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書類の書き方

被保険者証回収不能届の書き方(記入のポイントあり)

被保険者証回収不能届とは、退職者や被扶養者としての要件を満たさなくなった者の保険証を回収、返納できないときに日本年金機構または健康保険組合に提出するものです。

今回の記事では、被保険者証回収不能届の概要やその書き方について解説します。

被保険者証回収不能届とは

退職者や被扶養者としての要件を満たさなくなった(就職したときなど)者に交付されていた健康保険被保険者証(以下「保険証」)は、資格喪失に関する届出書類を提出するときに日本年金機構または加入している健康保険組合に返納しなければなりません。

※該当者が、高齢受給者証(70歳以上が交付対象)や健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用、標準負担額減額認定証の交付を受けている場合にはそれらもあわせて返納しなければなりません。

ただし、該当者が保険証を紛失している場合や、該当者に連絡を取れないような場合には保険証を回収できないこともあります。そのようなときに、会社が日本年金機構または健康保険組合に保険証の回収が不能であることを連絡するための書類が「被保険者証回収不能届」(正確には「健康保険 被保険者証回収不能届」)になります(健康保険組合の場合には書類の名称が異なる場合があります)。

保険証の添付が必要になる主な届出書類

保険証の添付が必要になる主な届出書類には次のようなものがあります。つまり、これらの届出書類に保険証を添付できないときに、「被保険者証回収不能届」の提出が必要になるということです。

※ここでは日本年金機構に提出する届出書類について説明しています。

被保険者資格喪失届

従業員が退職したときは、「被保険者資格喪失届」(正確には「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」)に、退職した者とその被扶養者であった者に交付されていた保険証を添付(保険証を添付できない場合には「被保険者証回収不能届」を提出)して、年金事務所または事務センターに提出しなければなりません。

この「被保険者資格喪失届」の提出期限は、資格を喪失した日(退職の場合は退職日の翌日)から5日以内です。

被扶養者(異動)届

従業員の被扶養者(家族)が就職したことなどによって被扶養者としての要件を満たさなくなったときは、「被扶養者(異動)届」(正確には「健康保険 被扶養者(異動)届/国民年金 第3号被保険者関係届」)に、被扶養者としての要件を満たさなくなった者に交付されていた保険証を添付(保険証を添付できない場合には「被保険者証回収不能届」を提出)して、年金事務所または事務センターに提出しなければなりません。

この「被扶養者(異動)届」の提出期限は、新たに被扶養者を追加する場合には事実発生から5日以内ですが、被扶養者を外す場合にはその都度(つまり、事実発生後速やかにということ)です。

被扶養者調書兼異動届

協会けんぽは、毎年、各事業所で登録されている従業員の被扶養者が引き続きその資格を満たしているのかどうかの確認(被扶養者資格の再確認)を行っています。

これを受けて、各事業所は従業員の被扶養者の状況を確認した結果を記入した「被扶養者状況リスト」を協会けんぽに提出しなければならず、また、被扶養者がその要件を満たさなくなっている者がいる場合には、あわせて「被扶養者調書兼異動届」(正確には「健康保険 被扶養者調書兼異動届(解除用)」)に、被扶養者としての要件を満たさなくなった者に交付されていた保険証を添付(保険証を添付できない場合には被保険者証回収不能届を提出)して提出しなければなりません。

協会けんぽが被扶養者資格の再確認を実施する時期は毎年決まっているわけではありませんので、この「被扶養者調書兼異動届」の提出期限は毎年異なります(令和2年度の提出期限は11月30日)。

被保険者証回収不能届の書き方

最後に、被保険者証回収不能届の記入例と記入のポイントについて説明します。

※ここでも日本年金機構に提出する被保険者証回収不能届について説明しています。

被保険者証回収不能届は次のような様式で、①被保険者情報②回収不能等の対象者について記載する欄と、③事業主欄に分かれています。

被保険者証回収不能届のサンプル画像

なお、様式は年金事務所や協会けんぽの窓口、また、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

> 被保険者証の添付を必要とする届書提出時に添付ができないとき/日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/sonota/20120314-01.html

記入のポイント

被保険者証回収不能届の記入のポイントは次のとおりです。

①被保険者情報

回収できない保険証が退職者やその家族のものであるのか、また、従業員の扶養から外れる家族のものだけであるのかにかかわらず、退職者または従業員(被保険者)についての次の情報を記入します。

  • 被保険者証の記号・番号
  • 生年月日
  • 氏名
  • 住所
  • 自宅などの電話番号(日中の連絡先)または携帯電話番号

②回収不能等の対象者

保険証を回収できない者についての次の情報を記入します。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 高齢受給者証の交付・返納の有無
  • 保険証(高齢受給者証を含む)を返納できない理由

なお、保険証を返納できない理由は、どこで紛失したと考えられるのかなどできるだけ詳しく記入することが求められています。

③事業主欄

被保険者証回収不能届を提出する事業主として次の情報を記入します。

  • 事業所所在地
  • 事業所名称(社名)
  • 事業主氏名(役職・氏名)
  • 事業所の電話番号

①②も同様ですが、事業主本人が記入する必要はなく、人事や総務の担当者が記入しても問題ありません。また、事業主印を押印する必要もありません。

まとめ

被保険者証回収不能届は、従業員やその被扶養者が健康保険の資格を喪失した場合に所定の届出書類に保険証を添付できないときに提出するものであり、あくまで例外的に提出する書類です。

そもそも、保険証を紛失してしまうようなことはあってはならないことであるため、従業員を採用したときや従業員に家族が増えたときに保険証を渡す際には、その管理を徹底することについて十分説明しておく必要があります。