3ヵ月間の試行雇用で助成金がもらえる「トライアル雇用助成金」
せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまうと企業にとっては大きな損失です。
近年では、採用のミスマッチを防ぎ長期的な雇用を目指したトライアル雇用という制度が注目を集めています。
トライアル雇用助成金とは、就職が困難な労働者をお試しで雇用した事業主にが助成金がをもらえる制度です。トライアル雇用助成金には3つのコースがあります。この記事では、それぞれのコースの概要や手続きの流れをご紹介します。
トライアル雇用助成金の概要
トライアル雇用助成金制度とは、就職が困難な求職者を原則3か月という期間、お試しで雇用(トライアル雇用)することで、事業主が助成金を受け取れる制度です。求職者の能力や適性を判断し、期間の定めのない雇用への移行のきっかけ作りを目的としています。
通常採用した際の試用期間は試用期間終了後、正当な理由なく解雇することはできませんがトライアル雇用では適性がないと判断した場合、3か月の期間経過後の雇用義務は発生しません。
企業側と求職者側、双方のミスマッチを防ぎ、長期的な雇用の実現を目指した制度が、トライアル雇用助成金制度です。
トライアル雇用制度の3つのコース
トライアル雇用助成金制度には次の3つのコースがあります。
なお、新型コロナウイルス感染症対応(短時間)トライアルコースは令和5年3月31日限りで廃止となりました。
1.一般トライアルコース
職業経験の不足などから就職が困難な求職者をお試しで雇い入れるコースです。
(厚生労働省 – トライアル雇用助成金(一般トライアルコース))
2.障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
障害を持つ方を試行的・段階的に雇い入れる場合に活用できるコースです。
(厚生労働省 – 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
3.若年・女性建設労働者トライアルコース
建設業の中小事業主が若年者(35歳未満)又は女性を建設技能労働者等としてお試しで雇用するコースです。
この記事では、次のコースについてより掘り下げて解説します。
1.一般トライアルコース
2. 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
一般トライアルコースとは
一般トライアルコースとは、職業経験の不足や、育児を理由に離職した方など、就職が困難な求職者を試行的に雇い入れるコースです。
それでは、一般トライアルコースについてさらに詳しくご紹介します。
一般トライアルコースの対象となる求職者
トライアル雇用助成金の一般トライアルコースについて、対象となる求職者をみていきましょう。
次の1から5のいずれかに該当し、本人がトライアル雇用を希望している方が一般コースの対象者です。
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 離職している期間が1年を超えている(パート・アルバイトを含め、一切の就労をしていないこと)
- 育児等を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
- 生年月日が1968年(昭和43年)4月2日以降の者で、ハローワーク等で担当者制の個別支援を受けている
- 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する
出典: “「トライアル雇用助成金リーフレット(事業主向け)」 ”厚生労働省ウェブサイト(参照:2023.11.1)
一般トライアルコースの受給額
一般トライアルコースの受給額は次のとおりです。
- 対象者1人ごとに月額4万円
また次のように、働いている期間が1か月に満たないケースでは、就労した日数の割合に応じて支給額が1万円~4万円と変動します。
- お試し期間中に対象者の都合で退職した場合
- お試し期間中に正社員になった場合
- 対象者の都合による休暇、または事業主の都合で休業した場合
受給額が月額5万円になるケース
支給対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は5万円が支給されます。
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースとは
障害者トライアルコースとは、障害を理由に就職が困難な方をお試しで雇用する制度です。
なお、障害者短時間トライアルコースは、障害を理由に短時間のみ働けるという方を対象としています。
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース についてさらに詳しくご紹介します。
障害者トライアルコースの対象となる求職者
障害者トライアルコースの対象になる求職者について説明します。
次に該当する求職者が障害者トライアルコースの対象です。
紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する者
紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある者
紹介日前において離職している期間が6か月を超えている者
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
障害者トライアルコースの受給額
支給対象者1人につき次の金額が支給されます。
- 精神障害者の場合
月額最大4万円を3か月(最長6か月間)
月額最大8万円×3か月 精神障害者以外の場合
月額最大4万円(最長3か月間)
障害者短時間トライアルコースの概要
障害者短時間トライアルコースとは、障害を持つ方が、短時間でも働けるようにお試し雇用する制度です。
具体的な労働時間については、次のとおりです。
週の所定労働時間:10時間以上20時間未満
なお、障害者短時間トライアルコースでは、障害者が職場に慣れてきたら、体調を考慮しつつトライアル期間中に上記の時間を20時間以上とすることを目指すことができる方を対象としています。
障害者コースと違う点はトライアルの期間が長く、労働時間が短いことです。
障害者短時間トライアルコースのお試し雇用期間は次のとおりです。
3か月から12か月間(短時間トライアル雇用)
障害者短時間トライアルコースの支給額は次のとおりです。
支給対象者1人につき月額最大4万円(最長12か月間)
受給できる事業主の要件
受給できる事業主には細かい要件があります。詳細については「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)支給対象事業主要件票」をご確認ください。
ここでは、要件の一部についてご紹介します。
雇用保険適用事業所の事業主であること
支給のための審査に協力すること
トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、当該雇い入れに係る事業所において就労したことがある対象労働者を雇い入れるものでない事業主であること
過去に労働保険料の滞納がない
など
出典:“トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)支給対象事業主要件票”厚生労働省ウェブサイト(参照:2023.11.1)
トライアル雇用助成金を受給するまでの流れ
それでは、トライアル雇用助成金を受給するまでの流れをご紹介します。
トライアル雇用開始から支給までの流れは次のイメージを参考にしてください。
出典:“トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内”厚生労働省ウェブサイト(参照2023.11.1)
①ハローワークに求人を申し込む
ハローワークでトライアル雇用求人を申し込みます。
②トライアル雇用希望者を採用する
ハローワークからの紹介を受けて、トライアル雇用を希望している方と面接を行い、条件が合えば採用します。書類選考だけではなく、必ず面接を行いましょう。
③雇用開始2週間以内に必要書類を提出する
トライアル雇用開始日から2週間以内に、対象者を紹介したハローワークに実施計画書を提出しましょう。
④トライアル期間終了後に雇用継続の可否を判断する
トライアル雇用期間終了後に、求職者の能力や適性等を判断したうえで、勤務継続の可否を判断します。
常用雇用に移行する場合には、改めて期間の定めのない雇用契約の締結と雇用契約書の作成を行います。
常用雇用としない場合には、期間満了によりトライアル雇用を終了します。
⑤トライアル期間終了後2ヵ月以内に支給申請書を提出する
助成金を受給するためには、トライアル雇用終了日の翌日から起算して2か月以内に、ハローワークか労働局に支給申請書を提出しましょう。申請期限を過ぎると助成金を受給できなくなるため注意が必要です。
まとめ
トライアル雇用助成金とは、就職が困難な労働者をお試しで雇用した事業主にが助成金がをもらえる制度です。トライアル雇用助成金を活用したからといって、必ずしも労働者を正社員として雇用しなくてはいけない訳ではありません。
試用期間を設けることで、企業側と労働者側のミスマッチを防ぎ、企業に合った人材の採用をすることができるでしょう。
トライアル雇用助成金を活用することで採用コストを削減することが可能です。これを機に活用してみてはいかがでしょうか。