法人の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の記載項目や見方とは?
複数ある登記事項証明書の中で「履歴事項全部証明書」は、一番詳しく現在の登記内容と過去の履歴が記されている証明書です。
履歴事項全部証明書は、過去の一定期間内に変更された登記内容全部を確認することができる・証明できるため、口座開設や売買契約の時に求められることもあります。
ここでは、履歴事項全部証明書の内容や、どのように使うのかなどについて解説します。
履歴事項全部証明書とは
法人の「履歴事項全部証明書」は、発行日の時点で効力がある登記内容の全部に加えて、一定期間(約3年以内)の変更履歴についても記載されている公的証明書です。
履歴事項全部証明書によって、現在の登記内容全部と、過去の一定期間内に変更された登記内容全部を確認することができ、その内容を公に証明できます。
履歴事項全部証明書の記載項目
履歴事項全部証明書に記載される項目について、株式会社の例で紹介します。
主な記載項目
当該法人の登記内容についてすべて(全部事項)が記載されます。
場合によって変動しますが、以下が主な記載項目です。
- 会社法人等番号
- 商号(会社名)
- 本店(本店の住所)
- 会社成立の年月日(会社設立日)
- 目的(会社の事業内容)
- 資本金
- 役員に関する事項
- 公告方法
- 発行可能株式総数
- 発行済み株式総数
- 発行する株式の種類
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 会社の機関について(監査役設置会社、取締役会設置会社など)
関連記事:
登記簿には何が書かれている? 記載情報を区分別に紹介
履歴の期間
履歴事項全部証明書に記載されるのは、交付請求日の3年前の年の1月1日から取得日までに変更された履歴に限られます。
それより前の登記内容を証明する必要がある場合には、「閉鎖事項全部証明書」という別の証明書を取得する必要があります。
ただし、3年以上前の変更内容であっても、「商号」と「本店」については一つ前の「商号」「本店」が記載されます。
履歴事項全部証明書の見方
履歴事項全部証明書の見方のポイントを紹介します。
①下線が引かれているのは過去の履歴
履歴事項全部証明書には過去の登記内容についても記載されていますが、現在有効ではない過去の履歴については、下線が引かれています。
下線が引かれている部分は変更前の内容であり、現在有効ではありませんので注意しましょう。
②役員の情報
取締役などの役員について、いつ役員に就任したかが役員の氏名の右側の欄を見ればわかります。
「年月日就任」または「年月日重任」と記載されていますが、「重任」の場合には、その重任年月日より前から役員を続けており、再度選任された役員であることがわかります。
さらに、履歴事項全部証明書には、すでに退任した役員についても記載されています。
退任した日付だけでなく、「辞任」「退任」「解任」「死亡」など退任した原因も書かれています。
「辞任」と書かれている場合には、任期中に自ら職を辞したことがわかります。
また、「退任」の場合には任期満了となって退任したこと、「解任」の場合には株主総会の決議で辞めることになった事がわかります。
履歴事項全部証明書が必要となるシーン
履歴事項全部証明書の取得が必要になるのは、主に以下のようなシーンです。
- 金融機関で法人名義の口座開設をする場合
- 法人名義で不動産の賃貸借契約や売買契約をする場合
- 法人の事業で許認可を取得するための申請手続きをする場合
- 法人が補助金や給付金等の申請手続きをする場合
- 法人が融資を受ける場合
その法人について、現在の登記内容だけでなく、より詳しい情報が必要となる場面で必要となります。
現在の登記内容しか証明する必要がない場合、履歴事項全部証明書だと情報量が多すぎて不都合がある場合もあります。
必要な証明書が履歴事項全部証明書なのか、それ以外の証明書なのかは提出先にしっかりと確認しておくと安心です。
また、履歴事項全部証明書を提出するように求められた場合、有効期限を確認し、提出日に合わせて取得するようにしましょう。
取得方法と費用
履歴事項全部証明書の取得方法と費用については以下のとおりです。
取得方法
履歴事項全部証明書を含む登記事項証明書は法務局で発行されますが、必ずしも法務局に出向かなければならないわけではありません。
窓口の他、郵便、オンラインによる請求方法があります。
①窓口
法務局に直接出向いて法務局にある申請書に必要事項を記入し、請求します。
法務局によっては証明書発行機が設置されており、申請書に記入する代わりに機械の操作で請求ができます。誰でも取得可能で、身分証の提示なども必要ありません。
また、会社の所在地に関わらず、全国の法務局で履歴事項全部証明書を取得することができます。とにかくすぐにその場で証明書を取得したいという場合には、窓口が一番早いでしょう。
②郵送
インターネット上で申請書をダウンロードし、必要事項を記入の上、切手を貼付した返信用封筒と手数料分の収入印紙を同封の上、最寄りの法務局に郵送し、取得することができます。
郵送方法は普通郵便で問題ありません。郵便での請求は時間がかかることや、申請書に不備がある場合すぐに修正できないのが難点ですが、時間に余裕がある場合などはよいでしょう。
③オンライン
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を通じてインターネットで請求することができます。
利用可能時間は、平日の8時半から21時までです。
手数料の納付がネットバンキング等となるため、窓口や郵送の場合のように収入印紙を買う必要がなく便利です。
また、手数料が窓口や郵送よりも安価な点も魅力です。
オンラインでの申請となりますが、受け取り方法は法務局の窓口または郵送のどちらかを選ぶことができます。
費用
履歴事項全部証明書の費用は請求方法、受け取り方法によって異なります。
窓口 | 600円/1通 |
郵送 | 600円/1通 |
オンライン申請で窓口受け取り | 480円/1通 |
オンライン申請で郵送受け取り | 500円/1通 |
まとめ
履歴事項全部証明書は、法人の現在の登記内容に加えて過去の履歴も証明すべき場合や、より詳しい法人の情報が必要となる場合に必要となる書類です。
基本的に一番情報量の多い証明書となるため、第三者から提出を求められた場合、履歴事項全部証明書を取得すれば問題ないケースが多いのですが、事前に必要な証明書の種類をきちんと確認しておけば安心です。