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【労務の手続き】役員変更登記や本店移転登記をした場合

役員変更や本店移転などがあった場合には変更登記をしなければなりませんが、社会保険や労働保険についても一定の手続きが必要になることがあります。

今回は、変更登記とあわせて行うべき社会保険や労働保険の手続きについて解説します。

社会保険の手続き

変更登記にかかわる社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きは次のとおりです。

代表取締役の変更/代表取締役の氏名変更

登記上の「代表取締役」は一般的に事業主ですが、事業主が変更になったときや、事業主の氏名が変わったときは、その変更から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」を管轄の事務センターに郵送、または、年金事務所に提出します。電子申請も可能です。

※加入している健康保険が健康保険組合のものであれば、その組合にも定められた届出が必要です。(以下同様)

> 事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き/日本年金機構

役員の就任・退任

代表取締役も含めて、外部から役員が就任したときは、その役員が無報酬や非常勤でない限り、75歳までは健康保険、70歳までは厚生年金保険に加入することになります。

役員の就任や退任があると、その役員個人の社会保険についても次のような手続きが必要になります。

役員の就任

社会保険に加入すべき役員が就任したときは、就任から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を管轄の事務センターに郵送するか、年金事務所に提出します。また電子申請も可能です。

> 従業員を採用したときの手続き/日本年金機構

役員の退任

社会保険に加入している役員が退任したとき(取締役を退任して何かしらの役職で社内に残る場合を除く)は、退任から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届」を管轄の事務センターに郵送、または、年金事務所に提出しなければなりません。

> 従業員が退職・死亡したときの手続き/日本年金機構

本店・支店の移転

本店や支店(社会保険上の適用事業所である場合)を移転したときは、管轄する年金事務所が変わるのかどうかによって次の届出が必要になります。

管轄年金事務所が変わらない場合

本店や支店の移転から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 適用事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を管轄の事務センターに郵送、または、年金事務所に提出しなければなりません。

> 適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き/日本年金機構

管轄年金事務所が変わる場合

本店や支店の移転から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 適用事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を移転前の管轄の事務センターに郵送、または、年金事務所に提出しなければなりません。

> 適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き/日本年金機構

商号の変更

商号(社名)を変更したときは、変更から5日以内に上記の「健康保険・厚生年金保険 適用事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を管轄の事務センターに郵送、または、年金事務所に提出しなければなりません。

なお、商号(社名)変更とともに管轄年金事務所が変わる移転をする場合の届出先は、移転前の管轄事務センターおよび年金事務所です。

労働保険の手続き

変更登記にかかわる労働保険(労災保険・社会保険)の手続きは次のとおりです。

※個人事業でない限り、代表者変更についての届出は不要です。

※役員については労働者としての実態がない限り、労働保険の対象外であるため、原則として就任や退任による手続きは発生しません。

本店・支店の移転

本店や支店を移転したときは、「一元適用事業」(労災保険と雇用保険のそれぞれの適用や保険料の申告・納付などの事務を一つにまとめて処理する事業)であるのか、「二元適用事業」(建設業や農林水産業などのような、労災保険と雇用保険のそれぞれの適用や保険料の申告・納付などの事務を別個に処理する事業)であるのかによって、次のように届け出る必要があります。

一元適用事業の場合

本店や支店を移転した日の翌日から起算して10日以内に、移転後の管轄の労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出したあと、移転後の管轄のハローワークに「雇用保険事業主事業所各種変更届」(「労働保険名称、所在地等変更届」の控も必要)を提出しなければなりません。

二元適用事業の場合

本店や支店を移転した日の翌日から起算して10日以内に、労災保険については移転後の管轄の労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出し、雇用保険については、移転後の管轄のハローワークに「労働保険名称、所在地等変更届」と「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出しなければなりません。

なお、移転によって管轄の労働基準監督署が変わる場合には、移転後の管轄の労働基準監督署に「適用事業報告」や「就業規則」、「時間外労働・休日労働に関する協定届」(いわゆる「36協定」)などをあらためて届け出る必要があります。

また、建設の事業や立木の伐採の事業などの「一括有期事業」の県外移転については、移転前の管轄の労働基準監督署で労働保険料の精算をしたうえで、移転後の管轄の労働基準監督署で新たな労働保険関係成立の手続きが必要になります。

> 適用事業所に関するQ&A/東京ハローワーク

商号の変更

商号(社名)を変更したときは、「一元適用事業」であるのか、「二元適用事業」であるのかによって、上記の本店や支店を移転した場合と同様の手続きを行わなければなりません。

ただし、移転を伴わない限り、届出先は現在の管轄の労働基準局監督署とハローワークです。

まとめ

役員変更や本店、支店の移転、また、商号変更の登記をした場合には、社会保険や労働保険についても一定の手続きが必要です。

社会保険や労働保険の手続きにおいては登記簿謄本の写しなどが必要になることもありますので注意しましょう。