健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届の書き方(記入例つき)
従業員が退職したときなどには、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届」(以下、「被保険者資格喪失届」)を作成しなければなりません。
この書類は労務担当者にとって馴染みのあるものですが、2018年3月から「70歳以上被用者不該当届」と統合されるなど、少しややこしくなっています。
今回は、「被保険者資格喪失届」の概要と書き方について、記入例も参考にしながら説明します。
被保険者資格喪失届の概要
まずは、この被保険者資格喪失届が、どのような場合に提出しなければならないものであるのか、また、提出期限や提出先、添付書類などについて説明します。
被保険者資格喪失届の提出が必要になる場合
被保険者資格喪失届は、従業員に被保険者資格の喪失事由である次の事実が発生したときに提出しなければなりません。
・退職
・死亡
・60歳以上で定年などにより退職した者を継続して再雇用した場合
標準報酬月額を改定するため、いったん被保険者資格喪失届を提出し、あわせて同日付の被保険者資格取得届を提出することになります。
・75歳到達
75歳になると、健康保険の被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度の被保険者資格を取得します。
・障害認定を受けて後期高齢者医療制度の被保険者資格を取得した場合
65歳以上75歳未満で一定の障害がある者は、認定を受けることで後期高齢者医療制度の被保険者資格を取得します。
なお、厚生年金保険は70歳になると被保険者資格を喪失します。その場合には、この記事で説明している「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届」ではなく、「厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届(70歳到達届)」を提出します。
ただし、2019年4月から手続きが簡略化されており、提出が不要になる場合もありますので、詳しくは日本年金機構のホームページなどでご確認ください。
提出期限・提出先・提出方法
被保険者資格喪失届の提出期限は、退職などの事実発生から5日以内です。
この提出期限までに、事業所の所在地を管轄する年金事務所に持参するか、事務センターに郵送しなければなりません。紙媒体の提出だけではなく、一定の手続きを行えば、CDなどの電子媒体の提出や電子申請も認められています。
なお、健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)のものではなく、健康保険組合のものである場合には、その健康保険組合にも提出する必要があります。
必要な添付書類
被保険者資格喪失届には次の書類を添付する必要があります。
①健康保険被保険者証(本人分および被扶養者分)
②健康保険高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
上記②は、被保険者の年齢や一定の事情に応じて交付されるものですが、被保険者資格を喪失した者に交付されている場合のみ添付が必要です。
なお、健康保険が協会けんぽのものではなく、健康保険組合のものである場合には、上記①および②は健康保険組合に提出する被保険者資格喪失届の方に添付します。
さらに、60歳以上で定年などにより退職した者を継続して再雇用した場合に被保険者資格喪失届を提出するときは、次の③と④の両方、または、⑤の書類の添付が必要になります。
③就業規則、退職辞令の写し(退職日が確認できるものに限る。)
④雇用契約書の写し(継続して再雇用したことが確認できるものに限る。)
⑤退職日および再雇用した日に関する事業主の証明書(事業主印が押印されているものに限る。)
こちらは、健康保険が健康保険組合のものである場合でも年金事務所または事務センターに提出する被保険者資格喪失届に添付する必要があります(健康保険組合の方の添付書類は異なる場合がありますので確認が必要です)。
被保険者資格喪失届の書き方
被保険者資格喪失届の書き方について、記入例を参考にしながらポイントを説明します。
記入例とポイント
被保険者資格喪失届は次のような様式で、提出者となる会社の情報と被保険者資格を喪失した者の情報を記入する欄に分かれています。
①事業所整理記号・事業所番号
事業所が新規に適用されると、事業所整理記号と事業所番号が付与されますが、これらを記入します。事業所整理記号は原則として「01-イロハ」のような数字とカタカナで、事業所番号は5桁の数字です。
事業所整理記号と事業所番号は、「適用通知書」や「保険料納入告知額・領収済額通知書」などに記載されています。
②事業主の押印
事業主自らが署名した場合には押印は不要です。
③被保険者整理番号
資格取得時に付与された被保険者整理番号を記入します。
被保険者整理番号は、「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」や健康保険被保険者証(以下、保険証)などに記載されています。
④個人番号(基礎年金番号)
本人確認を行ったうえで個人番号(マイナンバー)を記入するか、基礎年金番号を左詰めで記入します。
⑤喪失年月日
いつ資格を喪失するのかは喪失事由によって異なります。
主なものをまとめると、次のようになりますが、退職の場合に資格を喪失するのは退職日の翌日になることは覚えておきましょう。
・退職、死亡による資格喪失日:該当日の翌日
・転勤による資格喪失日:転勤の当日
・70歳到達による厚生年金保険の資格喪失日:誕生日の前日
・75歳到達による健康保険の資格喪失日:誕生日の当日
・障害認定による健康保険の資格喪失日:認定日の当日
⑥喪失(不該当)原因
該当する資格喪失事由を〇で囲みます。
退職や死亡である場合には、その年月日を( )内に記入します。
⑦備考
該当する項目があれば、〇で囲みます。各項目の意味は次のとおりです。
・二以上事業所勤務者の喪失
2カ所以上の適用事業所で勤務している被保険者が資格を喪失した場合のことを言います。
・退職後の継続再雇用者の喪失
先に説明したとおりですが、60歳以上で定年などにより退職した者を継続して再雇用した場合のことを言います。
・その他
転勤による資格喪失と、厚生年金基金加入員の同月得喪が想定されています。転勤により資格を喪失した場合には( )内に「○○年○○月○○日転勤」と記入し、厚生年金基金加入員である被保険者が、被保険者資格を取得した月に資格を喪失した場合には( )内に「加入員の資格同月得喪」と記入します。
「保険証回収」欄については、回収した保険証の枚数を「添付」に記入、回収できなかった保険証の枚数を「返不能」に記入します。(被扶養者に保険証が交付されていなければ、いずれにしても1枚と記入することになります。)
なお、「返不能」の場合には、年金事務所・事務センターまたは健康保険組合に「健康保険被保険者証回収不能届」の提出も必要になります。
⑧70歳不該当
70歳以上の者で資格喪失事由が退職または死亡である場合には、「□70歳以上被用者不該当」の「□」にチェックし、「不該当年月日」欄に退職または死亡した年月日を記入します。
まとめ
被保険者資格喪失届は、従業員が退職したときだけでなく、さまざまな場合に作成・提出しなければならないものです。被保険者資格を喪失した者の健康保険や年金記録を適正に管理していくうえで重要な手続きになりますので、退職以外の資格喪失事由なども十分に理解しておき、忘れずに提出しましょう。