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助成金の額が割増される!「生産性要件」を簡単解説

厚生労働省の助成金制度の内容を読んでいると、さまざまな箇所に「生産性要件」と記載されています。

この「生産性要件」を満たすと補助金額が割増されるなど、申請者にメリットがもたらされるケースがあります。

今回は、助成金を申請する際に満たしておきたい「生産性要件」について、わかりやすく解説します。

生産性要件の概要

生産性要件とは、事業所の生産性の伸び率が一定の基準を満たした場合、助成金額や助成率の割増等の優遇を受けられるものです。

昨今の日本は“人手不足”に悩む企業が続出しており、今後はさらなる労働人口減少が懸念されています。このような状況で経済成長を図るには、労働生産性の向上は欠かせません。

生産性要件は、労働生産性向上の取り組みを支援するために、各種助成金の優遇措置として設定されています。

生産性要件を設定している助成金

生産性要件を満たすと、以下の助成金で補助金額や補助率が割増されます。

再就職支援関係

・労働移動支援助成金
(早期雇入れ支援コース)

転職・再就職拡大支援関係

・中途採用等支援助成金
(中途採用拡大コース、生涯現役起業支援コース)

雇入れ関係

・地域雇用開発助成金
(地域雇用開発コース)

雇用環境の整備関係

・人材確保等支援助成金
(雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース、人事評価改善等助成コース、設備改善等支援コース、働き方改革支援コース、雇用管理制度助成コース(建設分野)、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)、作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))

・65歳超雇用推進助成金
(高年齢者能力評価制度等導入支援コース、高年齢者無期雇用転換コース)

仕事と家庭の両立関係

・両立支援等助成金
(出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、再雇用者評価処遇コース、女性活躍加速化コース)

キャリアアップ・人材育成関係

・キャリアアップ助成金
(すべてのコース)

 

・人材開発支援助成金
(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コース)

最低賃金引き上げ関係

・業務改善助成金

生産性要件に必要な「生産性の伸び率」

生産性要件を満たすには、次の生産性の伸び率をクリアする必要があります。

・直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前と比較して6%以上伸びていること。
※3年度前の初日に雇用保険適用事業主であることが必要です。

なお、金融機関から事業性評価を得ていれば、生産性の伸び率が3年度前と比較して1%以上(6%未満)でも構いません。

また、助成金によっては、伸び率が6%以上でなければ支給されないものもあります。申請する助成金について、事前にチェックをしましょう。

生産性の計算方法

生産性を算出するときは、次の公式を用います。

生産性=付加価値÷雇用保険被保険者数

上記の公式の付加価値は、営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課で算出します。つまり、生産性を高めるには、付加価値(特に、営業利益)を増やすか、雇用保険被保険者数を減らすことが必要です。

ただし、事業主都合による離職者を発生させると対象外になってしなうので気をつけましょう。

なお、生産性の伸び率の算出する際は「生産性要件算定シート」を用います。

生産性要件算定シートについて

生産性要件算定シートは、損益計算書や総勘定元帳の各項目から転記することで、生産性を効率的に算出できるものです。

厚生労働省のホームページからexcel形式のファイルをダウンロードすることができます。記入例に従って入力すれば、3年前年度から直近年度の生産性の伸び率を簡単に算出することができます。

まとめ

労働人口の減少が進む昨今の日本において、生産性向上は喫緊の課題です。生産性を高めるには、売上拡大や費用削減により利益を高めたり、雇用保険被保険者数を低減したりする必要があります。

最近はさまざまな分野において、業務を効率化するITサービスが生まれています。そのようなITを利活用し、「生産性要件」を満たすのも一手でしょう。