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書類の書き方

産前産後休業取得者申出書の書き方(記入例あり)

従業員が産前産後の休暇を取得すると、さまざまな手続きが必要になります。

そのひとつに「健康保険・厚生年金保険・産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」(以下、「産前産後休業取得者申出書」とします。)を管轄の年金事務所等に提出する手続きがあります。これにより、社会保険料が、従業員が産前産後休業を取得した期間につき、事業主負担分及び被保険者負担分の双方とも、免除されます。

今回は、この「産前産後休業取得者申出書」の概要や書き方について、記入例を参考にしながら、説明します。

「産前産後休業取得者申出書」の概要

労働基準法では、原則として、産前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)及び産後8週間の産前産後休業が認められていますが、この期間については、事業主の方も、従業員が休むわけですから、労務の提供がありません。また、休業を取得した従業員の方は、有給休暇を使わない限り、給与等の収入がないことになります。

この期間について、社会保険料を従業員(被保険者)及び事業主の双方に負担させるここと適切でないという配慮から、産前産後休業を取得した従業員から申出を受けた事業主が、管轄年金事務所等に「産前産後休業取得者申出書」を提出することで、当該期間の社会保険料の事業主負担分及び被保険者負担分の双方の免除を受けることができます。

この制度により、事業主の方は、労務の提供がないのに従業員の社会保険料を負担する必要がなくなりますし、従業員の方は、産前産後の収入が少なくなる時期に社会保険料を負担する必要がなくなる一方、休業期間について、従来と同じように病院にかかれますし、休業を取得したことで将来受け取る老齢厚生年金が下がることはありません。

提出時期

この申出書には、産前産後休業を初めて取得した日から起算して何日までに提出しなければならないという期限はありませんが、産前産後休業期間中に提出しなければなりません。

提出先

産前産後休業取得者申出書の提出先は、持参する場合は事業所を管轄する年金事務所、郵送する場合は、管轄年金事務所又は管轄事務センターになります。添付書類はありません。事業主が一定の手続きをした場合には、電子申請も可能です。

産前産後休業取得者申出書の記入例と書き方

産前産後休業取得者申出書について、記入例を参考にしながら、ポイントを説明します。

産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届の作成例

①事業所整理記号
事業所が初めて社会保険に加入する手続きを行った際に付与された、事業所整理記号を記入します。当該記号は、「01-イロハ」のように数字と文字で構成されています。

②事業主の押印
事業主が管轄年金事務所に提出した事業主届出印を押印しますが、事業主が自署した場合には、当該届出印の押印を省略できます。

③被保険者整理記号
休業取得者が、被保険者資格を取得した時に付与された被保険者整理番号を記入します。

被保険者整理番号は、社会保険の被保険者資格取得手続きをした際に、管轄年金事務所等から交付される「健康保険・厚生年金保険 資格取得確認及び標準報酬決定通知書」などに記載されています。

④個人番号又は基礎年金番号
休業取得者の個人番号(マイナンバー)又は基礎年金番号を記入します。マイナンバーを記入する場合は、休業取得者の本人確認が必要です。

⑤出産予定日
出産予定年月日を記載します。本申出書を出産後に提出する場合にも、出産予定年月日を記入します。

⑥出産種別
単胎妊娠(予定)の場合は、「0.単胎」を、2人以上の多胎妊娠(予定)の場合には、「2.多胎」を、それぞれ○で囲みます。

⑦産前産後休業開始年月日
単胎妊娠の場合には、出産予定日以前の42日の範囲内の日付、多胎妊娠の場合には、出産予定日以前98日の範囲内の日付で、休業取得者が実際に休業を開始した日を記入します。

⑧産前産後休業終了予定年月日
出産予定年月日の翌日から起算して56日後の日を記入します。ただし、医師の証明があれば42日後に産休終了とすることも可能です。

⑨出生児の氏名
出生児の氏名を記入します。2人以上の場合は同じ欄に列記します。
なお、出産後に申請書を提出する場合のみ記入します。

⑩備考
死産、流産の場合は、「⑨出生児の氏名」欄は空欄して、備考にその旨を記入します。

当該申出書の必要事項の記入欄は、大きく分けて、共通記載事項(取得申出)とA.変更、B.終了の3つのパートに分かれます。初めて当該申出書を管轄年金事務所等に提出する場合は、共通記載事項(取得申出)の部分だけ記入すればよいです。

⑪A.変更

当該届出書を最初に年金事務所等に提出した後、出産予定日が変更された場合や、実際の出産日が出産予定日と異なる場合には、「共通記載事項(取得申出)」(前に提出した申出書と全く同じ内容を記入)及びA.変更のパートを記載した届出書を再度、提出する必要があります。

⑫変更後の出産(予定)年月日
実際の出産日又は変更後の出産予定日を記入します。

⑬変更後の出産種別
変更のあるなしに関わらず、必ず記入します。

⑭産前産後休業開始年月日
出産年月日が予定より前だった場合には、変更後の出産(予定)年月日を基準として、単胎妊娠の場合は42日の範囲内、多胎妊娠の場合は、98日の範囲内で、実際に休業を開始した日を記入します。

⑮産前産後休業終了予定日
変更後の休業終了予定日を記入します。

⑯B.終了
最初に提出した当該申出書に記載された産前産後休業終了予定年月日と、実際の当該休業を終了した年月日が異なる場合には、「共通記載事項(取得申出)」(前に提出した申出書と全く同じ内容を記入)及び「B.終了」のパートを記載した届出書を再度、提出する必要があります。

⑰産前産後休業終了年月日
実際に休業を終了した年月日を記入します。予定年月日と終了年月日が同じ日である場合には、提出不要です。

まとめ

「産前産後休業取得者申出書」の提出によって、休業を開始した日が属する月から、休業を終了した日の翌日が属する月の前月まで、休業取得者の社会保険料(被保険者負担分と事業者負担分)が免除されます。

事業主及び休業を取得した被保険者双方にとって、この制度が利用できれば非常にメリットが大きいですので、必ず手続きしましょう。