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少額減価償却資産の特例とは?概要と方法を簡単解説

中小企業者等に適用が認められている少額減価償却資産の特例とは何か、その内容や対象となる資産、申告手続きについて解説します。この特例の特徴でもある限度額の計算方法についても知っておきましょう。

少額減価償却資産の特例の概要

少額減価償却資産の特例とは、正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といいます。

中小企業者などこの規定の適用対象となる法人が、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得し事業の用に供した場合に、その取得価額に相当する金額を資産として計上することなく、全額を費用として損金の額に算入できるというものです。

適用対象法人

この特例は青色申告法人である中小企業者や農業組合等のうち、常時使用する従業員の数が500人以下である法人(連結法人を除きます)を適用対象としています(令和2年4月1日以後に取得などする場合)。

中小企業者

中小企業者とは以下の法人(所得金額の年平均額が一定の額を超える事業者を除きます)をいいます。

  • 資本金又は出資金の額が1億円以下の法人(ただし、大規模法人に発行済株式の1/2以上を保有されているなど、大規模法人や大法人による支配関係がある法人などを除きます)
  • 資本又は出資を有しない法人で、常時使用する従業員の数が1,000人以下であるもの

適用対象資産

適用対象となる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。
この資産のことを「少額減価償却資産」と呼んでいます。
対象資産は、

  • 器具及び備品
  • 機械・装置
  • ソフトウェア
  • 特許権・商標権
  • 所有権移転外リース取引により取得した資産

などとなっており、有形固定資産だけではなく無形固定資産やリース資産のうち一定のもの、および中古資産も対象とされています。

取得価額が30万円未満であるかどうかの判定は、1台・1個・1そろいごとなどを1単位として行います。

また判定にあたり取得価額に消費税を含むかどうかについては、法人の採用している経理処理方法によるものとされています。

経理処理方法30万円未満の判定
税込経理税込
税抜経理税抜

なお、免税事業者の場合は税込で判定します。

限度額

少額減価償却資産の特例は、少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円に達するまでの合計額を限度として適用できます。(事業年度が1年未満の場合には300万円÷12×事業年度の月数で計算した金額に達するまでの合計額になります)。

分かりづらい表現であるため、具体例で考えてみましょう。

例えば、19万円の減価償却資産を16個購入したとします。

この場合の取得価額の合計額は19万円×16個=304万円で300万円を超えてしまいます。しかしこの場合、少額減価償却資産として当期の費用とできる金額は300万円ではありません。

この特例では、取得価額の合計額のうち「300万円に達するまでの合計額」が限度と規定されているため、この場合の限度額は19万円×15個=285万円となります。300万円が限度額ではないことに注意しましょう。

なおこの例の場合、少額減価償却資産の特例が適用できなかった残り1個については、取得価額が20万円未満であるため一括償却資産(3年で均等償却)にできます。

他の規定との関係

この特例は少額の減価償却資産の規定(取得価額が10万円未満の場合に適用があります)または上述の一括償却資産の規定の適用を受けるものについては適用がありません。

また、特別償却や税額控除、圧縮記帳との重複適用もできないことになっています。

なお、少額減価償却資産の特例を適用した資産は法人税の申告上は資産計上の必要はありませんが、市町村が課税する償却資産税においては資産として申告対象とされている点にも注意が必要です(一括償却資産の場合は申告対象外です)。

少額減価償却資産の特例の手続き方法

この特例を受けるためには、少額減価償却資産を事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する金額を経費として計上(損金経理)しなければなりません。

また法人税の申告書の提出時に、その事業年度中に取得した少額減価償却資産の内訳を記載した別表16(7)「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」およびこの特例を適用している旨を記載した適用額明細書を添付することが要件とされています。

まとめ

少額減価償却資産の特例を適用すれば、その資産を取得した事業年度において全額費用計上することができるため、資産計上して数年にわたって減価償却により費用化することに比べ、取得事業年度の利益を減少させ、早期に費用化できます。

ただし適用にあたっては限度額が定められており、その計算方法も「300万円に達するまでの合計額」といった特徴があることを理解しておきましょう。

なお適用できなかった資産については一括償却資産の規定が適用できないかどうかも検討してみるといいでしょう。