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事業承継・引継ぎ補助金とは? 令和4年度の制度概要と要件を徹底解説!

事業承継・引継ぎ補助金とは、主に中小企業が、事業承継を契機として事業再編や統合や経営資源の引継ぎに取り組む際に、その活動を支援することを目的として運営されている制度です。

この補助金について、廃業・再チャレンジ分野を中心に詳しく解説します。

参照:事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ)
https://jsh.go.jp/r3h/

制度全体の概要と主な申請条件

令和4年(令和3年度補正予算)に実施される事業承継・引継ぎ補助金は、「創業支援型(Ⅰ型)」「経営者交代型(Ⅱ型)」「M&A型(Ⅲ型)」の3つに分類され、承継者・被承継者によって様々な類型があります。

そして、申請対象となる事業は次の3つに分類されます。

・経営革新事業
・専門家活用事業
・廃業・再チャレンジ事業

それぞれの概要と申請条件などについて解説した上で、廃業・再チャレンジ事業における申請について特に詳しく取り上げていきます。

経営革新事業

経営革新事業は、中小企業が自社の事業承継やM&A(事業再編・事業統合など、経営資源を引き継いで行う創業を含む)を契機とした経営革新(事業再構築、設備投資、販路開拓、経営統合作業(PMI)など)に取り組む際に補助するものです。

申請要件
具体的な申請要件は次のとおりです。
まず、下記のいずれかに該当することが基礎要件となります。

・中小企業基本法に定めるの小規模企業者であること
・直近決算期における営業利益または経常利益が赤字であること
・新型コロナウイルス感染症拡大以前と比べて、売上高が減少していること

具体的には、次に挙げる用件を満たす必要があります。

・2020年4月以降の連続する6ケ月のうち、任意の3ケ月における合計売上高が2019年1月~2020年3月の同3ケ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
・再生計画を策定中か、公募終了日から遡(さかのぼ)って3年以内に再生計画等が成立しており、一定の支援を受けていること
・Ⅱ型(経営者交代型)・Ⅲ型(:M&A型)の後継者に経営等の経験や知識があること
*Ⅱ型、Ⅲ型で申請する場合、後継者には、経営などに関する一定の実績や知識を有すること

なお、申請の時点で事業承継が完了していない場合には、後継者に実績や知識などがあることを証明する書類が必要となります。

その上で、次の要件が求められます。

1. 経営資源を引き継ぐ
申請企業は、法人や個人事業主から経営資源(設備、従業員、顧客など)を承継する必要があります。

2. 経営資源を活用して経営革新を実行する
前経営陣から承継した経営資源を活用し、経営革新を行うことが必要となります。

3. 地域経済に貢献する
また、各地域の雇用維持や近隣地域からの仕入れなどにおける経済活動を通じて、地域に深く関わっていることが求められます。なお、新規に創業して法人や個人事業主となる場合は、貢献する予定があれば問題ありません。

補助率・補助上限、補助対象経費
・補助率:2/3
・補助上限:600万円
・補助対象経費:設備投資費用、人件費、店舗・事務所の改築工事費用など

専門家活用事業

M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに関する専門家の活用費用を補助するものです。

申請要件
専門家活用事業の申請要件を満たす事業者は、M&Aによって経営資源を他者から引継ぐ、あるいは他者に引継ぐ予定の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)であり、以下の条件を満たす必要があります。

1. 事業再編や事業統合の実施
株式や経営資源の売買を通じ、事業再編や事業統合が行われる必要があります。
なお、グループ内の事業再編や親族内の事業承継はこの条件に該当しません。

2. 地域経済をけん引する
事業再編や事業統合によって、地域経済をけん引する事業を行う見込みがある状況が求められます。

3. 買い手は経営革新も必要
買い手側の企業が本制度に申請する場合は、上記の条件に加えて、シナジー効果を活かした経営革新を行う見込みがあることも求められます。

補助率・補助上限、補助対象経費
・補助率:2/3
・補助上限:600万円
・補助対象経費:M&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用、セカンドオピニオンなど

