障害者雇用状況報告書の書き方(記入例あり)
障害者雇用状況報告書は、従業員45.5名以上の会社が毎年、障害者の雇用状況を国に対して報告するための書類です。
今回は、この書類の概要と書き方などについて解説します。
障害者雇用状況報告書とは
障害者雇用状況報告書は、障害者雇用促進法により常用労働者(※)45.5名以上の事業主に対して提出を義務づけられたものです。毎年6月1日現在の状況を、7月15日まで(令和2年は新型コロナウイルス感染症対策で8月31日まで延長)にハローワーク経由で厚生労働省に提出します。
(※)正社員やパートタイムなどの雇用形態を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であり、かつ、1年を超えて雇用されているか、1年を超えて雇用される見込みがある労働者のことをいいます。
障害者雇用状況報告の目的
国が障害者雇用状況報告書を提出させる目的は下記の2つです。
- 障害者の雇用状況および雇用率の達成状況の把握
- 企業に対しハローワーク等が助言・指導・調査等を行うための基本情報として使用
「雇用率の達成状況」とあるのは、事業主には障害者の雇用率目標が課せられているということです。
法定雇用率
常用労働者を雇用する事業主は、障害者雇用促進法によって従業員の一定割合の障害者を雇用することが義務付けられています。この割合を法定雇用率といい、2018年4月1日改正により下記の通りとなりました。
雇用義務者 | 法定雇用率 |
民間 | 2.2% |
国・地方公共団体など | 2.5% |
都道府県の教育委員会など | 2.4% |
民間の事業主の法定雇用率2.2%を満たすためには、常用労働者46名に対し1人以上の障害者を採用しなければなりません。障害者雇用促進法では、常用労働者46名以上の事業主に対し障害者雇用の義務を課し、障害者雇用状況報告書(報告書は45.5名以上)の提出を求めています。
法定雇用率が未達のときは
法定雇用率が未達の場合、常用労働者が100名を超える事業主は「障害者雇用納付金」を徴収されます。納付金の額は障害者雇用数の未達1名につき5万円です。
逆に、法定雇用率を超過して障害者を雇用している場合、超過1名に対し2.7万円の「障害者雇用調整金」を受給することができます。
また、障害者雇用状況報告書については、報告をしなかったり虚偽の報告をした場合、「30万円以下の罰金」が課せられます。
障害者雇用状況報告書の記入例
障害者雇用状況報告書の主な記載内容は下記の通りです。
- A.事業主情報
- B.常用労働者と障害者の雇用の状況
- C.雇用者の事業所別の内訳
- D.障害者雇用推進者
- E.記入担当者
記入ポイントである「常用労働者数」と「障害者数」を中心に解説します。
労働者数の記入方法と除外率
常用労働者数と障害者数は、B欄に会社全体の人数、事業所が複数あるときはC欄に事業所別の人数を記入します。
事業所別の人数を報告する理由は、事業所の主な仕事内容によって雇用率の算定基礎となる常用労働者の計算方法が異なるからです。具体的には、障害者が就業困難な仕事を行う事業所の常用労働者数を一定割合除外して雇用率を計算します。この割合を「除外率」といいます。
たとえば、除外率20%の建設を行う事業所の常用労働者が10名の場合、常用労働者数は20%にあたる2名を除いた8名として雇用率を計算します。
障害者雇用の裾野を拡大するために「除外率制度」という名称はなくなりましたが、実際には経過措置として上記のように除外率を雇用率の計算に使用されています。
常用雇用労働者の数
⑧欄の「常用雇用労働者の数」は、下記に分類して記入します。
(イ)常用雇用労働者の数(短時間労働者を除く)
1週間の所定労働時間が30時間以上であり、かつ、1年を超えて雇用されているか、1年を超えて雇用される見込みがある労働者(正社員など)の数を記入します。
(ロ)短時間労働者の数
1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満であり、かつ、1年を超えて雇用されているか、1年を超えて雇用される見込みがある労働者(パートタイムなど)の数を記入します。
(ハ)常用雇用労働者の数
様式に記載されているとおりですが、次の計算式で求められる数を記入します。
(イ)欄に記入した数+((ロ)欄に記入した数×0.5)
(ニ)法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者の数
