法人登記簿(登記事項証明書)は何種類?それぞれの使い道は?
法人登記簿にはいくつか種類があります。
記載されている内容ごとに、現在事項証明書、履歴事項証明書、閉鎖事項証明書、代表者事項証明書の4種類に分類でき、それぞれの使い道も異なります。
この記事では、4種類の法人登記簿(登記事項証明書)に記載されている内容、使用する場面や使い道などについて解説します。
法人登記簿(登記事項証明書)とは?
法人登記簿の正式名称は「登記事項証明書」
法人登記簿とは、一般的には会社の登記事項証明書のことを指します。
かつては登記情報を紙の登記簿で管理しており、登記事項を証明するために「登記簿謄本」や「登記簿抄本」が利用されていました。謄本は登記簿の全部の複写、抄本はその一部の複写にあたります。
現在では登記情報は電子で管理され、これに伴い、登記事項を証明するための書類は「登記事項証明書」と呼ばれるようになりました。
しかし、「法人登記簿」や「登記簿」といった呼称は過去の名残として残っており、広く使われ続けています。
登記事項証明書は誰でも取得できる
登記事項証明書は、会社の商号(社名)や事業目的、役員など、登記されている会社の内容を公的に証明することができる書類で、法務局で手数料を払えば誰でも取得することができます。
会社と無関係の人であっても、登記事項証明書は取得可能です。そのため、取引先の情報を得るための資料として取得するケースも存在します。
また、登記事項証明書は、会社の代表者・事業内容や会社が実在するのか等を証明するために相手先などから提出を求められることがあります。
法人登記簿の種類と利用シーン
法人登記簿には4種類あり、現在事項証明書、履歴事項証明書、閉鎖事項証明書、代表者事項証明書があります。
それぞれの記載されている内容や利用シーンについて解説します。
現在事項証明書
現在事項証明書は、現在有効な登記内容が記載されている証明書です。
会社の現在の事業目的、資本金、役員などが記載され、過去の事業目的、資本金、役員など、現在は有効でない過去の会社の登記内容は基本的に記載されていません。
ただし、会社の商号(社名)と本店所在地については、現在有効な情報の一つ前の内容は記載されています。
例えば、過去に会社の商号を変えたことがある場合や本店移転したことがある場合には、現在の商号・本店所在地と一つ前の商号・本店所在地が現在事項証明書に記載されます。
現在事項証明書は、現在の登記内容だけを証明すればよいという場合に利用されます。
現在有効な内容だけが記載されているため、現在の役員が誰なのか等について、記載内容が一目瞭然で見やすいという特徴があります。
履歴事項証明書
履歴事項証明書は、現在有効な登記内容に加えて、証明書を請求したときから3年前の年の1月1日以降に抹消された、過去の登記内容についても記載されている証明書です。
約3年分の登記の変更履歴について記載されているため、どのような変更履歴があったかを証明することができます。
たとえば、2020年12月に履歴事項証明書を請求した場合、2017年1月1日以降に変更登記がされた内容について記載されています。逆に、それより前に変更登記をした内容については、履歴事項証明書にも記載されません。それ以前の登記内容を証明する必要がある場合には、後述する「閉鎖事項証明書」を取得する必要があります。
履歴事項証明書が、一番情報量の多い証明書となります。そのため、法人登記簿の提出を求められた場合は、基本的には履歴事項証明書を取れば記載内容が不足することはないでしょう。
金融機関に提出する場合や税務署・年金事務所などの公的機関に提出する場合にも、履歴事項証明書を取得すればよいというケースがほとんどです。
ただし、変更内容や役員の人数が多い大会社などの場合には、証明書の枚数が非常に多くなる場合があります。
提出先には、必ずどの種類の証明書を取得すればよいかを確認してから取得しましょう。
また、通常、証明書には有効期限があります。多くの場合、3か月以内に発行された証明書を求められますが、念の為、提出先に何か月以内に発行された証明書を提出すればよいかについても確認しておくとよいでしょう。
提出する目的ではなく、ある会社の情報を知るために法人登記簿を取得する場合にも、履歴事項証明書を取れば一番多くの情報を得ることができるでしょう。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、履歴事項証明書に記載されない古い登記内容が記載されている証明書です。
履歴事項証明書に記載されていない過去の登記内容を証明する必要があるときは、閉鎖事項証明書を取得する必要があります。たとえば、現在は役員ではない人が、過去に役員だったことを証明するために取得するケースなどが考えられます。
また、登記事項は以下のケースでも閉鎖されます。
- 会社が解散し、清算結了登記をした
- 会社が吸収合併されて解散した
- 他の法務局の管轄の住所地に本店を移転した
- 有限会社から株式会社に商号変更した
- 持分会社から株式会社に組織変更した
登記事項が閉鎖された場合には、閉鎖される前の登記内容を証明するために閉鎖事項証明書を取得します。
代表者事項証明書
代表者事項証明書は、現在の会社の代表者の代表権を証明するための証明書です。
代表者事項証明書に記載されるのは、以下の内容です。
- 会社法人等番号
- 商号
- 本店
- 代表者の住所
- 代表者の氏名
- 代表者の役職(代表取締役、代表社員、清算人など)
それ以外の登記内容(目的、資本金、代表者以外の役員など)については記載されません。
代表者事項証明書は、会社代表者の「資格証明書」の提出を求められたときに取得するケースが多いでしょう。
全部事項証明と一部事項証明の違い
現在事項証明書、履歴事項証明書、閉鎖事項証明書には、「全部事項証明書」と「一部事項証明書」があります。
法人登記簿(登記事項証明書)は、いくつかの区に分割されて記載されています。
株式会社の場合、
- 商号区
- 目的区
- 株式・資本区
- 役員区
- 登記記録区
などがあります。
全部事項証明書は、これらのすべての区についての情報が記載されている証明書のことを指します。
一方、一部事項証明書は、これらの区のうち、任意に自分が指定した区についての情報のみが記載されている証明書のことを指します。
全部事項証明書をとると情報が膨大となり、枚数が多くなってしまう場合などは、一部事項証明書を取得するとよいでしょう。
まとめ
法人登記簿には4種類が存在し、さらに全部事項の証明なのか一部事項の証明なのかによっても分かれます。
証明すべき内容によって必要な種類が異なるため、提出を求められた場合には、必ずどの証明書を提出すべきなのかを提出先に確認することが大切です。