廃業・再チャレンジ事業

事業における再チャレンジを目的として、既存事業を廃業するための費用を補助するものです。
既存の事業を廃業し、新たな取り組みにチャレンジする予定の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)が対象となります。

申請要件
廃業・再チャレンジ事業は、上述のとおり既存事業の廃業費を補助する事業であり、承継者と被承継者のいずれにも申請のチャンスがあります。
ただし、廃業だけでは申請できず、再チャレンジを伴うか、前述の経営革新事業または専門家活用事業と併用で申請する必要があります。

整理すると、廃業と再チャレンジの組み合わせによって廃業・再チャレンジ事業として申請するか、廃業と他の事業を併用して経営革新事業あるいは専門家活用事業に廃業費を上乗せする形で併用申請するか、どちらかとなります。

1. 廃業・再チャレンジ事業による単独申請の場合
廃業・再チャレンジ事業として単独申請ができるのは、M&Aによって事業を売却しようとしたが成約に至らず、既存事業を廃業するケースです。
この場合には、廃業後に当該地域の新たな需要や雇用の創出に役立つような新しいチャレンジが求められます。
なお、新事業の開始だけでなく、自身の知識や経験を生かした企業への就職や、社会貢献活動なども新しいチャレンジとみなされます。

2. 併用申請の場合
併用申請が可能となるのは、事業譲渡やM&Aによって譲り受けた事業を廃業する場合(経営革新事業との併用)や、M&Aで買い取った事業や売り手の手元に残った事業を廃業する場合(専門家活用事業との併用)となります。
併用申請をする場合には、廃業・再チャレンジ事業は他の事業の枠で申請を行います。例えば、経営革新事業と併用申請する場合には、申請枠は経営革新事業となり、これに廃業費の補助が上乗せされます。
なお、併用申請をすれば廃業・再チャレンジ事業として申請する必要はありませんが、その場合は経営革新事業や専門家活用事業における補助対象者の要件を満たす必要があります。

補助率・補助上限、補助対象経費
・補助率:2/3 
・補助上限:150万円
・補助対象経費:廃業支援費、在庫廃棄費、解体費など

廃業・再チャレンジ事業における申請受付期間

本補助金の申請受付期間は、令和4年 10月6日(木)~11月24日(木)となっています。

問い合わせ先

事業承継・引継ぎ補助金事務局(廃業・再チャレンジ)
・経営革新関連:050 – 3615 – 9053
・専門家活用/廃業・再チャレンジ関連:050 – 3615 – 9043

問い合わせ受付時間:10:00~12:00、13:00~17:00(土・日・祝日を除く)

インターネット:https://jsh.go.jp/r3h/inquiry/

気になる採択状況(廃業・再チャレンジ)

気になる採択状況について、事務局に直接問い合わせて確認しました。
今回は3次募集となりますが、過去(1次募集・2次募集)における採択事業者(公表済)の状況は次のとおりです。

分類Ⅰ型Ⅱ型Ⅲ型
1次募集の採択件数176622
2次募集の採択件数106926
平均採択件数13.567.524

今回の募集に際しても「1次・2次募集とほぼ同等の採択件数が見込まれる」とのことです。
このため、応募にあたっては上記件数が大きな目安となります。
なお、予算枠や予算残、また採択比率については非公表とのことで、確認出来ませんでしたが、一般的に補助金の採択率は概ね40-50%といわれているので、そちらも参考としていただければと思います。

まとめ

事業承継・引継ぎ補助金の目的と概要、主な分類ごとの申請要件や補助率・補助限度額、対象事業などについて詳しく解説しました。

事業承継補助金は、企業が事業承継に必要な取組であれば、広範囲にわたる経費が対象になる、非常に活用用途の広い補助金です。

事業承継を検討している事業者は、是非この機会をとらえ、補助金申請を検討することをお勧めします。