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労務の手続き③~賞与を支払った時の社会保険・労働保険について~

毎年6月や12月の賞与(ボーナス)の支払時期になると、テレビニュースで当該年度のサラリーマンの賞与の平均支給額などの報道が流れ、その報道を聞いて、自分の賞与の金額と比較して、ため息をついたり、反対に、喜んだりすることがよくあります。

賞与は、その支給を受ける従業員の方にとって非常に楽しみなものですが、支給する会社側としては、業績が伸びている時はよいのですが、業績が悪化している時は、資金繰りに悩まされたり、賞与が支給できない、又は、支給額が前年より低くなる場合に、そのことを従業員の方に説明する必要が出てきたりして、結構大変です。

さて、賞与を支払った場合には、会社では一定の手続きをする必要があります。以下では、賞与を支払った時の社会保険・労働保険の手続きについて、解説します。

社会保険の賞与支払届について

平成15年4月に総報酬制が導入されましたが、それ以前は、賞与に関する社会保険料は特別保険料といって毎月の給料にかかってくる保険料に比べて低い保険料率でした。

しかし、総報酬制の導入後は、賞与についても毎月の給料にかかってくる保険料と同じ保険料率となり、賞与を支払った場合には、年金事務所に支払った賞与の金額等を届け出ることが必要になりました。

届出が必要な書類

賞与を支払った際に年金事務所に提出する書類は、賞与支払届と支払届総括表の2枚です。この2枚の書類の正式名称は、「健康保険・厚生年金被保険者賞与支払届・厚生年金保険70歳以上賞与支払届」と「健康保険・厚生年金保険賞与支払届総括表」といいます。

これらの提出書類は、初めて社会保険に加入する際に年金事務所に提出する新規適用届や毎年7月に提出する算定基礎届などで、賞与支払予定時期を報告した場合には、事業所に賞与支払予定月の前月に年金事務所から書類が送られてきます。

提出期限、提出先、提出方法

賞与支払届と賞与支払届総括表の提出期限は、賞与を支払った日から5日以内です。

提出先は、管轄の年金事務所です。提出方法は、書類を作成して窓口に提出する方法の他、郵送、電子媒体(CDやDVD)を提出する方法、電子申請が利用できます。

なお、新規適用届や算定基礎届で賞与支払予定月を年金事務所に報告していない事業主が社会保険上の賞与を支払った場合には、年金事務所から賞与支払届が郵送されてきませんから、その場合は、ご自身で年金事務所の窓口に出向いて、届出用紙を入手する必要があります。日本年金機構のホームページからダウンロードする方法もあります。

賞与とは

社会保険では「賞与」を、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対象として受けるすべてのものを言う。ただし、3か月を超える期間ごとに受けるものを言う、と定義しています。

一般的には、6月と12月の年2回に、月給とは別に会社から受け取るまとまったお金(ボーナス)のことを賞与といいますが、この場合は、一般的に言う賞与と社会保険でいう賞与は同じ意味を持ちます。

しかし、例えば、3か月ごとに年4回支給される特別手当を賞与という会社がある場合、そのケースで会社が言う賞与と社会保険上の賞与は異なるので、注意が必要です。

反対に、特別配当金や報奨金など、定期的に支給される月給以外に給付金であっても、支給の間隔が3か月を超えるものについては、社会保険上は賞与として取り扱われます。

また、労働の対価として支払われていなければ賞与に該当しないので、結婚祝金などは賞与に該当しません。

ちなみに、江戸時代に商人がお盆と正月に奉公人に対して支給した氷代(お盆)・餅代(正月)が、日本の賞与の起源だと言われています。

賞与を支払った時の会社内部での手続き

賞与から徴収される社会保険料は、賞与支払月の翌日末日までに、年金事務所に納付しなくてはなりません。支払いは、納入告知書(口座振替の場合には、納入告知額通知書)によりますが、賞与支払月の通常の社会保険料に、賞与から徴収される保険料分が合算して請求される仕組みになっています。

法律で、賞与から社会保険料の被保険者負担分を天引きすることが認められていますので、たいていの会社では、従業員に賞与を支払う際には、天引き分の社会保険料を控除した後の金額を支給します。天引きした社会保険料は、翌月末日の支払期日まで、金庫や銀行に預けるなどして、保管しておきます。

社会保険料の被保険者負担分を賞与から天引きする場合には、賞与の支給明細には、支給総額の他に、天引きした社会保険料の金額を明示しなくてはなりません。

賞与支払届を作成する際の注意点

賞与支払額は1000円単位

賞与支払届を作成する際の注意点は、支払賞与の金額が、1,000円単位となることです。支払った賞与金額を賞与支払届に記入する際には、1,000円未満の端数を切り捨てて、すべて1,000円単位とします。

ちなみに、社会保険では、1,000未満を切り捨てて1,000円単位とした賞与の金額を標準賞与額と言います。

健康保険の累計額上限は573万円

健康保険の場合、4月1日から翌年3月31日まで(保険年度)に支払った標準賞与額については573万円という累計額の上限が設定されています。

保険年度に支払った累積の標準賞与の金額が573万円を超えた場合、それ以後は、賞与をいくら支払っても、標準賞与額は573万円とみなされます。1年間で573万円を超える賞与が支払われた場合には、その超える分からは、健康保険料は徴収されません。

一方、厚生年金の方の上限額は月ごとに定められていて、月当たり150万円を超える賞与が支払われた場合、標準賞与は150万円とみなされ、その超える分からは厚生年金保険料は徴収されません。

賞与を支払った時の労働保険の手続き

賞与を支払った場合、その支払額は、労災保険料や雇用保険料の徴収の対象となります。しかし、社会保険とは異なり、労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の場合は、賞与を支払う都度、その支払金額や支払日時などを労働局や労働基準監督署に支払う必要はありません。

労災保険料や雇用保険料は、原則として、毎年4月1日から翌年の3月31日の1年間(保険年度)を単位として計算し、そこで計算した保険料を保険年度が終了した年の6月1日から7月10日までの年度更新の時期に支払うのが原則です。

したがって、支給した賞与の金額を賃金台帳等に記録しておくことが大切です。また、年度更新の際の資金繰りに困らないように、あらかじめ賞与から雇用保険料の被保険者分を天引きしたり、支払賞与金額に労災保険料率を乗じた金額を積み立てたりするなど、会社内部での手続きは必要ですが、別途、官庁等に報告をする必要はありません。