就業規則がない会社はどうなる?デメリットは?
労働基準法では、常時10人以上の従業員を使用する会社は就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出ることが定められています。
今回は、就業規則のない会社のデメリットについて解説します。
就業規則がない会社は罰金30万円
就業規則がない会社(常時10人以上の従業員を使用する会社)は、労働基準法第89条「就業規則作成及び届出の義務」違反となり、30万円以下の罰金が科せられます。
就業規則がない会社はデメリット多数
就業規則がない会社は、前述の罰金以外にも様々なデメリットがありますので、就業規則作成義務のない従業員10人未満の会社も、就業規則を作成することをおすすめします。
就業規則のない会社の主なデメリットは下記の通りです。
法律上できない手続きがある
労働基準法には、就業規則に定めないとできない手続きが定められています。就業規則のない会社は、下記の手続きを行うと違法行為となる可能性があります。
懲戒処分
懲戒解雇や減給などの懲戒処分は、客観的基準となる就業規則がないと行うことができません。就業規則がない会社が従業員を解雇する場合は、通常の解雇と同様に解雇日の30日前に予告するか、解雇予告手当を支払う必要があります。
年次有給休暇の計画的付与
年次有給休暇の一部の取得日を会社が指定する計画的付与は、就業規則で定めないと行えません。年次有給休暇の計画的付与により夏休みやお正月などに従業員が一斉に休暇を取ることで、有給休暇の促進や業務効率の向上を図ることも出来なくなります。
フレックスタイム制の導入
フレックスタイム制や1か月単位の変形労働時間制を導入する場合は、就業規則に明記する必要があります。就業規則がない会社は、人材を有効活用するためのフレックスタイム制などを設けることができません。
従業員とのトラブルが増える
労働基準法第89条に定める就業規則に必ず記載すべき事項は下記の通りです。
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など
- 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)※退職手当の定めをする場合、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法など
主な内容は、「労働条件」「給与」「退職(解雇や退職金)」の3つで、すべてが労働トラブルの多い項目です。「労働条件」などが明示された就業規則がなければ、なおさらトラブルは増え、もし問題が起こった時は判断基準すらない状態でトラブル対応をしなければなりません。
また、就業ルールが曖昧で職場の規律が乱れたり、給与の規定が不明確で従業員の仕事へのモチベーションが上がらない、などの弊害も考えられます。
就業規則が必要な助成金が申請できない
主に雇用関係助成金の申請には、添付書類として就業規則が必要となります。就業規則がない会社は、助成金申請ができません。
雇用関係助成金は、雇用促進のための「特定求職者雇用開発助成金」や契約社員から正社員への転換を支援する「キャリアアップ助成金」など19種類(令和2年度)と幅広く、人材の確保や雇用の維持に役立つ助成金です。
また、休業する会社の雇用維持を支援する「雇用調整助成金」は、新型コロナウイルス感染症対策の一環として受給要件が大幅に緩和され、多くの会社で活用されています。就業規則のない会社は、自粛要請に基づく休業をしていても「雇用調整助成金」は受け取れませんでした。
まとめ
常時10人以上の従業員を使用する会社は、就業規則を作成し労働基準監督署長に届け出る義務があり、違反したら30万円以下の罰金が科せられます。
また就業規則がないと、法律により懲戒処分ができない、従業員のトラブルが増える、雇用関係助成金が申請できないなど、様々なデメリットがあります。
就業規則は必要最低限の会社ルールですので、作成義務のある会社はもちろん、作成義務のない従業員が常時10人未満の会社も、就業規則を作成することをおすすめします。