性啓発等のセミナー(※)
  • 雇用管理改善が進んでいるモデル企業等の見学会(※)
  • ポスターや雇用ガイドブック等の作成、配布
  • 採用活動における集団説明会
  •  

職場定着事業

  • 上記(※)と同等の取り組み
  • 職業相談事業

モデル事業普及活動事業

必須

  • 事業成果の分析検討
  • 事業効果のあった構成員である中小企業者の制度や事業等を、他の構成員の中小企業者等へ導入を進める取り組み

受給額

 助成金は次のように算定し、事業の実施にかかった費用の3分の2を助成します。

助成額 =(A)×2/3 + (B)×2/3

(A)… 「支給対象となる事業」のⅠ~Ⅳに該当する「具体的な事業」の取り組みに要した費用の額

(B)… 労働環境向上推進員の設置に要した費用の額と(A)のいずれか低い額 ※(B)×2/3の限度額は400万円

受給額は組合の規模に応じて、次のように支給上限額が決められています。

認定組合などの区分 大規模認定組合等
(構成中小企業者数
500以上)
中規模認定組合等
(同100以上500未満)
小規模認定組合など
(同100未満)
限度額1,000万円800万円 600万円

【支給対象となる経費】

  • 労働環境向上推進員の設置に係った賃金や委嘱者への謝礼など
  • 各種セミナー等に対する謝金(労働環境向上推進員以外のものが行ったものに限る)
  • 各種調査事業、講師等に対する交通費、日当、宿泊費など
  • 印刷製本費
  • 広報費
  • その他
    ※事務机やロッカー等の備品は助成対象外

また、事業実施期間を超える事業に関する支出は助成対象外となることにも注意しましょう。

まとめ

人材確保等支援助成金の中小企業団体助成コースは、中小企業団体が1年以上かけて取り組む助成金です。助成金活用について具体例が掴みづらい場合は、厚生労働省で公表している助成金の活用事例を見てみるのも良いでしょう。

実際に助成金を申請、受給した中小企業団体の抱えていた課題や取り組み、実施後の効果についてまとめられています。自団体と同様の課題や、今後取り組んでみたい事業等を見つけることができるかもしれません。

具体的な取り組みや、助成金申請・支給までのイメージをより具体的に掴むことができますので、興味のある中小企業団体がある場合は、一度確認することをオススメ致します。