任意継続被保険者制度って何?手続き方法などを解説
会社をやめたときに決めなければならないことの1つが、健康保険をどうするかです。転職する場合は転職先の健康保険に加入すればいいのですが、そうでなければ国民健康保険に加入するなどの対応が必要です。
そんなときの選択肢の1つが任意継続被保険者制度です。今回の記事では、任意継続被保険者の制度内容や加入要件、手続方法などを解説します。
任意継続被保険者制度とは?
任意継続被保険者制度とは、会社を辞めても前の勤務先の健康保険に継続して加入できる制度です。
一般的には、会社を辞めるとこれまで加入していた勤務先の健康保険も脱退しますが、一定の要件を満たせば退職後も引き続きもとの健康保険に加入し続けることができます。
ただし、これまで会社と折半して支払っていた健康保険料は全額自己負担になります。
会社側がやることは?
退職者が任意継続被保険者制度を利用する場合、会社側がやることは、組合健保(※1)の場合と協会けんぽ(※2)の場合で異なります。
(※1)組合健保 :企業が単独または共同して運営する健康保険。大企業が中心。
(※2)協会けんぽ:組合健保のない企業のサラリーマンを対象に全国健康保険協会が運営。中小企業が中心。
協会けんぽの会社がやること
協会けんぽを利用している会社がやることは、下記の通りです。
- 退職者の在職期間中に任意保険被保険者制度の案内を行う。
- 制度に関する退職者からの照会に回答する。
任意保険被保険者の手続きは退職者が協会けんぽに対して行うため、会社は具体的な手続きを行う必要はありません。
ただし、会社によっては不慣れな退職者のために手続きを代行することもあります。
健保組合の会社がやること
健保組合を利用している会社がやることは、下記の通りです。
- 退職者の在職期間中に任意保険被保険者制度の案内を行う。
- 退職者と健保組合との間の手続きの仲介を行う。
郵送などで退職者と健保組合が直接、手続きを行うケースもありますが、会社がその仲介をすることもあります。
任意継続被保険者とは?
任意継続被保険者とは、自分の意思で任意継続被保険者制度の利用を選択した退職者です。会社を辞めた後も、もとの会社の健康保険を利用し続けることができます。
任意継続被保険者になるには一定の要件があり、また被保険者制度が適用される期間にも制限があります。
任意継続被保険者になる要件
任意継続被保険者になる要件は下記の通りです。
- 資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。
- 資格喪失日から20日以内に申請すること。
注意してほしいのは、申請可能期間が「資格喪失日から20日以内」に制限されている点です。在職中に申請はできず、また期間を過ぎると任意継続被保険者になることはできないからです。
任意継続被保険者の期間
任意継続被保険者の期間は、任意継続被保険者となった日から2年間に限定されます。2年経過後はほかの保険制度に加入しなければなりません。
任意継続被保険者の期間についての注意点は、期間中に任意にやめることはできないことです。「市町村の国民健康保険に加入する」「健康保険の被扶養者になる」などの理由で、任意継続被保険者をやめることができないのです。
任意継続被保険者をやめること(正式には「資格喪失」)ができるのは、下記ケースに限定されます。()内は資格喪失日です。
- 任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき。(被保険者証記載の予定年月日)
- 保険料を納付期日までに納付しなかったとき。(納付期日の翌日)
- 就職して健康保険などの被保険者資格を取得したとき。(被保険者資格の取得日)
- 後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき。 (被保険者資格の取得日)
- 被保険者が死亡したとき。(死亡日の翌日)
任意継続被保険者の保険料
在職中の健康保険料は、会社と従業員が折半で負担していましたが、退職後は全額が自己負担となります。
在職中に負担していた健康保険料が2倍になるとかなりの高額になる可能性がありますが、協会けんぽや健保組合が定める上限があります。利用を検討する場合は、協会けんぽや会社の担当者などに事前確認しましょう。
また、保険料の支払いには気をつけましょう。1日でも滞納した場合は任意継続被保険者の資格を失います。
保険料の納付方法は下記の通りです。
- 納付書による納付(コンビニ、銀行のほか、Pay-easy(※)も利用可能です)
- 口座振替
- 前納
(※)Pay-easy:税金や公共料金などの支払いをインターネットなどで行うシステム。
手続き方法
任意継続被保険者になるための手続きについて、具体的にみていきましょう。協会けんぽを例に解説しますが、健保組合の場合、詳細は加入している健保組合に確認してください。
任意継続被保険者になるための手続きは次の2つです。
- 任意継続被保険者資格取得申請書の提出
- 初回保険料の納付
任意継続被保険者資格取得申請書の提出
任意継続被保険者になるために最初に行う手続きは、任意継続被保険者資格取得申請書の提出です。
- 提出期限:資格喪失日(退職の日の翌日)から20日以内
- 提出先 :加入していた協会けんぽや健保組合
- 提出方法:郵送または全国健康保険協会支部に持参(協会けんぽの場合)
- 提出書類:任意継続被保険者資格取得申請書(記入例)
- 添付書類:退職証明書写など退職日確認書類(未提出の場合、手続きが遅れる)、被扶養者現況申立書と確認資料(被扶養者がいる場合のみ)
初回保険料の納付
任意継続被保険者資格取得申請書を提出すると、協会けんぽから保険証とともに「初回保険料用納付書」が送付されます。
納付額と納付期限は、初回保険料用納付書に記載されています。期限内に納付しなかった場合、任意継続の被保険者でなかったものとなりますので注意しましょう。
まとめ
任意継続被保険者制度とは、会社を辞めても前の勤務先の健康保険に継続して加入できる制度です。
制度を利用する要件は、「継続して2ヶ月以上の被保険者期間がある」ことと「資格喪失日から20日以内に申請する」ことです。
手続きは「任意継続被保険者資格取得申請書の提出」と「初回保険料の納付」の2つですが、どちらも期限を厳守することが重要です。