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権利義務取締役って何者?登記手続きは必要?

「権利義務取締役」の存在をご存知でしょうか?

権利義務取締役は、任期満了または辞任によって取締役を退任したはずなのに、取締役としての権利と義務を持ち続ける立場の人を指します。

ここでは、どのような場合に権利義務取締役になってしまうのか、何らかの登記は必要となるのかなどについて解説します。

権利義務取締役とは

株式会社の取締役には、必ず任期(その役職に就任している定まった期間)があります。

任期は、最長で10年まで伸ばすことができ、最短で1年となります。任期が満了すると、その取締役は退任します。また、取締役は任期中であっても、自らの意思によって辞任することもできます。辞任によって、任期中であってもその取締役は退任します。

ただし、任期満了または辞任によって取締役が退任するにもかかわらず、新たな取締役が選任されていない場合、取締役が不在となって会社が機能しなくなってしまいます。

そのような事態を避けるため、退任したはずの取締役が引き続き新たな取締役が選任されるまでの間、取締役としての権利と義務を持ち続ける状態が、「権利義務取締役」です。

権利義務取締役が発生するケース

権利義務取締役が発生するのは、どのような場合でしょうか。取締役が任期満了または辞任した場合で、以下のいずれかの状態となったときに権利義務取締役が発生します。

  • 取締役会のある会社で、取締役が2名以下となる場合
  • 定款で定めた取締役の人数を下回る場合
  • 取締役会がなく、定款で取締役の人数を定めていない場合は、取締役が一人もいなくなる場合

よくあるケースとして、具体的に次のようなものがあります。

①取締役の任期を正確に把握しておらず、任期満了したにもかかわらず次の取締役を選任していなかった。

②突然取締役が辞任することになり新たな取締役候補が見つからない。

③取締役の最低限必要な人数を理解しておらず必要な人数の取締役を選任していなかった。

任期満了後にも同じ取締役が職を続ける場合であっても、再度取締役として選任する「再任」の手続きが必要ですが、そのことを理解しておらず、手続きをしていないことにより、自覚なく権利義務取締役が発生しているケースは多くみられます。

登記の手続きは必要?

権利義務取締役が発生している時点において、基本的に必要な登記の手続きはありません。新たな取締役が選任されるまでは、任期満了または辞任による退任の登記をすることはできないからです。

この状態となった場合、速やかに取締役を選任する必要があります。取締役は、任期満了となった人を再任するのでも、別の人を選任するのでも構いません。

それぞれの会社により、必要な取締役の人数は異なります。取締役会のある会社であれば、最低でも3人の取締役が必要です。定款で取締役を2名以上と定めている会社であれば、2人以上の取締役が必要です。自分の会社の状態に合わせて、必要な人数の取締役を株主総会で選任しましょう。

取締役の必要人数を変更する方法もある

新たな取締役を必要な人数だけ選任することが難しい場合、取締役の必要人数を変更するという選択肢もあります。

たとえば、取締役会のある会社であれば取締役が3人以上必要となりますが、取締役会を廃止することにより、最低1名取締役がいればよいことになります。継続的に3人の取締役を置くことが難しいというような場合には、取締役会の廃止も検討すべきかもしれません。

一部の取締役の後任者だけ選任しても登記できない

取締役会のある会社で、現在の取締役甲・乙・丙がいる場合に、甲乙丙が全員任期満了退任となり、甲の後任者として丁を選任したとします。

この場合、後任者を選任した甲だけ取締役の権利義務を免れて退任できるかというと、そんなことはありません。

取締役会に必要となる3人の取締役が選任されるまでは、甲も権利義務取締役の状態が続くことになります。

権利義務取締役が発生する場合の注意点

権利義務取締役が発生する場合にはどのような注意点があるでしょうか。

100万円以下の過料を課される可能性

権利義務取締役が発生するケースでは、旧取締役が退任したタイミングで取締役の退任の登記をすることができず、登記を懈怠している(おこたっている)状態となってしまいます。

そのため、会社法に定められている100万円以下の過料を課される可能性があります。それを避けるためにも、取締役の任期や必要人数について正確に把握しておき、時期が来たらきちんと新たな取締役を選任し、選任から2週間以内にしっかりと登記を申請することが大切です。

取締役の善管注意義務などが続く

権利義務取締役には、任期中の取締役と同様の義務が残ります。たとえば、善管注意義務(会社法330条)、忠実義務(会社法355条)、利益相反取引の制限(会社法356条)などの義務が続くため、退任後の予定を立てていた取締役にとっては、計画が狂ってしまうことになりかねません。

まとめ

権利義務取締役は、意識していない間にいつの間にか発生してしまっているケースも比較的多くみられます。

まずは、自分の会社の取締役の任期や必要な人数をしっかりと把握しておくことが大切です。

登記を懈怠してしまうと、過料を課される可能性がありますので、期限内(変更があってから2週間以内)にきちんと登記を申請する必要がありますが、役員変更登記はケースによって必要な書類や内容が異なり、自分一人ですべての書類を完璧に仕上げるのは想像以上に大変です。

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