
人材派遣で起業することは可能ですが、労働者派遣事業は「申請書を書く」だけではなく、資産・事務所・体制・教育訓練などの要件と、申請書類一式の整合性まで求められます。
この記事では、準備の全体像と詰まりやすいポイントを順番に整理します。
目次
この記事でわかること
- 派遣で起業するために必要な「派遣許可」の全体像
- 審査で見られる主要要件(資産/事務所/体制/教育訓練)
- 申請書類“一式”の構成と、要件とのつながり
- 準備の進め方(最短の順番)と差し戻しの典型
- 費用・期間の目安
開業までのロードマップ
派遣の開業準備は、順番を誤ると「物件が要件に合わない」「書類が整合しない」「結局作り直し」という手戻りが起きる可能性があります。
基本的なロードマップは次の流れのようになります。
- 要件の当たりを付ける(資産・事務所・責任者)
- 体制と運用を設計する(教育訓練、雇用管理、相談窓口など)
- 申請書類一式を整える(根拠資料と整合性チェック)
- 申請→調査→許可→運用開始
個人でも可能だが、難しくなりやすい理由
まず前提として、個人事業主でも派遣許可は申請可能ですが、現実には資産要件(基準資産額2,000万円・現預金1,500万円)を個人で用意するハードルが極めて高いため、ほぼ法人化が前提になります。法人化した上で「個人で進めるか、支援を使うか」という判断になる、というのが実情です。
その上で、「個人でやり切るのが難しい」と言われる理由は、能力や努力の問題というより、やることが”構造的に多い”からです。
例えば、教育訓練の計画を立てるなら、体制(担当者・実施方法・記録の取り方)と整合している必要があります。事務所要件を満たすなら、物件の仕様だけでなく、機密保持や相談対応の導線まで説明できた方が安全です。資産要件も同様で、数字そのものだけでなく「裏付けとなる根拠資料」が揃っているかが大切になります。
必須で押さえる前提「派遣元責任者」と「労働者派遣事業の許可」
派遣元責任者とは
派遣元責任者は、派遣労働者の雇用管理、派遣先との調整、苦情対応、適正な派遣の確保などを担う中心人物です。
主な要件は以下の通りです。
- 3年以上の雇用管理経験(人事・労務担当、管理監督者経験など)があること
- 申請受理日前3年以内に派遣元責任者講習を受講していること
- 職務代行者(責任者不在時の対応者)を選任していること
- 派遣労働者100人ごとに1人以上配置すること
審査では「この事業が継続的に適切に運営できるか」を見られるため、要件を満たすだけでなく、役割分担と運用フローまで説明できる状態にしておくのが安全です。
労働者派遣事業の許可とは
人材派遣は原則として許可制です。つまり、会社を作っただけでは派遣事業は開始できず、所定の要件を満たして申請し、許可を得てから運営します。
許可で見られる主要要件
ここでは、読者が詰まりやすい順に整理します。
1)資産要件:数字だけでなく根拠資料が要る
派遣許可では一定の資産要件が求められます。重要なのは、単に「足りている」だけでなく、その数字がどう作られているかを説明できる状態にすることです。
具体的には、、財務的な体力を示す3つの資産要件をすべて同時に満たす必要があります。
- 基準資産額が2,000万円以上(事業所数×2,000万円)
- 基準資産額が負債総額の1/7以上
- 自己名義の現金・預金が1,500万円以上(事業所数×1,500万円)
2)事務所要件:物件選び
事務所はおおむね20㎡以上の面積を確保した上で、独立性や機密保持といった運用面の基準まで満たす必要があります。
物件契約を先に進めてから「要件に合わない」と気づくと、最もコストの高い手戻りになります。現地調査では、派遣元責任者の席、鍵付きキャビネット、相談・面談スペース、社名表示まで実地で確認されるため、内装の用途や動線まで含めた検討が必要です。
よくあるつまずき
- 独立性や区画の問題(他社との区切り、施錠、導線)
- 相談対応や書類保管の環境が説明できない
- 表示や受付、私物と業務の混在が解消できない
3)体制要件:責任者だけではなく“運用できる形”が必要
派遣は運用業務が多い事業です。責任者がいても、相談窓口、雇用管理、派遣先との調整、帳簿管理などが回らなければ継続運営が難しくなります。審査もこの「回るかどうか」を見ます。
よくあるつまずき
- 担当者・役割分担が曖昧
- 苦情対応や相談対応のフローがない
- 情報公開や記録管理が「やるつもり」で止まる
4)教育訓練・キャリア形成支援:作るだけでなく運用がセット
教育訓練やキャリア形成支援は、派遣の制度設計の中心に近い項目です。審査では、計画があるだけでなく以下の要件まで満たせているかを見られます。
- 全派遣労働者を対象としていること
- 有給かつ無償で実施(訓練時間は労働時間扱い、費用は会社負担)
- 入職時の教育訓練を含むこと
- フルタイム・1年以上雇用見込みの派遣労働者には、毎年おおむね8時間以上実施すること
- キャリアコンサルティングの相談窓口を設置すること
大事なのは「計画書を作った」ではなく、実施方法と記録が運用できること。ここは個人だと”作文”で止まりやすいパートなので、最初からテンプレで仕組みに落とすのが効きます。
よくあるつまずき
- 訓練内容が抽象的で、実施が想像できない
- 記録の取り方(受講管理・実施証跡)が設計されていない
- 体制(誰がどう回すか)と計画が繋がっていない
申請書類一式の全体像(カテゴリ別)
