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労務の手続き

労務の手続き⑮~従業員が出産した時~

従業員の出産にあたっては、社会保険や労働保険、労働基準法などで、さまざまな労働者保護規定が設けられています。これを適切に運用しないと、法律違反に問われたり、熟練した労働者が出産を機に退職したりして、会社に損害を与えかねません。

そこで、今回は、従業員が出産した場合の労務の手続きについて解説します。

従業員が出産した場合の健康保険の手続き

出産手当金申請書の提出

従業員が出産した場合、原則として、産後8週間は就業させてはなりません。産前6週間については、労働者が請求した場合には就業させてはなりません。

労働者が産前産後の休暇を取得した場合、健康保険から出産手当金を受け取ることができます。この出産手当金を受け取るためには、出産手当金支給申請書を提出する必要があります。

提出先、提出時期、提出方法

出産手当金支給申請書の提出先は、協会けんぽの各都道府県支部または健康保険組合です。

提出時期は、支給対象者の方が、産休に入った時でもいいですし、出産したときでもかまいません。ただし、健康保険の給付金の時効は2年ですので、産休に入ってから2年経過後に申請した場合には、時効によって、給付金の全部又は一部が受給できないことがあります。

申請書の提出方法は、協会けんぽの支部の窓口または健康保険組合の窓口に直接提出するのが基本ですが、郵送での手続きも可能です。

支給額

出産手当金の支給額は、産前産後休業期間1日当たり、標準報酬月額の1/45(標準報酬日額の2/3)です。なお、産前産後期間中に、被保険者が報酬を受けた場合には、その報酬の金額分が出産手当金の支給額から控除されます。

様式の取得方法

協会けんぽの出産手当金支給申請書の様式は、協会けんぽのホームページからダウンロードによって取得することができます。

記載時の注意点

記載例も同じようにして取り寄せることができるので、記載例を見ながら請求する本人が作成することも可能です。ただし、事業主記載欄と医師の証明欄がありますので、事業主及び医師の協力が必要です。

請求者本人がこの給付金を請求する場合、事業主がやることは、請求書の事業主記載欄への記入だけですが、本人に代わって事業主がこの手続きを代理で行う場合には、事業主がこの手続きの全てを行う必要があります。

出産育児一時金支給申請書の提出

出産育児一時金は、被保険者やその扶養者が出産した時に、協会けんぽに申請すると、1児あたり42万円(産科医療保障制度に加入していない医療機関で出産した場合は40.4万円)が支給されるものです。この一時金を受け取るための手続きは、出産育児一時金申請書によります。

妊娠4か月以上での死産、流産、人工妊娠中絶でも、申請すれば、この給付金を受け取ることができます。また、多胎出産の場合、胎児1人につき、42万円(又は40.4万円)が支給されます。

提出先、提出時期、提出方法

出産育児一時金支給申請書の提出先は、協会けんぽの各都道府県支部又は健康保険組合の窓口です。

提出時期の指定は特にありませんが、健康保険の一時金の時効は出産日の翌日から2年間で、それを超えると申請できなくなります。

提出方法は、窓口に直接持参する方法のほかに、郵送で送付する方法も認められています。

様式の取得方法

協会けんぽの出産育児一時金支給申請書の様式は、協会けんぽのホームページからダウンロードによって取得することができます。

記載時の注意点

記載例も同じようにして取り寄せることができるので、それを見ながら請求者本人が作成することも可能です。

出産に関する医師の証明又は市区町村長の証明欄がありますので、医師の協力又は市役所の担当者の協力が必要です。

請求者本人がこの給付金を請求する場合、事業主がやることは、請求書の事業主記載欄を記入するだけですが、本人に代わって事業主がこの手続きを代理して行う場合には、事業主がこの手続きの全てを行う必要があります。

受取代理制度

出産育児一時金には、受取代理制度が設けられています。

受取代理制度とは、医療機関等を受取代理人として事前申請し、医療機関等が被保険者に対して請求する出産費用の額(当該請求額が出産一時金の金額を上回る場合には、出産一時金の金額)を限度として、医療機関が被保険者に代わって一時金を受け取るものです。

この制度により、被保険者が医療機関の窓口で支払う医療費の負担を軽減することができます。

従業員が出産した場合の厚生年金・健康保険共通の手続き

産前産後休業取得者申出書の提出

産前産後休暇期間中は、事業主が一定の手続きを行うことにより、産前産後期間中の健康保険料及び厚生年金保険料が免除となります。

免除となるのは、産前産後休業開始月から産前産後終了予定日の翌日が属する月の前月(産前産後終了日が月の末日の場合には、産前産後終了月)までです。

この手続きを実施するためには、まず、出産する従業員が産前産後休暇取得の申出を行う必要があります。その後に、この申出を受けた事業主が、産前産後休業取得者申出書を提出します。

提出先、提出時期、提出方法

産前産後休業取得者申出書の提出先は、管轄の年金事務所です。提出時期は、産前産後休業期間中で、窓口に持参する方法や郵送する方法があります。

なお、被保険者が産前産後休業期間を変更した場合や、産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了した場合には、速やかに産前産後休業取得者変更(終了)届を管轄の年金事務所に提出する必要があります。

様式の取得方法

産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届の様式は、日本年金機構のホームページでダウンロードすることができます。記載例もあり、実際に保険料の免除を受ける被保険者に合わせてカスタマイズして作成することができます。

まとめ

出産による休業に対しては、健康保険や厚生年金保険で様々な優遇制度を設けています。それらを効果的に活用することで、被保険者は安心して子供を産むことができます。

被保険者の病気や怪我による休業をサポートすることも重要ですが、出産による休業をサポートして、被保険者が働きながら安心して出産・子育てができる環境をつくることは、労務や社会保険の重要な目的のひとつです。

これをうまく実施できるかどうかで、その会社の社会的な評価は大きく変わります。これらの制度をうまく運用して、会社のイメージアップを図りたいものです。