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「徳井さんの申告漏れ・所得隠し問題」で学ぶ失敗しない納税と社会保険

人気芸人の税務申告漏れが、世間を騒がせています。

吉本興行所属のお笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんが、7年間で約1億1,800万円の申告漏れをしていた問題。銀行預金の差し押さえや社会保険未加入といった新たな事実が続々と発覚し、徳井さんは活動自粛に追い込まれました。

なぜ、このような事態になったのでしょうか。吉本興業が発表した内容をもとに、検証していきます。

経緯

まずは、問題の経緯を時系列で追いながら、事態を整理していきます。

徳井さんの所属事務所である吉本興業が2019年10月26日にホームページで発表した「チュートリアル徳井義実の税務申告漏れに関する報告」によると、以下のような経緯であったことが読み取れます。

2009年

徳井さんが株式会社チューリップ設立(個人事務所)。

法人設立時に必要な社会保険の加入手続きを怠る。

2010年

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2010年3月期分)

2011年

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2011年3月期分)

2012年

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2012年3月期分)

6月

税務署からチューリップ社の法人税の無申告(2010年3月期~2012年3月期)を指摘され、3期分をあわせて申告。

2013年

3月

徳井さん個人 所得税申告せず(2012年分)

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2015年3月期分)

2014年

3月

徳井さん個人 所得税申告せず(2013年分)

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2014年3月期分)

2015年

3月

徳井さん個人 所得税申告せず(2014年分)

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2015年3月期分)

7月

税務署から徳井さん個人の所得税の無申告(2012年~2014年分)を指摘され、3年分をあわせて申告。

税務署からチューリップ社の法人税の無申告(2013年3月期~2015年3月期)を指摘され、3期分をあわせて申告。

2016年

3月

徳井さん個人 所得税申告せず(2015年分)

5月

税務署の再三の督促にもかかわらず納付を怠ったため、銀行預金を差し押さえられる

チューリップ社 法人税申告せず(2016年3月期分)

2017年

3月

徳井さん個人 所得税申告せず(2016年分)

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2017年3月期分)

2018年

3月

徳井さん個人 所得税申告漏れ(2017年分)

5月

チューリップ社 法人税申告せず(2018年3月期分)

9月

チューリップ社を国税局が税務調査

・2016年3月期~2018年3月期の申告漏れを指摘される

・同時に、経費計上していた旅費や衣服代などを一部否認される

11月

チューリップ社の16年3月期~18年3月期の確定申告書、12年3月期~15年3月期の修正申告書を提出。法人税の追徴課税として約3700万円(否認された経費約2000万円に対する重加算税約180万円、申告漏れ約1億1,800万円に対する無申告加算税約510万円を含む)を納付

税務署から徳井さん個人の所得税の無申告(2015年~2017年分)を指摘され、税務署の指導に従い3年分をあわせて申告

2019年

3月

徳井さん個人 期限内に法人税申告を済ませる(2018年分)

5月

チューリップ 期限内に所得税申告を済ませる(2019年3月期)

問題

株式会社チューリップは徳井さんの個人事務所です。徳井さんのすべての収入は、吉本興業を経てこの個人事務所に入れられ、徳井さん自身はチューリップの役員報酬としてお金を受領していました。これは節税対策の典型で違法ではありません。

問題になったのは、申告漏れと所得隠し、そして社会保険の未手続きです。

申告漏れ

申告漏れは、経理上の計算ミスや申告手続きの遅れなどが該当します。意図的な脱税や所得隠しまでの悪質性がないとみなされるため、「過少申告加算税」「無申告加算税」「不納付加算税」のいずれかに加え、「延滞税」が課されます。

徳井さんは2016年3月期~18年3月期の法人税申告を決められた期限内に行わなかったことについて、「申告漏れ」を指摘されました。

所得隠し

所得隠しは、収入の隠ぺいや架空経費の計上など、故意に税金を減らす行為が該当します。この場合、申告漏れの「過少申告加算税」「無申告加算税」「不納付加算税」に代えて、「重加算税」と「延滞税」が課されます。

徳井さんの場合、2012年3月期~15年3月期に経費計上していた旅費や衣服代の一部が経費として認められず、経費の水増しを行ったとして「所得隠し」と指摘されました。

社会保険の未手続き

法人は、社会保険への加入が義務付けられています。ところが、株式会社チューリップは社会保険への加入手続きを行っておらず、2009年の設立からおよそ10年間、未加入状態でした。

社会保険の加入義務を守らずに未加入だった場合、事業主は追徴金や罰則(6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金)のペナルティがあります。

徳井さん問題から学ぶべきこと

今回の問題で、適切に納税することの大事さを再認識した方も多くいるのではないでしょうか。コンプライアンスが叫ばれる昨今において、この手のスキャンダルは致命的です。これは人気商売である芸人だけでなく、企業にも言えます。たったひとつの不正が、企業を崩壊させるようなケースは、ザラにあります。申告は公明正大に行いましょう。

また、社会保険の加入義務も必ず遵守しなければならないものです。社会保険の加入手続きについては「【会社設立後の提出書類】⑧健康保険・厚生年金保険 新規適用届の書き方」で解説しています。ぜひご覧ください。