派遣許可の申請は、書類が多く「何を揃えれば提出できる状態になるのか」が見えづらいのが難点です。ここでは一度、書類を“カテゴリ”で捉えて全体像を掴みます。ポイントは、書類がバラバラに存在するのではなく、事業計画を一式として説明するためのパーツになっていることです。
1)会社・役員・派遣元責任者に関する書類
会社の基本情報や役員、派遣元責任者の要件を示すための書類群です。ここは“揃えやすい”一方で、責任者の要件・配置と運用体制の説明が薄いと、後工程で整合性が崩れやすくなります。
2)事業計画・運用体制に関する書類
審査の中心に近いパートです。派遣先対応、雇用管理、相談対応、苦情処理、帳簿管理など「回る仕組み」を言葉と資料で示します。個人で準備する場合、ここが最も時間を取りがちです。
3)資産・財務に関する書類
資産要件を満たすことを示すための根拠資料です。数字の水準だけでなく、裏付け資料の揃え方、説明のつながり(運転資金の考え方など)が重要になります。
4)事務所に関する書類
物件の情報に加え、独立性、機密保持、書類保管、相談対応の環境などを説明する材料になります。物件の選び直しが必要になると手戻りが大きいので、早めに当たりを付けるのが安全です。
5)教育訓練・キャリア形成支援に関する書類
「計画がある」だけでなく、実施方法と記録の枠組みまで整っていることを示します。運用に落ちる粒度にするのがコツで、ここが抽象的だと差し戻しの原因になりがちです。
LegalScriptの使いどころ
派遣許可は、要件と書類の整合性が崩れると手戻りになりがちです。LegalScriptならフォームの入力に沿って書類を作る過程で、不足している情報や弱い説明が見つかります。まずは無料登録後に途中まで作り、必要になった段階で**書類一式をPDF出力(課金)**することで無駄を省いて許可申請を行いましょう。

差し戻しが起きやすいケース
派遣許可は、単純な記載ミスよりも「整合性が弱い」ことで手戻りが起きるケースが目立ちます。代表的なパターンを先に知っておくと、準備のやり直しを減らせます。
ケース1:計画は立派だが、体制が薄い
事業計画に対して、誰が何を担当し、どう管理するかの説明が弱いと「本当に運営できるのか」が伝わりません。規模が小さいほど、役割分担と運用フローの説明が重要になります。
ケース2:教育訓練が抽象的で、実施が想像できない
「教育訓練を実施する」と書いていても、内容・頻度・方法・記録が見えないと、運用として成立しているか判断できません。ここは“作文”になりやすいので、最初からテンプレに沿って粒度を揃えるのが有効です。
ケース3:事務所の説明が弱い(機密保持・導線が不明)
物件情報はあっても、個人情報や契約書類をどう保管し、相談対応をどう行うかが曖昧だと、審査上の不安要素になります。写真やレイアウト、運用の説明まで含めると強くなります。
ケース4:資産の裏付けが弱い(数字の根拠資料が不足)
数字が基準を満たしていても、根拠資料が揃っていなかったり、説明の流れが弱いと確認に時間がかかります。特に、運転資金や資金繰りの説明は“事業計画”とも連動します。
費用の目安
派遣の開業では「許可に必要な費用」と「運営を回すための費用」が混ざりやすいので、分けて整理します。
許可取得までに発生しやすい費用
許可取得までに発生しやすい費用
- 会社設立費用:株式会社で約20〜25万円、合同会社で約10万円が目安(定款認証・登録免許税など)
- 派遣許可の申請費用:収入印紙12万円+5.5万円×(事業所数−1)、登録免許税9万円
- 事務所:賃料・敷金・内装(20㎡以上の独立スペースを前提)
- 体制整備に伴うコスト:派遣元責任者講習の受講費(数千円〜)、規程整備、システム導入など
更新時にも、手数料5.5万円×事業所数+登録免許税9万円が発生します。
運営開始後に効いてくる費用
- 教育訓練・キャリア支援の運用(教材、受講管理など)
- 雇用管理、労務・社会保険対応
- 情報公開や帳簿管理などの運用負担(システム含む)
- 採用・営業活動のコスト
派遣は「許可を取って終わり」ではなく、運用コストがじわっと効く事業です。準備段階で運用の枠組みまで固めておくと、後から苦しくなりにくくなります。
期間の目安(スケジュール感)
期間は、申請後の審査だけでなく、申請前の準備(要件・書類・体制整備)に左右されます。目安としては、
- 申請準備:要件の状況次第で変動(資産・物件・体制で伸びやすく、3か月〜半年程度が一つの目安)
- 申請後の標準処理期間:約2〜3か月(労働局による現地調査→厚生労働省の審査→労働政策審議会への諮問を経て許可)
というイメージです。書類に不備があるとさらに延びるため、最短で進めたい場合ほど、先に「物件」「資産」「運用設計」の三点を固め、書類の整合性を一式で通す準備が重要になります。
なお、許可には有効期間があり、新規許可は3年、更新後は5年ごとに更新申請が必要です。「許可を取って終わり」ではない点は、事業計画を立てる段階から織り込んでおくのが安全です。
まとめ
人材派遣の開業は個人でも可能ですが、派遣許可は要件と書類一式の整合性が重要で、準備項目も多いため手戻りが起きやすい分野です。
まずは全体像と詰まりどころを押さえた上で、LegalScriptに無料登録してフォーム入力で申請書の下書きを作り始めると、準備が一気に前へ進みます。提出用のPDF一式出力が必要になった段階で課金すれば十分です。







