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通年雇用助成金とは?受給要件や申請の流れについて徹底解説

北海道や東北地方などの特に寒い地域では、冬の期間に離職を余儀なくされる労働者が存在します。このような季節労働者の失業を防止して、長期雇用を目的に新設された制度が通年雇用助成金制度です。

通年雇用助成金では、一定の要件を満たした事業主の方に最大71万円が支給されるため、対象事業主の方は申請することをおすすめします。本記事では、通年雇用助成金の受給要件や申請の流れを詳しくご紹介しますので、ぜひご一読ください。

通年雇用助成金とは

通年雇用助成金とは、北海道や東北地方など気象条件の厳しい積雪寒冷地において、季節的業務に従事する労働者を冬の期間でも離職させず、継続して雇用した指定業種の事業主に支給される助成金です。

通年雇用助成金の対象となる事業主とは

通算雇用助成金がもらえるのは、「指定地域」において「指定事業」を行う事業主です。そこで、「指定地域」と「指定事業」について詳しく解説しきます。

指定地域とは

指定地域とは、以下の地域が該当します。

全市町村指定北海道、青森、岩手、秋田
一部の市町村指定宮城、山形、福島、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜

出典:“通年雇用助成金のご案内”厚生労働省ウェブサイト(参照:2023.12.10)
https://www.mhlw.go.jp/content/001161559.pdf

指定事業とは

指定事業とは、以下の事業のとおりです。

  1. 建設業
  2. 林業
  3. 採石業および砂・砂利または玉石の採取業 
  4. 水産食料品製造業 
  5. 野菜缶詰・果実缶 詰または農産保存食料品の製造業
  6. 一般製材業 
  7. セメント製品製造業 
  8. 特定貨物自動車運送業 
  9. 建設 用粘土製品(陶磁器製のものを除く)の製造業 
  10. 建設現場において据付作業を行う
    「造作材製造業(建具を 除く)」「建具製造業」「鉄骨製造業」「建設用金属製品製造業(鉄骨を除く)」「金属製サッシ・ドア製造業」「鉄骨系プレハブ住宅製造業」「建築用金属製品製造業(サッシ、ドア、建築用金物を除く)」「畳製造業」 
  11. 農業(畜産農業および畜産サービス業を除く)

出典:“通年雇用助成金のご案内”厚生労働省ウェブサイト(参照:2023.12.10)
https://www.mhlw.go.jp/content/001161559.pdf

通年雇用助成金の受給要件とは

次に、通年雇用助成金の受給要件をご紹介します。通年雇用助成金を受給するためには、次の7つのうちいずれか1つを実施する必要があります。

  1. 事業所内就業
    季節労働者を冬期間も継続して同一の事業所で就業させた場合
  2. 事業所外就業
    季節労働者を他の事業所で配置転換・労働者派遣・在籍出向により就業させ、冬期間も継続雇用した場合
  3. 休業
    季節労働者を冬期間も継続雇用し、期間中一時的に休業させた場合
  4. 業務転換
    季節労働者を季節的業務以外の業務に転換し、継続して雇用した場合
  5. 職業訓練
    季節労働者に職業訓練を実施した場合
  6. 新分野進出
    季節労働者を通年雇用するために、新たに新分野の事業所設置・整備した場合
  7. 季節トライアル雇用
    季節労働者を試行(トライアル)雇用終了後、引き続き、常用雇用として雇い入れた場合

例えば、北海道札幌市で建設業を行う事業主では、「指定地域」で「指定事業」を行う要件を満たしています。この事業主が季節労働者を冬の間も継続して同一の事業所で働かせた場合は受給要件を満たすことになり、通年雇用助成金を申請できます。

通年雇用助成金の受給額

通年雇用助成金の受給額についてご紹介します。通年雇用助成金の受給額は、通年雇用の受給要件でご紹介した①~⑦の措置のうち、どれを選択したかによって支給額が異なります。

1.事業所内就業 と 2.事業所外就業 の場合

1.事業所内就業 と 2.事業所外就業 の場合は、対象労働者1名につき継続して3回まで支給されます。支給額は、以下の表のとおりです。

新規継続労働者(1回目)

