労働者死傷病報告の書き方(記入例あり)
労働者死傷病報告とは、労働者が労働災害などにより死亡または休業した場合に労働基準監督署に提出しなければならない書類のことです。
今回は、この書類の概要や書き方などについて解説します。
労働者死傷病報告の概要
まずは、労働者死傷病報告とはどのような書類であるのか、また、どのような場合にこの書類を提出しなければならないのかについて説明します。
労働者死傷病報告とは
労働者死傷病報告は、労働安全衛生法(労働安全衛生規則)に規定されている報告書類で、労働者が労働災害などにより死亡または休業した場合にはこの書類を労働基準監督署に提出しなければならないことになっています。
国がこの労働者死傷病報告を提出させる目的は、労働災害統計の作成などに活用するためであり、労働者死傷病報告をもとに労働災害の原因の分析が行われ、同種の労働災害の再発を防止するための対策を検討するなど、労働安全衛生行政の推進に役立てられています。
労働者死傷病報告の提出が必要になる場合
労働者死傷病報告の提出が必要になるのは、労災などで労働者が死亡または休業したときですが、具体的には次に該当する場合です。
①労働者が労働災害により、負傷、窒息、急性中毒により死亡または休業したとき
②労働者が就業中に負傷、窒息、急性中毒により死亡または休業したとき
③労働者が事業場内またはその附属建設物内で負傷、窒息、急性中毒により死亡または休業したとき
④労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息、急性中毒により死亡または休業したとき
同じような内容でありながら、①~④に細かく分けられているのは、「労働災害」として認定されないような死亡や休業であっても、社内や工場内などでの事故を原因とする死亡や休業であれば、労働者死傷病報告の提出が必要になることを意味しています。
つまり、その事故について労災保険を申請しない(できない)場合でも提出しなければならない書類ということです。
労働者死傷病報告の記入例
労働者死傷病報告は、上記に該当する労働者の死亡または休業について報告するものですが、「4日以上の休業・死亡」と、「4日未満の休業」とで報告様式が異なります。
それぞれどのような様式であるのかについて記入例でご紹介します。
4日以上の休業・死亡(様式第23号)
「4日以上の休業・死亡」については、次の様式第23号という書類を提出することになります。
引用:厚生労働省ホームページより
様式は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます(最寄りの労働局や労働基準監督署でも入手できます)。また、インターネットで報告書を作成できるサービスもあります(ただし、電子申請はできません)。
記入のポイント
様式第23号は、4日以上休業した労働者または死亡した労働者について1人1枚作成しなければなりません。
様式の上半分は、労働保険番号や事業の種類、事業場の名称、所在地などの会社情報、下半分は被災した労働者の情報と事故内容などを記入します。
災害発生状況やその原因については、様式に指示があるとおり詳細に記入し、災害発生状況は略図を書いて示さなければなりません。
なお、この様式第23号は2019年1月から改正(労働者が外国人である場合に記入する「国籍・地域」、「在留資格」欄の追加)されていますので、最新のものを使用するようにしてください。
4日未満の休業(様式第24号)
「4日未満(1日~3日)の休業」については、次の様式第24号という書類を提出することになります。
様式は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます(最寄りの労働局・労働基準監督署でも入手できます)。また、様式23号と異なり様式24号は電子申請も可能です。
記入のポイント
様式第24号は、4日未満の休業労働者について1枚で8名まで記入できるようになっています。
様式の上部に事業の種類や事業場の名称、所在地などの会社情報を記入したうえで、被災した労働者の情報と事故内容などを記入します。
災害発生状況については、様式第23号のように詳細に記入する必要はありません。
労働者死傷病報告の提出方法・期限
労働者死傷病報告の提出方法、提出期限は次のとおりです。
提出方法
労働者死傷病報告は、労働基準監督署の窓口に直接持参、郵送、電子申請(e-Gov・様式24号の申請のみ)のいずれかの方法で提出します。
なお、受付印が押された控えが欲しい場合には、様式第23号または第24号を2部、窓口に持参または郵送(切手を貼った返信用封筒を同封しておく必要あり)すれば、1部に受付印を押して返してくれます。
提出期限
労働者死傷病報告の提出期限は、4日以上の休業・死亡(様式第23号)と、4日未満の休業(様式第24号)とで次のように異なります。
4日以上の休業・死亡(様式第23号)の場合
様式第23号については、事実発生後、遅滞なく(理由があれば、若干の遅れは可)所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。
4日未満の休業(様式第24号)の場合
様式第24号については、事実発生の都度提出するのではなく、次のとおり、3か月ごとの期間の最終月の翌月末までに、まとめて所轄労働基準監督署に提出することになっています。
災害発生時期 | 提出期限 |
1月 ~ 3月 | 4月末 |
4月 ~ 6月 | 7月末 |
7月 ~ 9月 | 10月末 |
10月 ~ 12月 | 翌年1月末 |
まとめ
労働者死傷病報告は、労働者が労働災害などにより死亡または休業した場合に、労災保険を申請するかどうかにかかわらず労働基準監督署に提出しなければならないものです。
故意に提出しない、あるいは、虚偽の内容を記載して提出することは「労災かくし」とされて、処罰(50万円以下の罰金)の対象になりますので十分注意してください。