賃金の口座振込に関する協定書とは?(記入例あり)
労働基準法では賃金は現金で支払うという原則がありますが、実際には口座振込を利用しているケースがほとんどです。その方が会社も従業員も都合がいいからですが、労働基準法の原則から外れるため、「賃金の口座振込に関する協定書」が必要になります。
今回の記事では、「賃金の口座振込に関する協定書」の作成を中心に解説します。人事・労務管理上、必須の知識となりますので、しっかりと確認しておきましょう。
賃金の口座振込に関する協定書とは?
労働基準法第24条で定める「賃金支払の5原則」は次の通りです。
- 通貨払いの原則:賃金は、現金(日本円)で支払わなければならない
- 直接払いの原則:賃金は、従業員本人に直接手渡ししなければならない
- 全額払いの原則:賃金からは、何も控除せずに全額支払わなければならない
- 毎月1回以上払いの原則:賃金は、毎月1回以上支払わなければならない
- 一定期日払いの原則:賃金は、一定の期日を定めて支払わなければならない
ただし、「通貨払の原則」によらず、口座振込で賃金支払をするときは、次の要件を満たす必要があります。
- 賃金の口座振込できることを労使協定(会社と労働組合との取決め)で定めること
- 従業員本人の同意があること
上記の労使協定を書面にしたものが「賃金の口座振込に関する協定書」です。労働組合のない会社については、労働者の過半数を代表する者との労使協定を締結しなければなりません。
作成までの手順
「賃金の口座振込に関する協定書」の作成手順は次の通りです。
- 協定する内容の原案を作成する
- 労働組合に協定案を提示し内容を協議する
- 会社と労働組合代表者が協定書を取り交わす
手順①:協定する内容の原案を作成する
会社側が協定内容の原案を作成して、労働組合に提示するのが一般的です。主な協定事項は次の通りです。
- 口座振込の対象となる労働者の範囲
- 口座振込となる賃金の範囲及び金額
- 取扱金融機関の範囲
- 口座振込実施の開始時期 など
手順②:労働組合に協定案を提示し内容を協議する
協定案ができたら、次は労働組合との協議です。労働組合の代表者(労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者)に協定案を提示し、賃金の口座振込の可否やその内容について協議します。
口座振込の対象となる労働者の範囲や賃金を限定する場合だけでなく、取扱金融機関を限定する場合、労使の意見が一致しないこともあります。会社が口座振込の手数料を節約するため取引銀行への振込に限定したい場合、従業員の利便性が損なわれるとの反対があるからです。
手順③:労働会社と組合代表者が協定書を取り交わす
会社と労働組合が合意すると、両者で「賃金の口座振込に関する協定書」を取り交わします。
作成例
作成時のポイント
「賃金の口座振込に関する協定書」には、作成までの手順①で解説した次の内容を明記しましょう。
- 口座振込の対象となる労働者の範囲
- 口座振込となる賃金の範囲及び金額
- 取扱金融機関の範囲
- 口座振込実施の開始時期 など
また、使協定を締結しても従業員の同意がないと賃金の口座振込はできないので、「従業員の同意が必要である」旨の記載も必要です。従業員の同意確認のために、従業員から「口座振込同意書」を取付けるのが一般的です。併せて覚えておきましょう。
そのほか、「労使協定の有効期限」と「会社と労働組合(または労働者)代表の署名と押印」も必要です。
まとめ
「賃金の口座振込に関する協定書」は、労働基準法の通貨払の原則(賃金は現金で支払うという原則)によらず、会社が口座振込で賃金支払をするときに必要です。
会社と労働組合の代表(労働組合がない場合は労働者の過半数の代表)が協議すべき事項はほぼ決まっているので、作成例などを参照して合意した内容を漏れなく書面に記載しましょう。