対象期間中の支払賃金額の3分の271万円を限度)

継続(2回目)

対象期間中の支払賃金額の2分の154万円を限度)

再継続労働者(3回目)

例えば、1月~3月に月額30万円(計90万円)の賃金を対象労働者に支払った場合は、1年目は60万円(90万円×3分の2)が助成されます。また2年目と3年目は、45万円(90万円×2分の1)ずつ助成されます。

3.休業の場合

季節労働者を冬期間も継続雇用して、期間中一時的に休業させた場合は、支給対象者1人にあたり最大2回まで支給されます。

・休業助成の申請が1回目のケース
1月~4月に支払った休業手当(最大60日分)および対象期間に支払った賃金の合計額の2分の1(上限額:新規継続労働者71万円、継続・再継続労働者54万円)

・休業助成の申請が2回目のケース
1月~4月に支払った休業手当(最大60日分)および対象期間に支払った賃金の合計額の3分の1(上限額:54万円)

4.業務転換を実施した場合

季節労働者を季節的業務以外の業務に転換し、継続して雇用した場合の支給額は次のとおりです。

・業務転換の開始日から起算して6か月の期間に支払った賃金の3分の1(上限額71万円)

5.職業訓練を実施した場合

季節労働者に職業訓練を実施した場合の支給額は、以下のとおりです。

  • 1.事業所内就業 と 2.事業所外就業 の場合で支給される額に加えて、職業訓練の費用が支給されます。
  • 季節的業務の場合:訓練の実施に要した費用の2分の1(上限額3万円)
  • 季節的業務以外の場合:訓練の実施に要した費用の3分の2(上限額4万円)

6.新分野進出を実施した場合

季節労働者を通年雇用するために新しい分野の事業所設置・整備した場合の支給額は、以下のとおりです。

  • 事業所の設置・整備に要した費用の10分の1(上限額500万円)が、1年ごとに3回支給

7.季節トライアル雇用を実施した場合

季節労働者を試行(トライアル)雇用終了後に引き続き常用雇用として雇い入れた場合の支給額は、以下のとおりです。

  • 常用雇用に移行した日から起算して6か月の期間に支払った賃金の2分の1の額から、試行雇用(トライアル雇用)を行うことによって支給された「トライアル雇用助成金」の額を減額した額(上限額71万円)

支給申請の流れ

通年雇用助成金の支給申請の流れについて詳しく解説します。

1.季節労働者の継続雇用しましょう

まず事業主は、季節労働者を冬の期間も継続雇用する必要があります。季節労働者とは、9月16日以前から雇用されて翌年の1月31日において雇用保険の特例一時金の受給資格を得て、支給を受けることが見込まれる人を指します。

2.通年雇用届を提出しましょう

要件を満たした事業主は、ハローワークに通年雇用届を提出します。提出期限は12月16日~1月31日なので、期限内に提出するようにしましょう。

提出書類は以下のとおりです。

  • 通年雇用届
  • 対象労働者申告書(通年雇用届添付)
  • 労働者名簿
  • 継続雇用労働者名簿(12月15日現在)(新規利用事業所のみ)
  • 移動就労届 など

3.支給申請書を提出しましょう

ハローワークに支給申請書を提出しましょう。提出期限は3月16日~6月15日です。

提出書類は以下のとおりです。

  • 支給要件確認申立書
  • 支払方法・受取人住所届 
  • 支給申請書 
  • 対象労働者申告書(支給申請書添付) 
  • 出勤簿・賃金台帳 
  • 継続雇用労働者名簿(3月15日現在)
  • 労働者名簿
  • 移動就労経費の支払実績を明らかにする書類 など

申請書一式をハローワークに提出して支給が決定されれば、指定した口座に助成金が入金されます。

まとめ

通算雇用助成金とは、特に寒い地域で働く季節労働者を通年雇用した事業主に支給される助成金です。一定の条件を満たせば、季節労働者に支払った給与の3分の2(上限71万円)という大きな額が支給されるため、対象となる事業主の方はぜひ申請しておきましょう。