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取締役、代表取締役の辞任届の書き方(記載例あり)

株式会社の役員(取締役、監査役、代表取締役など)が任期中にその役職を自ら辞める場合には、一般的には会社に辞任届を提出します。

辞任届は登記の際に提出が必要となる場合があります。この記事では、登記で使える辞任届の書き方や省略できるケースなどを紹介します。

辞任届とは?

取締役、監査役や代表取締役などの役員は、任期の途中であっても自由に自らその役職を辞めることができます。これを辞任と言います。

ただし、会社にとって不利な時期(引き継ぎをするための時間なしに、役員から一方的に辞任したような場合等)に辞任した場合は、損害賠償義務が生じる可能性もあるので注意が必要です。

役員は登記されているため、辞任した場合には役員変更登記が必要です。その際に辞任届の提出が必要なケースがあります。

ただし、取締役(または監査役)については、辞任について記載されている株主総会議事録を添付することで、辞任届の添付を省略することがで切る場合があります。詳しくは記事の後半で説明します。

なお、役員の辞任登記については、以下の記事もご参考ください。

参考記事:【取締役の辞任登記】必要書類と申請手続きは?

辞任届の記載例と作成ポイントと注意事項

ここでは、登記に使用する辞任届の記載事項や印鑑について、記載例を交えながら説明します。

取締役の辞任届

取締役の辞任届は、通常は以下のような内容となります。

取締役の辞任届の記載例

作成ポイント①:記載事項について

辞任届の書式に決まりはないので、記載例と全て同一にする必要はありません。また用紙サイズにも決まりはありませんのでA4等で印刷しても問題ありません。

ただし、記載事項として以下の内容が必要です。

  • いつ付で辞任するのか
  • 取締役の氏名、押印
  • 会社の商号(社名)
  • 辞任届の作成年月日

記載例では、「令和3年〇月△日付をもって」辞任としていますが、たとえば、定時株主総会(取締役会)終結時をもって辞任したい場合には、「令和〇年〇月〇日開催の定時株主総会(取締役会)終結をもって辞任いたしたくお届けいたします」のように記載します。

また、取締役の氏名については、自署(サイン)である必要はなく、入力したもの(記名)でも構いません。

ただし、辞任する者が後になって「自分が作成した辞任届ではない」などと主張してトラブルになる可能性がある場合は、自署してもらうことをおすすめします。

株主総会議事録についても基本的には押印する必要はありませんが、慣例的には押印するケースが多いでしょう。

作成ポイント②:印鑑について

現在、登記を申請するにあたって、株式会社の取締役や監査役の辞任届には押印することは求められておりません。ただ、後日紛争が起こらないようにするためにも念のため印鑑を押すというのも考えられるでしょう。

また、代表取締役である取締役が辞任し、その取締役が法務局に印鑑を届け出ている場合は、「会社の実印(代表者印)」もしくは「個人の実印」を押印する必要があります。個人の実印を用いる場合は個人の印鑑証明書の添付が必要です。

代表取締役の辞任届

代表取締役の辞任届は、以下のような内容となります。

記載例①:代表取締役の地位のみを辞任する場合

代表取締役辞任の辞任届の記載例

記載例②:取締役及び代表取締役を辞任する場合

取締役・代表取締役の辞任届の作成例

作成ポイント①:記載事項について

辞任届の書式や用紙サイズに決まりはありませんが、次の内容についての記載は必要です。

  • いつ付で辞任するのか
  • 代表取締役の住所、氏名と押印
  • 会社の商号(社名)
  • 辞任届の作成年月日
  • 代表取締役の地位のみを辞任するのか、取締役としても辞任するのか

代表取締役を辞任する場合には、記載例のとおり、代表取締役の地位のみを辞任して取締役としては留任する場合と、取締役としても辞任する場合の2パターンがあります。

作成ポイント②:印鑑について

代表取締役が辞任する場合、その代表取締役が会社実印の届出をしている場合には、会社実印(法務局への届出印)を押印するか、市区町村に登録している個人の実印を押印します。なお、市区町村に登録している個人実印を押印する場合は、個人の印鑑証明書を添付する必要があります。

たとえば、代表取締役がAとBの2名がおり、Aのみが会社実印の届出を行っている場合、Bが辞任するケースでは実印を押印する必要はなく、押印する必要はありません。(こちらも前述の通り、念のため押印しておくことも考えられます。)

辞任届が必要なケース

辞任届が必要となるのは、役員(取締役、代表取締役、監査役など)が任期中に自らその役職を辞める場合です。

取締役や代表取締役は登記されているため、辞任を原因とした登記(退任登記)を申請する必要があります。辞任による退任登記には「辞任を証する書面」の添付が求められます。その書面に当たるのが辞任届です。

なお、任期満了や解任により退任する場合には、辞任届は必要ありません。

また、後述のとおり、取締役の辞任の場合には、株主総会議事録を添付することで、辞任届の添付を省くことができる場合があります。

株主総会議事録の記載で援用できる

取締役や代表取締役などの辞任の登記を申請するときは、「辞任を証する書面」が必要ですが、この書面として、辞任届ではなく株主総会議事録が使用できる場合があります。

これは、辞任する取締役(または監査役)が株主総会に出席して、本人がその席上(その場)で辞任する意思表示をした旨が記載されている場合です。いつ付で辞任するのかも明記してある必要があります。

ただ単に、取締役(または監査役)から辞任の意思表示があったことを議長が株主総会で報告した旨が記載されている株主総会議事録では、辞任を証する書面として認められないので注意しましょう。

法務局に印鑑登録を行っている代表取締役の辞任については、辞任届に実印の押印が求められていることから、株主総会議事録もしくは取締役会議事録を「辞任を証する書面」として使用するばあいは、会社実印又は個人の実印による押印、個人の実印を押印した場合は印鑑証明書の添付が必要であると考えられています。

ただし、法務局に会社実印の届出をしていない代表取締役については、取締役と同様に株主総会議事録の記載により辞任届の提出を省略できると考えられます。

実際には登記を申請する法務局の判断となるため、提出先の法務局に事前に確認するか、可能であれば辞任届を作成しておくとよいでしょう。

まとめ

取締役や代表取締役の辞任届は、辞任の意思を明らかにするための書類で、記載しなければならないポイントを押さえておく必要があります。

株主総会議事録の記載があれば辞任届を省略できるケースもありますが、本人の辞任の意思をはっきりさせておくためにもできれば辞任届を作成しておく方が安心です。

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