本店移転登記(管轄内移転)の手続きと必要書類
会社の本店移転には、登記手続き上、管轄内の移転と管轄外の移転の2種類があります。管轄内移転の方が比較的手続きは簡潔になるケースが多いものの、定款の内容などにより手続きが異なります。
ここでは、管轄内移転の場合の手続きや必要書類について解説します。
管轄内移転とは
管轄内の本店移転とは、現在の会社本店を管轄している法務局と、移転後の会社本店を管轄する法務局が同じである場合のことです。
たとえば、現在の本店所在地が「東京都千代田区」にある場合の管轄法務局は「東京法務局」です。東京法務局は、東京都の千代田区、中央区、文京区などを管轄しています。そのため、本店移転後の住所が、東京都千代田区、中央区、文京区などであれば、管轄内移転ということになります。
一方、たとえば現在の本店所在地が東京都千代田区で、移転後の本店所在地が「東京都渋谷区」である場合、東京都渋谷区を管轄する法務局は「東京法務局渋谷出張所」であり、移転前とは異なるため、管轄外移転となります。
管轄内か管轄外かを調べる方法
登記手続きをするためには、管轄内の移転なのか管轄外の移転なのかを確認する必要があります。
管轄内か管轄外かを調べるためには、現在の管轄の法務局と、移転後の管轄の法務局がどこの法務局かを確認します。
法務局のホームページには、どの地域がどの法務局の管轄になるかが掲載されています。「登記管轄一覧」の中から、本店所在地の区域を探して、どこの法務局の管轄となっているかを確認しましょう。
管轄内移転登記までの手続き
管轄内移転の場合の手続きの手順は以下のとおりとなります。
手順①:定款の内容を確認
まずは、定款で本店についてどのように定められているかを確認します。
本店の定め方は、いくつかのパターンがあります。
- 最小の行政区画まで定めている場合(例:当社は、本店を東京都渋谷区に置く)
- 町名まで定めている場合(例:当社は、本店を東京都渋谷区A町に置く)
- 具体的な住所まで定めている場合(例:当社は、本店を東京都渋谷区A町〇丁目〇番〇号に置く)
その内容によって、定款変更のための株主総会を招集する必要があるかどうかを判断します。
(例)
現在の本店所在地:東京都渋谷区A町1丁目2番3号
移転後の本店所在地:東京都渋谷区B町2丁目3番4号
上の例の場合、1.の最小行政区画まで定款で定めていれば、移転後も東京都渋谷区となり、現在の定款の定めを変える必要はないので定款変更のための株主総会は不要です。
一方、2.または3.のように町名や具体的な住所まで定めている場合には、現在の定款の内容を変更する必要があるため定款変更決議をするための株主総会が必要です。
手順②:株主総会での定款変更決議
手順①で定款変更が必要な場合、株主総会の特別決議で可決されなければなりません。
変更後の定款の内容は、前述のとおり、最小行政区画までを定める方法、町名までを定める方法、具体的な住所まで定める方法のいずれでも問題ありません。今後定款変更の手間をなるべく少なくしたい場合には、最小行政区画まで定める方法を選ぶとよいでしょう。
手順③:取締役会等で具体的な住所等の決定
移転先の具体的な住所(例:東京都渋谷区〇町〇丁目〇番〇号〇〇ビル)や移転日についての決定をします。
この決定を行うのは、取締役会のある会社の場合は、基本的に取締役会です。
一方、取締役会のない会社の場合には、取締役もしくは株主総会で決定します。
取締役会のある会社が株主総会で決定したい場合には、定款に株主総会で決議できる旨の定めがあることが必要です。
手順④:必要書類の作成と登記申請
本店を移転した日から2週間以内に、登記に必要な書類をととのえ、管轄する法務局に本店移転登記を申請します。
申請書には、移転前の本店所在地を記載する欄と、移転後の本店所在地を記載する欄があるため注意しましょう。
管轄内移転登記の必要書類
管轄内の本店移転登記には、以下の書類が必要となります。
申請書
登記申請書を作成します。申請書の主な記載内容は、会社法人等番号、商号、移転前の本店所在地、登記の事由、登記すべき事項(令和〇年〇月〇日東京都渋谷区〇町〇丁目〇番〇号(※変更後の本店住所)に本店を移転)などです。
株主総会議事録
定款変更が必要なケースでは、定款変更決議をした株主総会議事録を添付します。
取締役会議事録・取締役の決定書
移転先の所在地や移転日について決議したことを記した取締役会議事録や取締役の決定書を添付します。
株主リスト
株主総会議事録の添付が必要な場合には、株主リストを添付します。
管轄内移転登記の費用
管轄内の本店移転の場合、登録免許税が3万円かかります。
管轄内移転登記の期限
本店移転登記の場合、本店を移転した日から2週間以内に登記申請します。
まとめ
管轄内の本店移転は簡単だと考えがちですが、定款の内容などにより手続きが変わるためまずはきちんと自分の会社の定款を確認する必要があります。また、本店移転をすると、登記以外にも様々な変更の届出等の手続きが発生したり、引越しの準備で慌ただしくなるため、自分一人で登記の書類を揃えることは思いのほか困難です。
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