前述の除外率が適用されない事業所である場合には、(ハ)欄に記入した数と同じ数を記入します。除外率が適用される事業所である場合には、次の計算式で求められる数を記入します。
(ハ)欄に記入した数-((ハ)欄に記入した数×除外率(端数切り捨て))
なお、この数(事業所が複数あるときは合計した数)が雇用率の分母になります。
常用雇用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数
⑨欄の「常用雇用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数」は、障害の種類・雇用形態・障害の程度に応じて区分して算出し、最後に集計します。
障害の種類:身体障害、知的障害、精神障害
雇用形態 :短時間労働者、それ以外
障害の程度:重度障害者、それ以外
障害の程度については、下記の通り定められています。
- 身体障害者:身体障害者手帳の等級が1級~6級とされている人など
- 重度身体障害者:身体障害者手帳の等級が1級~2級とされている人など
- 知的障害者:児童相談所、障害者職業センター等により知的障害者と判定された人
- 重度知的障害者:児童相談所、障害者職業センター等により知的障害者と判定された方のうち、知的障害の程度が重いと判定された人など
- 精神障害者:精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
雇用率の算定基礎となる障害者の人数は、短時間労働者は実際の障害者数の1/2、重度の障害者は実際の障害者数の2倍としてカウントします。
- 身体・知的・精神障害者(短時間労働者を除く)の数:1人
- 身体・知的・精神障害者(短時間労働者)の数:0.5人
- 重度身体障害者・重度知的障害者(短時間労働者を除く)の数:2人
- 重度身体障害者・重度知的障害者(短時間労働者)の数:1人
⑨欄で算出した障害者数を合計した⑩欄の人数が、「雇用率の算定基礎となる障害者の人数」です。
実雇用率、不足数
上記で算出した常用労働者数と障害者数を使って、実雇用率を計算します。
⑪欄の「実雇用率」は、⑩欄の「計」(障害者数の合計)の数を⑧欄(ニ)の「法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者の数」で除して計算します。実雇用率が2.2%を超えれば、法定雇用率を達成したことになります。
逆に、実雇用率が2.2%に満たない場合は法定雇用率が未達となり、⑫欄に障害者数の不足数を記入します。
障害者雇用推進者
障害者雇用推進者とは、障害者の雇用の促進・継続のために施設・設備の設置・整備をおこなうとともに、国との連絡窓口として障害者雇用に関する届け出などを行う責任者です。
民間企業の場合、常時雇用する労働者が45.5人以上であれば、この障害者雇用推進者を選任するように努めなければなりません。
障害者雇用状況報告書の提出の流れ
障害者雇用状況報告書の入手方法、提出方法、提出期限は次のとおりです。
入手方法
障害者雇用状況報告書は、高年齢者雇用状況報告書とともにハローワークから郵送されるので、送付されるのを待ちましょう。ハローワークのHPからも取り出し可能です。
提出方法
障害者雇用状況報告書は、ハローワークの窓口に直接持参、郵送、電子申請(e-Gov)のいずれかの方法で提出します。持参、郵送した報告書は、ハローワークを経由して厚生労働省に提出されます。
提出期限
障害者雇用状況報告書の提出期限は、例年は7月15日ですが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症への対応で8月31日でした。
高年齢者雇用状況報告書も同様に、例年は6月1日の雇用状況を7月15日までにハローワークの窓口に提出するので、障害者雇用状況報告書と同時に提出すのが一般的です。
まとめ
障害者雇用状況報告書は、民間企業であれば、常用労働者45.5名以上の事業主に対し提出を義務づけられていて、毎年6月1日現在の障害者雇用状況を、7月15日までにハローワークに提出しなければなりません。
報告書の主な目的は、企業に課せられた法定雇用率の達成状況を確認することです。法定雇用率は民間の事業主は2.2%ですが、今後も引き上げられる予定です。
報告書の作成は、短時間労働者や重度障害者のカウント方法を間違えないように、障害者の定義などをしっかり確認しましょう。